五島市魚市場の競りを見学に行きました

五島市魚市場の競り

五島市では日曜日を除き毎日、福江漁港で魚市の競りがあります。

本日は普段よりも魚の量が多く、市場は活況でした。

本日は競り市を観察しながら感じたことをいくつか書きとどめておきます。

牛の競りと魚の競りの違い

牛の競りと違い、魚の場合は競りの際に「出展者の名前」が不記載の場合が多いです。

大きな定置網で採れた魚はパックされて、生産者の名前が記載されていますが、殆どの魚は無記名のまま競売にかけられます。

そうすると、魚の名前は仲介業者の仕入れたものとなり、生産者の仕事に対する価値が見えづらくなります。

一方で、子牛の競りでは生産者や牛に関する様々なデータが吟味されたうえで、値段がつけられていきます。

その後、五島から出荷された繁殖牛は、肥育された土地で「〇〇牛」となり上書きされます。

魚介類と子牛の競り市場の違いは以下の通りです。

子牛
生産者名不記載が殆ど記載
商品の情報不記載記載
セーフティネットなしあり(上限付)
仲買業者島内島外(肥育農家)

参考情報 農林水産省

一度九州大学の先生から「五島の魚のトレーサビリティを高めるべきでは?」という話を聞いたことがあり、なるほどと思いました。

もちろん、全ての魚に対してどこで誰が取った魚であるかの情報を付与することは、大変な事務負担にはなるかと思います。

特に魚は鮮度が命ですので、朝の目まぐるしい競りの時間にそうした事務作業を行う事は、大変大きな負担になるとも考えられます。

ただ、何かしらの手段で魚のトレーサビリティを高め、釣った人または育てた人の情報が残る形が望ましいのでは、と思います。

五島市の漁業者数の推移

令和3年6月議会の答弁によると

漁業者数の推移については、令和2年3月末の管内3漁協の組合員数は、2,149名となっております。10年前の平成23年の組合員数は2,922名で、比較しますと773名、26.5%の減となっており、今後も減少傾向が続くのかなというふうに予想をしているところでございます。

という状況です。日本が長期的に人口減少していくことを考えれば、魚の消費量にも限界があります。

加工手段を増やして魚を保存できるようにするか、海外に販路を拡大しない限り、漁業生産高を増やすことは困難であるとも考えられます。

五島市の漁業者支援

国、県の漁業後継者育成事業

最長2年間の研修を実施し、独立型の漁船漁業による新規就業者の育成確保に取り組んでおり、現在漁家子弟とUIターン者合わせまして、30名が着業をしております。

新規就業者の独立時には初期投資を軽減

離島漁業再生支援交付金の新規漁業者特別対策交付金を活用して漁船リースへの支援を行っております。さらに着業後におきましても、燃油価格の高騰や魚価の低迷など、漁業を取り巻く厳しい環境の中で新規漁業就業者の漁業経営はより一層厳しい状況にあるため、市単独事業で独立後5年間の漁業経費支援も実施しております。

その他の支援

市としては他にも、度離島漁業再生支援交付金を活用して、

  • 血抜・神経締め技術講習会実施
  • 共同冷凍庫の使用による出漁日数増加
  • 種苗放流
  • イカ柴産卵床設置
  • 磯焼け対策事業
  • 海洋レジャーの取組

しています。

https://city.goto.nagasaki.jp/s063/020/020/030/010/zissizyoukyou.pdf

離島の漁業をめぐる現状

農業、漁業のどちらにおいても、燃料費の負担が大きい事、輸送コストが本土以上に係ることが、死活的な問題として立ちはだかります。

本土と比べると、離島は重いハンデを背負っている状態であると言えます。

最終消費地が都会ではなくて五島になればこの問題は解決できますが、その兆しは未だ見えておらず、むしろ一極集中は加速している状態です。

魚を食べモノとして捉えたとき、首都圏に偏った消費地を近づけるための施策も必要ではないかと感じます。

それだけでなく、「水産資源=食べモノ」で終わりとせず、

釣り体験としての価値提供や、環境資源としての捉えなおしも含め、

私たちの生活と海洋資源との関係性を見直し、再定義する事も必要ではないかと考えられます。