最低賃金
最低賃金をめぐり、参議院選挙でも争点の1つになっています。以下、山本太郎氏が代表を務める「れいわ新選組」のHPから。
https://reiwa-shinsengumi.com/policy/
全国一律!最低賃金1500円「政府が補償」
最賃1500円でも月収では24万円程度。
決して高すぎる賃金ではありません。現状が酷いだけなのです。
これまで政治主導で壊してきた労働環境や処遇を改善するためには、
賃金の最低水準を強制的に引き上げる必要があります。
中小零細企業に影響がない様に、不足分は国が補填。
最賃との整合性をかんがみ、生活保護基準も引き上げます。 年収200万円以下世帯をゼロに。
地方活性、景気回復、東京一極集中是正の切り札です。
他に細かい事は書いていませんので、本日は「もし最低時給1500円が実現したら?」について考えてみます。
企業の新陳代謝は進まない
韓国では、最低時給を大幅に上げた結果、中小企業の多くが倒産し、経済に大打撃を与えました。
https://news.yahoo.co.jp/byline/yamadajun/20190428-00124115/
記事にもある通り、
家族経営や1人経営の店などでは、従業員を従来のように雇えなくなり、解雇が続出。人件費の高騰をメニューなどの値上げでカバーしようとした飲食店では、客足が減って倒産するところまで出た。
また、ソウル市内のコンビの経営は悪化の一途をたどった。24時間営業を3交代のアルバイトでこなしてきたある店は、収益悪化で赤字になり、営業を続けられなくなった。
だそうです。国の支援がない状態での「最低時給の大幅な引き上げ」は、こうした「失敗事例」があるので、検証が可能です。
しかし山本氏の主張では、「不足分は国が補填」とありますので、人件費の上昇分の負担は国がすることになりそうです。
そのため、企業側からすれば人件費のコスト負担は0になりますので、企業努力としての経費節減や、商品価格への転嫁という部分は起こらなそうです。
在宅ワークの企業が増える
一方で、国からの大盤振る舞いを期待して、お金を儲ける事業者も増えそうです。
そもそも、現代の仕事は必ずしも「労働現場」に依存している訳ではないので、勤務実態が把握しづらい、という現状です。
WEB系のサービスを開発する場合に、何時間働いたかという事は把握しづらいですし、ライターの仕事は主に家での推敲時間が多くなります。
そうした「場所と就労実体を把握できない事業所」を設立することにより、補填される時給分の利ザヤを得ようとする経営者も増えそうです。
副業OK!・在宅OK!・単純なお仕事!・PC作業が殆どです!
というような形での求人募集が増えると、複数のバイトをダブルワークをして稼ぐ人が増えそうです。
ダブルワークを防ぐためにはマイナンバーによる管理が理想的ですが、申請の審査や承認という事務仕事が多くなりそうです。
建築・介護の働き手が減る
今度は労働者の立場で考えてみます。
ポイントは、「人間は出来る限り楽をしたがる動物」だという事です。どんな仕事をしても1500円が貰えるならば、
出来るだけ楽ちんな仕事
が好まれるはずです。
外での肉体労働や、介護職といったキツイ仕事は敬遠され、涼しいエアコンの効いた部屋でのサービス業や、事務の仕事が好まれそうです。
現在でさえ深刻な人手不足に悩む介護現場では、ますます人手不足に拍車がかかる結果となるでしょう。
まとめ
韓国の例からも分かる通り、最低時給の大幅な上昇は、「市場原理に基づく経済活動の対価としての賃金」という基本原則が崩れます。
山本氏の政策案では、中小企業の不足分を国が補うとしていますが、そうなった場合、
- 企業努力のモチベーションがないので新陳代謝は進まない
- 制度の不備を突き、在宅ワークや副業を謳う企業が増える
- 介護や建築の現場では働き手不足が今以上に深刻化
という結果になるでしょう。
ただ、他の政策も同時並行的に実施した場合の影響については、別途検討が必要です。