1月30日に五島市の次期総合戦略に関するパブリックコメントが公開されました。
https://www.city.goto.nagasaki.jp/s007/040/010/080/010/20190805170828.html
計画案
https://www.city.goto.nagasaki.jp/s007/040/010/080/010/010_0.pdf
市議選挙が始まってしまったので、じっくりと目を通す事が出来ませんでしたが、一般質問の前の情報収集として、改めて内容を熟読しました。その上で、パブコメが出せるようだったので、私の方で気になった点を質問して提出しました。市役所からの回答は行わないとの事でしたが、個人的にはとても気になっています。
目次
(そもそも)まち・ひと・しごと総合戦略とは?
市町村の最上位に位置付けられる計画です。五島市では2014年の「地方創生」の号令と共に5か年の計画がスタートして、2024年で2期目の10年目が終了となります。会社で言えば経営計画に相当する計画なので、非常に重要です。しかしながら、市民への浸透や理解はあまり進んでいないと感じていますし、議員さんの中でもどうでしょうか?
以下、私が読んで疑問に思った事や意見です。
①市民所得の向上について
基本目標1では「市民税所得割課税者の 一人当たりの総所得金額」を5年間で25万4千円向上させる事(A)を掲げています。
一方で、その下位目標と見える戦略プロジェクトの1-1から1-4を見る限り、どのKPIが達成させる事でAが達成されるのか分かりません。
Aの達成のためには、所得のある全ての市民が対象となるはずですが、戦略プロジェクトでは農業・漁業・物産・再エネ関連の事業者を重点とした目標が掲げられています。しかし、R5年度版の「五島市統計書」によると、五島市内の産業別従事者は、医療福祉が2,853人と最も多く、次いで卸売業・小売業が2,144人、農業1,330人、建設業1,222人と続きますが、医療福祉、小売、建設業の方々の所得向上に向けた目標やKPIが何も明記されていません。
市内で従事する従業員数が多い介護や福祉・サービスといった産業や業種は総合戦略の対象とせず、戦略プロジェクトで掲げられた一次産業従事者の所得が大幅に向上する事により、市民全体の平均値を底上げするという考え方でしょうか。「所得向上」を最上位目標に設定するのであれば、もう少し詳しい計算根拠を示していただきたいと思います。
②第二のふるさと五島の創造について
全119個のKPIの中で、ひときわ高い目標設定(現状の3倍以上)をしているのが、「教育旅行受入人数(人)」です。
しかしながら修学旅行向けの民泊事業はコロナ後に受け入れ家庭が減少し高齢化もあるため、現在でさえ持続が危ぶまれている状況です。こうした状況の中、現状よりも3倍もの受け入れをする能力は到底ないと考えられますが、計画の中では「民泊・教育旅行の受入強化、ワーケーションなどロングステイの受入環境づくりを進めます。」と述べられています。具体的にどういった方法で受け入れ人数を3倍に増やそうと考えているのでしょうか。実現可能性が疑問です。
➂デジタルノマド来島者数
現代ではPCやスマホを用いての仕事はどの業種にも浸透しており、誰がデジタルノマドかを定義し市役所側で実数を補足するのが困難であるため、KPIに設定するのは不適当だと考えらえます。仮に数万人単位での誘客を目標に設備投資やPRをするなら話は別ですが、たかが年間50人を目標にするのであれば、市内経済への影響も小さく、目標設定する意味がないと考えられます。
更に言うと、計画書では「関係人口拡大のため、ノマドワークやワーケーションの民間主体での受入体制を構築し」と記載されていますが、民間主体であるならば行政の最上位計画にそれを明記する事は矛盾していると思います。
④世界中から訪れる、 癒やしの“しま”をつくる
基本目標2のコンセプト自体は良いと思うのですが、戦略プロジェクトでは「癒し」のイメージ向上に結び付く内容が見当たらず、単に数値目標しか提示されていません。
目標に掲げるのであれば、戦略プロジェクトの項目にも「癒し」のイメージに繋がる内容を追記すべきだと考えます。
➄受入体制の整備
五島市では手ごろな価格で住める空き家が不足している状況であり、UIターン促進のボトルネックになっている状況です。「重点事業2-2—1 受入体制の整備」で示された大枠の方向性は5年前の計画策定時とあまり違いがなく、「良質な物件の発掘」も限界を迎えつつあると考えられます。空き家の解体補助や公営住宅の更なる活用など、住宅不足解消に向けた対策を強化しない限り、UIターンの年間300人目標達成は困難であると考えられます。
⑥「がん検診受診率」の位置づけ
【基本目標3】 安全・安心な、魅力ある“しま”をつくる、の中で、「がん検診受診率」が上位のKPIに設定されている事に違和感を抱きます。がん検診の受診が進むと安心・安全で魅力ある島だと言えるのでしょうか。戦略プロジェクトレベルのKPIで記載すべき内容だと感じます。
➆住みやすいと感じる市民の割合
前回計画時も今回と同じく80%を目標としていましたが、未達成の状況です(上述)。その要因を分析し、目標達成に繋がるアクションを実行する事が必要だと考えられますが、現状のKPIを見ると、どのKPIが市民の「住みやすさ」向上に繋がると考えているのか、今一つ分かりません。
アンケート結果のクロス集計では、地区によって回答のばらつきがあるため、二次離島を含む地域間格差の是正を行い、住みやすいと感じる市民の割合を増やすための、より具体的なアクションプランが必要ではないでしょうか。
⑧新市長の公約
R6年9月に当選された新市長の公約で掲げた政策が、市役所の最上位計画にあまり反映されていない事に違和感を抱きます。新市長は、企業誘致では工場やデータセンターの誘致、産業の創出ではビジネスコンテストの開催や姉妹都市との連携を掲げていました。
住宅密集地区では無電柱化、子育て世帯への取り組みとしては雨の日の子どもの遊び場整備、給食センターの改修なども検討項目に掲げていました。実現可能性はともかく、行政のトップである新市長が公約で掲げた政策や方向性が、総合計画にもっと反映されているべきではないでしょうか。