コロナワクチンの開発レースで日本が遅れた理由

BBCニュースによると、

英オックスフォード大学は23日、英製薬会社アストラゼネカと共同開発中の新型コロナウイルス・ワクチンについて、大規模な治験の結果、70%の人が感染症COVID-19を発症しないことが確認されたと発表した。

と報じられています。

https://www.bbc.com/japanese/55042328

ワクチンが実用化されれば期待と安心感が広がりますが、

なぜ日本のワクチン開発は海外(英国や米国)と比べて遅いのでしょうか?

ワクチンというと、難しい横文字が沢山出てくるので、混乱しますよね。。

本日は、その理由を出来る限り分かりやすく解説します。

(大前提)早い≠良い

「日本は開発で遅れている」と言われていますが、それはあくまで相対的な評価に過ぎません。

本来、ワクチンの開発には数年を要し、候補にまでこぎつけても「10分の1」しか認可が下りないとされています。

それを1年足らずで行う事は、「従来のプロセスを無視したスピード工事」であるとも言えます。

そのため、「早い=良い」と考えるのは短絡的です。

逆に、時間をかければ良いものが生まれるとも限りません。

その前提を踏まえつつ、日本と海外の状況を比較してみます。

日本のワクチン開発は遅い?

日経新聞主催の(第7回日経・FT感染症会議 11月7日記事)によると、

医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センター長の保富康宏氏は「日本のワクチン開発は遅かった」と指摘。

とあり、同記事にて医薬品医療機器総合機構理事長の藤原康弘氏は

「大規模な臨床試験をできない日本の弱点が新型コロナで明らかになった」と振り返った。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65965780X01C20A1I00000

日本の開発状況

とはいえ、日本でも全く開発していないわけではありません。ダイヤモンド・オンラインによると、

明治HD傘下のKMバイオロジクスは早ければ11月から、組み換えタンパクワクチンを開発中の塩野義製薬は年内には臨床試験を始める予定

ですし、

バイオベンチャーのアンジェスが、DNAワクチンを開発中であり、現在、第I・II相試験(初期と中期の臨床試験)を終了し、今後カナダで第III相臨床試験(後期の臨床試験)の予定

とあります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c3fe53d3131a4e40249b372380305de0fc70052f?page=3

  • 日本:マッハで開発
  • 海外:超マッハで開発

という感じでしょうか。

それでは次に、「速さの違い」をもたらした要因を、2つに分けて紹介します。

①構造的な違い

日本の護送船団方式

端的に言うと、日本の国内メーカーは、

長らく開発競争から保護されてきた

という点が挙げられます。陸上に例えて言うと、

普段からレースにあまり参加していなかった

とも言えます。レースがなければトレーニングにも精が出ず、いきなりレースに出ても、早く走る事は出来ません。

その典型が「護送船団方式」と呼ばれるもので、国内メーカーを弱体化させる要因となりました。

日本ではインフルエンザワクチンの集団接種がなくなった80年代以降、接種率が低下し、国内の生産力は衰えていきました。

「ワクチン=戦略物資」の米国

その一方で、米軍は毎年数千万ドルをバイオ企業にばらまき、平時から多様な様式のワクチンを確保してきました。

いざパンデミック(世界的大流行)が起きたら、種の近い病原体のワクチンを応用して最短で大量生産・投入できる体制を構築しています。

ダイヤモンド・オンラインによると、

日本はワクチン後進国でありこそすれ、世界へのワクチン供給国としての国際競争力は皆無だ。

とされ、こうした事態を重く見た厚生労働省は2016年、

  • ワクチンは国家安全保障と公衆衛生の根幹にかかわる
  • 国内ワクチンメーカーは、これまでの護送船団方式から脱却する必要がある
  • 新規ワクチンの研究開発力や国際競争力を十分に持つ規模・形態・組織能力を確保することが必要

と方向転換を表明しましたが、実質的には何も変わらないまま、新型コロナウイルス・パンデミックを迎えることになりました。

②政策的な違い

端的に言うと、海外のメーカーは、

従来のやり方とは違うルートで承認を進めた

という点が挙げられます。陸上に例えて言うと、

ショートカットのルートを準備した

という感じです。その典型が米国の「ワープ・スピード作戦」と呼ばれ、その中身は

新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬、診断薬の開発、製造を最速で進めるため、従来にないやり方で米国政府が強力に後押しするもの。

という事で、従来のやり方を踏襲しないやり方を採用しています。

英国のオックスフォード大学では、アカゲザルでの実験結果を踏まえ、臨床試験までのスピードを高めています。

https://www.bbc.com/japanese/52673163

まとめ

日本のワクチン開発が海外と比べて遅いのは、構造的な理由により、国際競争力が弱っていたことが挙げられます

一方、例えば米国では「ワクチンを戦略物資」と捉え、有事に備えた投資を怠っていなかったことが挙げられます。

それに加え、海外の開発が早いのは、従来の方法に捕らわれない開発プロセスを採用しているからです。

ワクチン開発を巡り、海外との差が出た点については、国防の面からも戦略的に考え直すべきです