浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」の有効活用へ

令和8年7月16日、観光ビルはたなかにおいて、「浮体式洋上風力発電施設『はえんかぜ』の有効活用に関する連携協定」の調印式が開催されました。今回の協定は、五島市、戸田建設株式会社、五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社、有限会社イー・ウィンドの4者が連携し、実際に稼働している浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」を活用して、洋上風車の保守管理を担う人材を育成するものです。実機を活用した実践的な研修を通じて、専門人材の育成と地域への定着、関連産業の育成、雇用の創出につなげることを目指します。

調印式の概要

日時令和8年7月16日(木)午後3時から午後3時45分まで
場所観光ビルはたなか3階「エクラタン」
協定期間協定締結日から令和11年3月31日まで

協定を締結した4者

  • 五島市
  • 戸田建設株式会社
  • 五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社
  • 有限会社イー・ウィンド

調印者

  • 五島市長 出口 太
  • 有限会社イー・ウィンド 代表取締役 橋本 武敏氏
  • 戸田建設株式会社 常務執行役員・戦略事業本部副本部長 中井 智巳氏
  • 五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社 職務執行者 牛上 敬氏

協定締結の目的

今回の協定は、第3期五島市まち・ひと・しごと創生人口ビジョン・総合戦略に掲げる基本目標「雇用を生み出し、稼ぐ島をつくる」の実現に寄与することを目的としています。

同戦略の重点事業である「再生可能エネルギーの推進」の一環として、五島市内で稼働する「はえんかぜ」を活用し、洋上風車の運転や保守に関する人材育成を行います。

専門的な知識や技術を持つ人材を育て、五島への定着を促すとともに、洋上風力発電に関連する産業の育成と地域経済の活性化を目指します。

各機関の役割

五島市

五島市は、事業と市の政策との整合性を確保するとともに、国、長崎県、その他の関係機関との連携・調整を担当します。

また、五島市ゼロカーボンシティ実現協議会の関係部会との連携や、市民・関係者への周知、情報発信などを行います。

五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社

「はえんかぜ」の管理者として、研修に必要な場所や設備の提供、設備使用に関する調整を行い、研修の円滑な実施に協力します。

戸田建設株式会社

「はえんかぜ」の維持・運用業務を担当する立場から、施設の点検や保守に携わる有限会社イー・ウィンドに対して、安全面や技術面からの助言を行います。

有限会社イー・ウィンド

人材育成事業の中核的な実施主体として、次の業務を担います。

  • 人材育成プログラムの企画・設計
  • 教育カリキュラムと教材の作成
  • 研修の実施・運営
  • 受講者への指導・評価
  • 研修後のフォローアップ
  • 安全管理体制の構築・運用

協定に基づく主な取り組み

  1. 「はえんかぜ」を活用した洋上風車の保守に関する人材育成プログラムの企画、検討および実施
  2. 洋上風車の保守に必要な知識・技術を習得するための教育内容、研修方法、カリキュラムの検討・整理
  3. 実機研修に必要な安全管理体制、運営方法、関係手続きの検討・確認および実施
  4. 人材育成事業の効果検証、課題整理および改善
  5. 市民・関係者への周知、情報発信および関係機関との連携
  6. 「はえんかぜ」を活用した人材育成事業の継続的・安定的な実施と高度化

実際に稼働する風車を活用した人材育成

洋上風力発電は、GX(グリーントランスフォーメーション)や脱炭素社会の実現に向けた重要な成長分野として期待されています。

一方で、発電設備の維持管理を担う実践的な人材の不足が課題となっています。

今回の教育プログラムでは、実際に発電を行っている「はえんかぜ」を研修設備として活用します。現役の技術者による指導のもと、風車の設備構造、点検方法、保守管理技術を段階的に学びます。

商用設備を使用した研修は全国的にも珍しく、現場で必要とされる知識や技術を、実際の設備を通して学べることが大きな特徴です。

教育プログラムの構成

教育プログラムは、実機研修に必要な基礎知識を身につける「基礎教育」と、月次・半年・年次点検に同行する段階的な実機研修によって構成されます。

基礎教育(4日間)

実機研修を安全に受講するために必要な基礎知識と行動要領を学びます。

  • 労働安全衛生
  • 危険予知活動
  • ディスパッチメント
  • 風車構造の基礎
  • 保守管理の基礎
  • 事故事例
  • 緊急時の対応
  • 商用設備における安全教育
  • 安全器具の使用方法

ステップ1 月次点検研修

月次点検への同行を通じて、風車の基礎構造、設備への安全なアクセス方法、基本的な点検業務などを学びます。

ステップ2 半年点検研修

半年点検の業務に沿って、点検内容や保守管理作業について3日間かけて理解を深めます。

ステップ3 年次点検研修

年次点検を基にした5日間の研修を行い、年間の保守計画や維持管理業務の全体像を体系的に学びます。

研修中の安全管理

実際に発電を行っている商用設備を使用するため、研修では安全確保を最優先とします。

  • 研修管理責任者を配置する
  • 講師が受講者を常時指導・監督する
  • 受講者の単独行動を認めない
  • 必要に応じて遠隔監視制御システムで設備状況を確認する
  • 設備状況や気象・海象条件を確認し、安全が確保できる場合に限り実施する
  • 受講者は教育目的で立ち入り、実際の保守点検業務には従事しない

実際の保守管理を行う事業者の体制があるからこそ、商用設備を教育の場として安全に活用できると説明されました。

受講条件

基礎教育の受講者には、安全管理規定を厳格に守ることや、高所作業環境での行動に支障のない健康状態であることなどが求められます。

実機研修を受講するためには、主に次の条件を満たす必要があります。

  • 基礎教育プログラムを修了していること
  • フルハーネス型墜落制止用器具特別教育を修了していること
  • 高所作業環境での行動に支障がないこと
  • 研修期間中、有限会社イー・ウィンドへの研修出向に同意できること

研修出向は、電気事業法に基づく保安管理や商用設備への立ち入り管理を適切に行い、受講者を安全管理体制のもとで教育対象者として受け入れるための措置です。

また、洋上風力発電分野の国際的な安全教育であるGWO BSTなどの受講も推奨されています。

修了証について

所定の修了要件を満たした受講者には、修了証が交付される予定です。

ただし、この修了証は本プログラムの教育課程を修了したことを証明するものであり、法令上の資格や、単独で保守点検業務に従事できる資格を付与するものではありません。

登壇者挨拶

五島市長・出口太

出口市長は、国内初の浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」を有効活用するため、4者で連携協定を締結できたことへの喜びを述べました。

また、有限会社イー・ウィンド、戸田建設株式会社、五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社の関係者に感謝を伝えました。

国内初となる浮体式洋上風力発電施設「はえんかぜ」を有効に活用しようということで、本日、連携協定を結ぶことができました。心からうれしく思っています。

「はえんかぜ」は、平成22年に環境省の実証事業として椛島沖で事業が始まり、平成27年に現在の崎山沖へ移設され、平成28年から本格的な商用運転を開始しました。

さらに、同じ海域では令和8年1月、国内初となる商用浮体式洋上ウィンドファーム「五島洋上ウィンドファーム」が運転を開始しています。

出口市長は、国内各地で洋上風力発電への関心が高まる中、今後は風車を運転するだけでなく、保守点検に携わる人材の育成が大きな課題になると指摘しました。

実際に使われている発電施設を活用するため、人材育成にとって非常に効果的な取り組みになるのではないかと期待しています。

また、今回の取り組みを、五島市の総合戦略に掲げる「雇用を生み出し、稼ぐ島をつくる」という目標の実現につなげたいとの考えを示しました。

五島市では人口減少が続いており、高校卒業後も島に残ってもらうこと、進学や就職で島を離れた若者に早い段階で帰ってきてもらうこと、島暮らしに関心を持つ全国の若者に五島を選んでもらうことが重要です。

そのためには良質な雇用の場が不可欠であるとして、洋上風力発電事業がその一つになることへの期待を述べました。

五島で始まり、今まさに発展している洋上風力発電事業が、良質な雇用の場の一つになると期待しています。将来、五島の大切な基幹産業になることを願っています。

戸田建設株式会社・中井智巳氏

戸田建設株式会社の中井氏は、五島市民や関係者から、日頃より洋上風力発電事業への支援と協力を受けていることに感謝を述べました。

今回、五島市、有限会社イー・ウィンド、五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社と協定を締結できたことについて、大変うれしく思う一方、人材育成を担う重責を感じていると述べました。

戸田建設は、環境省の実証事業で設置された「はえんかぜ」の維持・運用業務を通じ、五島市の再生可能エネルギー推進に携わってきました。

今回の協定は、この貴重な実機を次世代の人材育成の場として活用する、大変意義深いものだと認識しています。

一方で、商用運転中の発電設備を研修に使用することは簡単ではなく、安全上の課題などについて関係者や関係省庁との調整が必要だったと説明しました。

有限会社イー・ウィンド、五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社、五島市が協力したことで、今回の教育プログラムが実現したとしています。

中井氏は、五島市内の人材育成にとどまらず、今後全国で拡大が見込まれる洋上風力発電のO&M、すなわち運転・保守人材の育成につながることへの期待を示しました。

発電設備の安全を第一とすることを前提に、戸田建設として技術面から支援していきます。

五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社・牛上敬氏

牛上氏は、協定締結に至ったことについて、関係者への感謝を述べました。

五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社は、戸田建設のグループ会社として、平成28年から「はえんかぜ」の発電事業と運転管理を行っています。

牛上氏は、実際に稼働している設備を使用する今回の研修について、受講者にとって、ほかでは得ることのできない実践的な学びの場になるとの考えを示しました。

今回のプログラムが、研修を受ける方々にとって、ほかでは得られない実践的な学びの場になると考えています。

研修事業は有限会社イー・ウィンドを中心に進められますが、五島フローティング・ウィンド・パワー合同会社としても協力していくとしています。

五島の豊かな風によるクリーンエネルギーを担う人材が育ち、地域の持続可能な発展につながるよう、関係者一丸となって貢献してまいります。

有限会社イー・ウィンド・橋本武敏氏

橋本氏は、今回の人材育成事業が実現するまでの経緯を紹介しました。

出口市長は市長就任後、早い段階で有限会社イー・ウィンドを訪れ、「洋上風車を生かした地域活性化を図りたい。何かできないか」と相談したとのことです。

同じ時期に、戸田建設からも「洋上風車を活用した地域貢献ができないか」と相談を受けました。

これらを受け、有限会社イー・ウィンドと五島市の担当課が、実現可能な取り組みについて検討を進めました。

さらに、五島市ゼロカーボンシティ実現協議会においても、「はえんかぜ」をどのように有効活用するかについて具体的な検討を重ね、関係機関との調整を行ってきたと説明しました。

この事業は、私たち一企業だけで実現できるものではありません。協定を締結した3者をはじめ、関係する皆様からの指導や助言をいただきながら、何とか成功させたいと思っています。

橋本氏は、研修事業を成功させるため、今後、安全管理を含めた実施体制を構築し、関係者と連携して取り組んでいく考えを示しました。

五島発の人材育成モデルを全国へ

今回の協定では、実際に稼働している浮体式洋上風力発電施設を活用し、保守管理を担う人材を五島で育成するという、全国的にも先進的な取り組みが始まります。

登壇者の挨拶では、次の点が共通して強調されました。

  • 商用運転中の発電設備を活用した実践的な人材育成
  • 安全を最優先とした研修体制の構築
  • 洋上風力発電の運転・保守を担う専門人材の育成
  • 五島市における良質な雇用の創出
  • 関連産業の育成と地域経済の活性化
  • 五島で構築した人材育成モデルの全国展開

今後は、研修プログラムの内容を具体化し、安全管理体制や運営方法を検証しながら、継続的かつ安定的な人材育成事業の構築を目指します。

洋上風力発電の導入が全国で広がる中、五島市で始まる今回の取り組みが、地域の雇用創出や産業振興にどのようにつながるのか、今後の展開が注目されます。