日本のFIT制度
前回は、ドイツのFIT制度の変遷をご紹介しました。
https://nakanishidaisuke.com/2018/03/02/fit-germany/
ドイツに遅れること22年、日本でも2012年にFIT制度が開始され2017年4月に「改正FIT法施行」されました。今回はその経緯と内容を、出来るだけわかりやすくご紹介します(参考はこちら)。
ポイント①太陽光増えすぎ
まずはこちらのグラフをご覧下さい。
FIT開始の2012年以降、「太陽光発電」の割合が増えていることが一目瞭然ですね(太陽光発電の認定量が約9割)。一方で、他の電源の割合はあんまし増えてません。
太陽光設備導入に比例して、国民が負担する賦課金も右肩上がりに増えています。
(最近やけに電気代高いなー)
と思いませんか?
実はその背景には、この賦課金(再生エネルギー導入に伴う負担分)があったのです。
経済産業省の見方としては、
再生可能エネルギー導入量は約2.5倍に増加しているが、国民負担が増大。
と述べています(そりゃそうですね)。
課題と対応策
「このままじゃまずい!」と考えた経済産業省は、以下の課題と対策を設定しました。
課題
- 太陽光に偏った導入(他の再エネが増えてない)
- 国民負担の増大(今後も増える)
- 電力システム改革(←課題??)
対応策
- 新認定制度の創設
- コスト効率的な導入
- リードタイムの長い電源の導入
- 減免制度の見直し
- 送配電買取への移行
それぞれの対応策に関して、簡単に紹介をします。
①新認定制度の創設
制度の開始当初は、作りっぱなしの発電設備が多かったみたいです。(H24-H25年の未稼働状況は30%)
何しろFIT制度では、20年間固定価格で買い取ってもらえますからね。
とりあえず建てておけ!
という業者が増えて、言わば全国的に太陽光を乱立をさせてしまったことに対する改善策でしょう。
今回の改正に伴い、発電事業者は
ちゃんと稼動するよね?
って部分をより厳しくチェックされるようになります。
②コスト効率的な導入
国民負担を抑える、という観点からは、「効率的な発電運営」が必要条件になりますよね。
FIT制度のよろしくない点は、
採算の悪い発電事業者であっても、高い固定価格で買い取らなければならないことです。そのため今回の改正で、
効率的に発電するよね?
って部分をより厳しくチェックされるようになります。
具体的には、大規模な太陽光発電については入札制度を導入して、事業者に競争を促し、国民の負担を抑えることを狙っています。
③リードタイムの長い電源の導入
平たく言えば、
「太陽光以外の再エネもっとやってね」
っていうことです。地熱・風力・水力等の電源の導入拡大を後
押しするため、複数年買取価格を予め提示するそうです。
④減免制度の見直し
FITには「減免制度」があります。これは
一定の基準を満たす事業所については、経済産業大臣の認定を受けることにより、賦課金の減免措置の適用を受ける。
仕組みです。要するに大きな工場とかが「賦課金」を払いすぎると、国際競争力が落ちちゃって日本にとってマイナスですよね、っていう発想の措置です。
今回の減免制度の見直しにより、2012年時点よりも査定が厳しくなり、「賦課金」を払う人の母数が多くなりそうです。
「国民負担」と「国際競争力」を天秤にかけた上で、産業界にも負担を求める措置でしょう。
送配電買取への移行
従来は、FIT電気の買取義務者は小売事業者でした。しかし小売業者の配送ネットワークには限りがあるため、「遠い場所」に電気を融通することができません。
そのため、買取義務者を送配電事業者(従来の○○電力)にすることにより、 電力の広域融通できるようにする仕組みです。これにより、
国全体でFIT電気を広域的・効率的に使用することによって再生可能エネルギーの最大限の導入を促進
できるとされています。
政府の考えは?
政府は大きな目標として、2030年度に
エネルギーミックス:(再生エネ)22~24%の達成
を目指しています。そのため、
再エネ最大限の導入
は必須要件となります。
ただし、再生エネを導入すればするほど、国民負担としての賦課金は増えることになります。そうすると
- 国民も怒るし
- 産業競争力も落ちるし
というジレンマを抱えることになってしまいます。そのため、今回の改正では、
出来るだけ効率的な発電を促すことで国民負担を減らしつつ、最エネの促進も最大化させる
ことが狙いとなっています。
筆者の見解
2012年に始めたFIT制度ですが、今考えれば当初の制度が
「お粗末すぎた」
と言わざるを得ないでしょう。最初から「そうなること」は分かっていたはずなのに、国民負担が増え続けているドイツの二の舞になっている感が否めないです。
その原因は、日本に「かくあるべき」というエネルギー政策の基本原則がないまま、『とりあえず欧州の真似事』をしているだけに過ぎない点にあります。そしてお粗末にも同じような失敗をしています。
日本は、東日本大震災の経験から再生可能エネルギーのブームもひと段落したところで、今一度エネルギー政策のあり方を考え直す段階に来ているのではないでしょうか。