「外来生物」について考える

外来生物最前線

本日は、「あなたの知らない 五島の外来生物最前線」というトークイベントがあったので、ランニング終了後に参加してきました。

その感想と、「もやもや感」の紹介です。

イベントでは、五島在住で外来生物の調査・駆除を行っている上田さんから「五島の外来生物の状況」についてのお話があり、次に安田さんという方から「五島のタイワンリスの現状」のお話がありました。

まずは、外来生物を駆除する理由についての紹介です。

理由①. 生態系へ影響

駆除理由の一つ目は、「既存の生態系に悪影響を与える」というものです。

その例として、全国的に繁殖しているアメリカザリガニが、五島の中でどれだけ繁殖しているか、紹介されました。

五島では、天敵の少ない池や洞窟の中で、大量に生息しているため、定期的に駆除をしている、との事でした。

植物については、外来種が増える事により、景観への悪影響も紹介されました。

理由②.  経済への影響

五島の中でも特産品である椿。これがタイワンリスの被害を受けているという事で、対策の重要性が強調されていました。

同じく椿の島である伊豆大島や、同じ長崎県の壱岐では、駆除対策に失敗しているとの報告もありました。(熊本では成功?)

五島の全域にタイワンリスの生息域が広がってしまった場合、五島は「リスの島」になるとも警鐘が鳴らされました。

外来種ではありませんが、五島ではシカやイノシシ・カラスによる農作物への被害も少なくありません。

拡大を防ぐためには、火事と同じく、「初期消火」が大事であると紹介され、「増える量よりも取る量を増やす」という事が必要だと述べられました。

駆除の正当性

このように、一見すると、外来生物を駆除する事には、一定の妥当性・正当性があるように見えます。

ただ、私の個人的な感覚として、「外来」の生物を「駆除する」という発想に対して、批判的です。その理由としては、

  • 「外来種=人種差別」的な発想と同じじゃない?
  • そもそも、外来種を100%駆除するのは無理じゃない?
  • あるべき「正しい生態系」なんて幻想なのでは?

という想いがあります。これらの理由について、簡単に紹介します。

外来種の排除という発想

人類の歴史は差別と切り離せません。

五島の中でもカトリック/仏教という形でソトモノに対する差別があり、アメリカでは「黄禍論」と言うのが唱えられ、黄色人種に対する差別が吹き荒れました。

そして第二次大戦の末期には、大規模な迫害としてホロコーストが行われました。

現在は、EUから流入する難民に対してNoを突き付ける形でイギリスが離脱を決定しました。

動物の中でも、在来種と外来種を区別する事は、

「ソトモノは我々の(今までの)生活を奪う」

という恐れが根底にあり、動物の本能であるとも言えます。

しかし、講義の中でも紹介されましたが、外来種だからと言って、必ずしもすべての生物が悪さをするわけではありません。

ところが、議論の出発点がまず「外来種」となってしまっている事に、「あれ?」という感じがしました。

そうではなく、「私たちの守りたい景観とは?」というような出発点の方が、ストンと腹に入ってくるように感じられました。

100%の駆除は無理

そもそも、私たちが把握できている外来種は、本当にごく僅かに過ぎません。

それは外来種をもたらす要因(ヒトの動きと環境そのものの変化)が、今までになく大きいからです。

陸上の生物は分かりやすいですが、昆虫・鳥・魚は軽々と海を渡ってやってきます。海ごみと同じく、全てを対処する事は現実的に不可能です。タイワンリスについては、

「増える量より取る量を増やすべし」

との紹介がありましたが、変化し続ける生物の動きを全て把握し、駆除するのは不可能です。

外来種を駆除しようとする試みは、

流れ続ける川の表面に浮かぶ泡を潰そうとする試み

に似ています。

あるべき「生態系」という幻想

人間が想定する理想の「生態系」とは、人間にとって、都合のよい「生態系」です。

自然状態そのものを取り戻したいのであれば、人間の介入を0にすることが一番の近道ですが、中々そういう議論にはなりません。

人間が想定する生態系も、一つの自然災害や、法的な整備・予算の付け方によって大きく異なってきます。

それ以前の問題として、

「あるべき生態系って何だっけ?」

という議論が全く市民の間で不十分だと感じました。その部分の合意がない限り、駆除の活動も個人的な活動の域を出ないモノになってしまいます。

まとめ

人間以外の動物(例えばリス)の目からすれば、

人間が勝手に持ち込んだクセに、数が増えたからって今度は一方的に駆除するとは何事か。

しかも生態系に一番の悪影響を与えている自分たちの事は棚に上げて、なんて傲慢なんだ。

という感じがするでしょう。この問題は、「化石燃料をいかに減らすのか?」という議論と同じ構造だとも言えます。

 

もちろん、五島は椿と共に歩んできた島です。

そのため、ツバキを大事にしていかなければいけない、という意見が多いはずです。

その辺りは、生態系の事も踏まえながら、

正解のない問題を市民で討議し、

妥協点や解決策を見つけていくためのプロセス

が必要なのかと思います。