五島市では、議事録が公表されるまでに数か月かかりますので、
3月9日に市長から公表された「施政方針」をご紹介します。
以下、「見出し」以外は原文通りとなります。
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1 五島の恵みを活かし、雇用を生み出す“しま”をつくる
【農林水産業の振興】
五島市の基幹産業である農林水産業については、高齢化の進行や担い 手不足などによる就業者の減少が大きな課題であります。経営の安定化 や規模拡大、情報通信技術(ICT)を活用した省力化や生産コストの低 減等を支援し、後継者及び新規就業者の確保・育成に努めながら、持続可 能な力強い産業として発展できるよう必要な対策を講じてまいります。 農業の担い手育成・確保については、五島市農業研修支援事業において、 都市部の就農フェア等に出展し、研修生の確保に努めてまいります。
また、 国の農業次世代人材投資事業を活用し、今年度新たに農業経営を開始し4 た農業者3名と、昨年度までに農業経営を開始している19名の計22 名に対し支援を行い、担い手の育成に取り組みます。 令和3年度においても、就農前の研修から新規就農及びその後のフォ ローアップまで継続して支援してまいります。
肉用牛については、コロナの影響等により子牛セリ市の平均価格が平 成31年3月のセリ市から大幅に下落しておりましたが、昨年11月の セリ市において74万8,000円と大きく回復し、今年1月のセリ市に おいても75万3,000円と高値を維持しております。 繁殖雌牛の増頭については、昨年、目標としていた五島地域5,000 頭を達成しました。
今後は、畜産クラスター事業等により、五島市内5, 200頭を目指して取り組んでまいります。 養豚及び養鶏についても、餌の移入に係る輸送コスト支援等により、引 き続き支援してまいります。 五島食肉センターについては、衛生面の向上を図るため、施設をHAC CP(ハサップ)対応とする改修工事を行います。これにより、五島牛及 び五島豚の販路拡大が見込まれ、施設の稼働率の向上につながるものと 期待しております。
有害鳥獣対策については、防護対策として、被害農家に対し、イノシシ・ シカの田畑への侵入を防ぐ防護柵設置の支援や指導を引き続き行ってま いります。捕獲対策としては、猟友会、専門業者等による捕獲に加え、I CT通信技術を活用したわな監視装置や捕獲者への貸出用箱わなを増設 して捕獲体制の強化を図りながら、被害を未然に防ぐ取組を進めてまい ります。
また、捕獲されたイノシシ・シカについては、ジビエ肉としての 利活用を推進してまいります。 農地基盤整備については、平成25年度に整備を開始した鐙瀬地区が、 令和3年度をもって完了する予定です。
久賀地区、寺脇地区及び昨年着手 した富江・日の出地区については継続して整備を進め、農地の有効利用と 農業経営の効率化を推進してまいります。また、農業用ダムやため池など、 老朽化した農業用施設の補修工事を行うとともに、引き続き防災・減災に 努めてまいります。 なお、昨年8月31日に発生した繁敷ダムから富江地区の農地に送水 するための導水管の破損による漏水については、今月3日に復旧工事が 完了し、7日から送水を再開しております。 5 林業については、輸送コスト支援や造林機械導入により利用間伐を促 進し、島外出荷量の増加及び雇用の創出に努めてまいります。
森林整備に ついては、県営事業として林道南部憩坂線を、市営事業として林業専用道 川原線・内闇線を延伸します。また、森林環境譲与税を活用して、令和3 年度から富江町田尾地区において経営管理権集積計画を策定し、森林整 備を進めてまいります。
なお、三井楽町の濱ノ畔地区及び岐宿町の八朔地 区の保安林における松くい虫による松枯れ被害については、現在、枯れ松 の伐倒駆除を行っており、今年5月末までには全ての枯れ松の伐倒及び 焼却を完了する予定となっております。 今後の松枯れの防除対策としては、令和3年度において新たに薬剤の 樹幹注入に取り組むこととしており、計画的な保全管理を図ってまいり ます。
椿の振興については、椿実の増産及び椿生産者の収益増加対策として、 椿植栽の推進、剪定等による椿実収穫作業の省力化に取り組むとともに、 生産者に対し栽培方法等に係る管理講習会を実施します。また、椿関連事 業者との連携を図り、地域資源である椿を活用した「椿の島・五島」をP Rしてまいります。
水産業においても、コロナの影響による魚価の低迷等により厳しい漁 業経営が続いておりますが、漁協単位で策定した「浜の活力再生プラン」 に基づく漁業収入の向上や漁港施設などの水産関連施設の整備を支援す るとともに、鮮度保持技術の向上やブランド化、漁業者による経営計画の 策定や漁労機器導入を支援し、優良経営体の育成に努めてまいります。
また、国の離島活性化交付金を活用し、市内事業者が実施する水産加工 施設整備を支援する予定であり、地場産品の利用拡大、流通効率化に繋げ、 水産業及び地域の活性化を図ります。 漁業の担い手育成・確保については、都市部における就業者フェアへの 参加や漁業体験を実施するとともに、地元漁家子弟へ就業を促しながら、 新規就業を希望する研修生の確保に努めます。
令和3年度は、県の「次世 代を担う漁業後継者育成事業」による新規就業研修者が10名となる見 込みであり、そのうち5名はIターン者で、市外からの就業者も増加して おります。また、独立・着業後においても一定の要件のもとに漁具や燃油 等の漁業経費を支援することで、就業しやすい環境を整えてまいります。 離島漁業再生支援交付金については、令和2年度から令和6年度まで6 を実施期間とする第5期が始まっており、引き続き、磯焼け対策、種苗放 流、アオリイカ産卵床設置等に取り組むとともに、新規就業者の定着を図 るため漁船リース等の支援を行います。また、特定有人国境離島漁村支援 交付金を活用し、漁業者及び関連事業所の雇用拡大に取り組み、漁業集落 の活性化を図ってまいります。
磯焼け対策については、「五島市磯焼け対策アクションプラン」に基づ き、地域の活動組織や藻場見守り隊等と連携し、民間事業者等が持つ新し い藻場回復技術と地域の実態に対応した回復手法を取り入れながら、藻 場面積の回復・拡大に努めてまいります。
マグロ養殖事業については、県内生産量の2割強を占めるまで拡大さ れており、今後も増産が見込まれます。現在、通信大手のKDDIと連携 協定を締結し、養殖場における漁場の情報化に取り組んでおり、引き続き、 ICTやIoT技術を活用したマグロ養殖の振興に努めてまいります。
また、養殖マグロの市内での流通が少ないことから、漁協及び事業者と 連携し、島内における流通体制を整え、市内の店舗において提供し、市民 や観光客への消費を促すことでブランド化を図り、市内における販売促 進及び消費拡大を目指してまいります。
【物産・ブランドの振興】
五島産品の販路拡大と認知度向上に向けて、引き続き、五島市物産振興 協会と連携して取り組んでまいります。 協会には、現在、市内90の物産事業者が加盟しております。協会と東 京事務所及び福岡事務所が連携し、大都市圏の百貨店、ホテル、スーパー、 商社等に営業活動を行ったことにより、島外における五島産品の取扱店 舗数が約200店舗まで拡大しました。
昨年からコロナ禍により都市部の飲食店等で実施されていたフェアの 開催が困難な状況となっていることから、新たな試みとして全国にチェ ーン店を持つ大手スーパー等における販売促進事業の実施を予定してお ります。 今後、コロナの影響により厳しい状況が続くことが予測されますが、こ れまでの営業活動等で構築した大都市圏の関係業者等との繋がりを大切 にしながら、五島産品の魅力発信と販路拡大に取り組んでまいります。
ふるさと納税については、毎年、五島市出身の方々や五島市を応援して くださる方々から寄附をいただいており、五島市にとって貴重な財源と7 なっております。 今年2月末現在、約1万2,800件、前年比約140%となる約2億 7,200万円の寄附をいただいております。
また、昨年の台風9号及び10号による被害に対し、1,000万円を 超える災害支援寄附をいただいており、改めて感謝申し上げる次第であ ります。 今後もより多くの方に応援していただくため、情報発信力の強化と「五 島市ならでは」の魅力ある返礼品の充実を図るとともに、寄附された方の 意向に沿うことができるよう各種事業に活用してまいります。
また、企業が寄附を通じて、自治体が行う取組を支援した場合に税制上 の優遇措置が受けられる「企業版ふるさと納税」について、制度を活用す るために必要な地域再生計画を作成し、内閣府に提出しました。今後、計 画の認定を目指すとともに、より多くの支援をいただけるよう情報発信 に努めてまいります。
【企業誘致・地場産業の振興】
五島市における月間有効求人倍率は、今年1月時点で 1 を超えており、 事業者の人手不足が続いている状況にあります。 キャリアコンサルタント活用事業により個別の事業者に対する人材の 確保及び定着化を支援してまいります。 また、求職者の中には、就職氷河期に卒業時期を迎えたことにより、就 職ができない、あるいは非正規雇用として勤務しているなどの実態があ るため、国がこうした世代への支援策を打ち出しております。
五島市でも 交付金を活用し、就職氷河期世代の実態調査及び支援に取り組みます。 「人口急減地域特定地域づくり推進法」に基づく五島市地域づくり事 業協同組合については、今月中に県による設立認定が見込まれており、雇 用のミスマッチ解消に向け、その運営を支援してまいります。 また、市内の事業者に対し、県内就職応援サイト「Nナビ」や、誰もが 働きやすい職場づくり実践企業認定制度「Nぴか」への登録を促すととも に、Nナビ登録法人に就職した移住者に対して支給する「移住支援金」の 推奨に引き続き取り組んでまいります。
有人国境離島法に基づく雇用機会拡充支援事業について、今年度は4 1件の事業が実施され、令和2年12月末時点で80名の雇用が生まれ ました。平成29年度から今年度までの4年間で165件の事業が実施 され、440名以上の雇用が創出されております。
また、今年度から実施 している地域産業雇用創出チャレンジ支援事業では、5件の事業拡大と 1件の事業承継を支援しております。 8 令和3年度の雇用機会拡充支援事業については、事業者による取組が 早期に実施できるよう、新年度開始前に公募を実施したところ、創業7件、 事業拡大32件の合計39件の応募があり、その雇用創出計画は78名 となっております。現在、審査会を経て選定作業を進めており、4月1日 の交付決定を目指しております。
コロナ禍においても雇用の場を維持・拡大する重要な施策であり、引き 続き福江商工会議所や五島市商工会など関係機関と連携して事業実施を 支援してまいります。 これまでの取組の効果もあり、市内の高校卒業生をはじめとする求職 者の就職先として、市内事業所が選ばれる傾向にあります。今後も引き続 き、雇用の創出、人材の確保・定着に一体的に取り組み、市内の就職率及 び正社員率の向上を目指してまいります。
【再生可能エネルギー産業・次世代産業の創出】
崎山沖における浮体式洋上風力発電事業については、事業者選定の公 募が昨年末に終了し、6月頃には事業者が決定される予定となっており ます。事業者による建設工事の開始に当たっては、海洋工事などが安全か つ円滑に行われるよう関係機関と連携し、ウィンドファームの早期実現 に向けて取り組んでまいります。
また、市内の民間企業と連携して、AIやIoTなどの先端技術を、風 力発電の建設やメンテナンスなどに活用する取組を支援し、新たな産業 の創出につなげてまいります。 潮流発電については、環境省の実証事業として、「九電みらいエナジー 株式会社」が今年1月に国内初となる商用スケール500キロワットの 発電機を奈留瀬戸に設置しました。現在、発電量のデータ収集や環境影響 調査などが実施され、事業化に向けた検討が行われております。
今後も漁業者をはじめ地域住民のご理解をいただきながら実証事業が 円滑に進められるよう支援するとともに、商用・実用化に向け、国、県及 び事業者と連携しながら取り組んでまいります。
昨年12月、総理大臣官邸で行われた2050年カーボンニュートラ ル・全国フォーラムにおいて、五島市は2050年までに二酸化炭素排出 実質ゼロの早期実現を目指す「ゼロカーボンシティ宣言」を表明しました。 再生可能エネルギーや電気自動車の導入促進など、二酸化炭素排出抑 制に努めるとともに、関連産業における新たな雇用創出を図り、地域経済 の活性化に取り組んでまいります。
また、地域新電力会社と連携して浮体9 式洋上風力発電などの再生可能エネルギーで作られた五島産電気の地産 地消を図りながら、地域エネルギー資源を活用した持続可能な地域社会 の形成に取り組んでまいります。 平成30年度から実施している「五島市ドローンi-Landプロジ ェクト」については、今年度はコロナの影響により、海洋ごみ調査事業を 行うにとどまりました。
令和3年度については、今年度に予定していた農 地作付調査事業、無人物流事業などを実施したいと考えております。 今後も引き続き、ドローン等のIoT技術を活用し、民間と連携しなが ら新たな産業や雇用の創出、企業誘致などにつなげてまいります。
(続く)