不登校やひきこもりを経験した中学生の子どもを持つ保護者にとって、高校進学先をどう選ぶかは、とても大きな悩みです。
「今のまま高校に通えるのだろうか」
「集団生活になじめるだろうか」
「地元の高校ではなく、別の環境でやり直す選択肢はないだろうか」
そのように考えているご家庭にとって、長崎県五島市にある五島南高校は、一つの選択肢になるかもしれません。
五島南高校には、離島留学制度「夢トライコース」があり、中学校までに学校生活になじみにくかった生徒、勉強に不安を抱えていた生徒、不登校を経験した生徒なども受け入れています。
この記事では、五島南高校の魅力と、不登校・ひきこもり経験のある中学生の高校進学先として考える際に知っておきたいポイントを紹介します。
記事の内容は、五島市内のフリースペース「つくしんぼ」の開所式にて、五島南高校の小西校長先生から、南高校の魅力や実際の数字をお話して頂きました。本記事では、その内容を紹介します。
小西仁 校長先生(南高校HP)
目次
五島南高校とは|長崎県五島市にある少人数の高校
五島南高校は、今年度で創立60周年を迎える、地域とともに歩んできた高校です。
昭和42年の開校以来、五島の子どもたちの学びを支え、多くの卒業生を送り出してきました。かつては全校生徒が500名を超える時代もありましたが、現在は少子化や人口減少の影響を受け、全校生徒は61名となっています。
しかし、生徒数が少なくなったからこそ、一人ひとりの顔が見える教育、きめ細やかな支援、地域との距離の近さという、五島南高校ならではの魅力がより際立っています。
大規模校では埋もれてしまいがちな生徒にも、先生や地域の大人たちの目が届きやすい環境があります。
不登校経験のある中学生にとって大切な「安心できる居場所」
不登校やひきこもりを経験した子どもにとって、高校進学で大切なのは、単に学校名や偏差値だけではありません。
- 安心して通えること。
- 自分のペースを認めてもらえること。
- 失敗しても、もう一度立て直せる環境があること。
五島南高校では、こうした生徒の気持ちに寄り添いながら、学校づくりが進められています。
中学校時代に長期間学校を休んでいた生徒が、五島南高校では一日も休まずに通い、進学や就職へと進んでいった例もあります。
その理由を本人に尋ねると、明確な理由は分からないけれど「なんとなく楽しかった」と答えたそうです。
この「なんとなく楽しかった」という言葉には、五島南高校の空気感が表れているように思います。
居場所があること、安心できること、無理に型にはめられないこと。そうした環境が、生徒の前向きな変化につながっているのではないでしょうか。
離島留学制度「夢トライコース」とは
五島南高校の大きな特色の一つが、平成30年度から始まった離島留学制度「夢トライコース」です。
これまでに、この制度を利用して入学した生徒は100名を超えています。その中には、五島島外や長崎県外から来た生徒も多く、東京、大阪、神奈川、兵庫、滋賀、茨城、広島、山口、福岡など、さまざまな地域から五島南高校を選んでいます。
夢トライコースは、中学校までに学校生活になじみにくかった生徒、勉強に不安を抱えていた生徒、不登校を経験した生徒なども受け入れています。
ただし、「不登校だった生徒なら誰でもうまくいく」という制度ではありません。
五島南高校は全日制の高校です。そのため、一定の出席や、テストによる単位取得が必要になります。離島留学では、親元を離れて生活することも多く、基本的な生活習慣を整えることも大切です。
だからこそ、学校説明会などでは、良い面だけでなく、離島で生活することの大変さや、本人・保護者に求められる覚悟についても率直に伝えているそうです。
ホストファミリーと地域が支える高校生活
離島留学生の多くは、地域のホストファミリーのもとで生活しています。また、保護者が仕事や生活の拠点を移し、親子で五島に来る「親子留学」の形を取る家庭もあります。
つまり、五島南高校の教育は、学校だけで完結しているわけではありません。
ホストファミリー、地域の方々、関係機関、保護者、そして学校が連携しながら、生徒たちの生活と学びを支えています。
特に、親元を離れて生活する生徒にとって、基本的な生活習慣を整えることはとても大切です。
朝起きること、学校へ向かうこと、地域の中で生活すること。その一つひとつが、生徒にとっては大きな成長の機会になります。
一方で、朝から部屋に閉じこもって出てこられない生徒もいます。学校の先生が声をかけ、時間をかけて外へ出られるよう支援することもあります。
こうした現実を含めて、五島南高校では、生徒一人ひとりに向き合う支援が行われています。
高校進学後の進路支援|進学・就職まで見守る学校
昨年度の卒業生は27名。そのうち多くの生徒が進学し、就職を選んだ生徒の多くも島内で新たな一歩を踏み出しています。
進路がすぐに決まらなかった生徒についても、学校や関係者の支援により、最終的には全員が進学・就職などの進路を決定しました。
卒業後も「誰も辞めていない」「元気に通っている」といった声が届くことは、学校にとって大きな喜びです。
単に高校に入学させるだけではなく、卒業後の進学・就職、その先の生活まで見守っていることが、五島南高校の大きな強みだと感じます。
制服から「標準服」へ|自分で考える力を育てる
五島南高校では、来年度から従来の制服に代わり、「標準服」という考え方を取り入れる予定です。
これは、学校として一定の基準を示しながらも、生徒や保護者が選択できる余地を持たせる取り組みです。経済的な負担を軽減できることや、家庭で洗濯しやすい素材を選びやすくなることも大きな利点です。
一方で、単に自由にするということではありません。
「その服装は、公の場にふさわしいか」
生徒自身がそう問いかけながら、自分で考え、判断する力を育てていくことが大切にされています。
髪型や服装など、学校生活のさまざまな面で自由度が高まる中でも、生徒たちは「自由すぎると逆に難しい」「一定のルールは必要」と感じているようです。
学校は、そうした生徒の声を聞きながら、時代に合ったルールづくりを進めています。
「誰でも来ればうまくいく」わけではないからこその誠実さ
五島南高校は、離島留学について、良い面だけを伝えているわけではありません。
学校説明会などでは、「誰でも来てください」という言い方はせず、離島で生活することの大変さ、親元を離れることの難しさ、全日制高校として出席や単位取得が必要であることなども、率直に伝えているそうです。
これは、生徒を選別するためではなく、入学後に本人が苦しまないための誠実な姿勢だと感じます。
学校には学校としての責任があります。ホストファミリーにも生活を支える負担があります。そして、保護者にも覚悟が求められます。
だからこそ、五島南高校は「預ければすべて解決する場所」ではなく、本人・家庭・学校・地域が一緒になって成長を支える場所なのだと思います。
先生が生徒を追い詰めない|安心して預けられる学校
五島南高校の先生方は、生徒に対して非常に丁寧に向き合っています。
たとえ問題が起きたとしても、頭ごなしに叱るのではなく、まず本人の話を冷静に聞く。追い詰めるのではなく、何があったのかを理解しようとする。そうした姿勢が、学校全体に根づいています。
もちろん、ルールを守ることや、社会生活に必要なことはきちんと伝えます。自由と責任のバランスを取りながら、生徒たちが次のステージへ進めるよう支えているのです。
「安心して預けられる学校」
この言葉は、不登校やひきこもりを経験した中学生の進学先を考える保護者にとって、とても大切な視点ではないでしょうか。
不登校・ひきこもり経験のある中学生の進学先として考えたいこと
不登校やひきこもりを経験した子どもの高校進学では、「どの学校なら合格できるか」だけでなく、「どの環境なら続けられるか」を考えることが重要です。
五島南高校の離島留学「夢トライコース」は、環境を変えて高校生活を始めたい生徒にとって、一つの大きな選択肢です。
ただし、離島での生活には大変さもあります。親元を離れる不安、生活リズムの立て直し、人間関係づくり、全日制高校としての出席や単位取得など、乗り越えるべき課題もあります。
だからこそ、本人だけでなく、保護者も制度の内容や学校の考え方をよく理解した上で進路を考えることが大切です。
五島南高校は、地域とともに生徒を育てる学校
人口減少や生徒数の減少は、五島南高校にとっても大きな課題です。
しかし、少人数だからこそできる教育があります。離島だからこそ生まれる人とのつながりがあります。そして、地域が支える学校だからこそ、生徒一人ひとりに寄り添える環境があります。
創立60周年を迎える五島南高校は、これまでの歴史を大切にしながら、新しい時代に合わせて変化を続けています。
制服から標準服へ。離島留学制度の充実へ。不登校経験のある生徒への支援へ。そして、地域とともに子どもたちを育てる学校づくりへ。
五島南高校の魅力は、決して派手なものではないかもしれません。
けれども、生徒が「なんとなく楽しかった」と思える居場所があり、先生や地域の大人たちが見守り、卒業後の一歩まで支える温かさがあります。
不登校やひきこもりを経験した中学生の高校進学先を考えている方にとって、五島南高校と離島留学「夢トライコース」は、ぜひ知っておきたい選択肢の一つです。
これからも、五島南高校が五島の教育にとって、そして新しい一歩を踏み出そうとする子どもたちにとって、大切な存在であり続けることを期待しています。
