デジタル田園都市国家構想推進交付金
令和4年度3月議会に上程された予算の審議をしています。
本日はその中で、気になる事業を紹介します。
その名も「支所・本庁間遠隔相談窓口設置事業」でして、以下のイメージです。
費用対効果は?
私の考えとして、
1千万円近くのシステムを導入しなくても、分からない事があれば「本所⇔支所」で電話相談すれば良いのでは?
と感じました。モバイルクリニックのように、導入したけど維持費が高額で利用者の見込みもあやふやにならないか心配です。
そのため、本当にシステムを導入しなければならない必要性・合理性があるのか、委員会で質問しました。
聞き取った内容を整理すると、
- 発生頻度:年に数件程度
- 手続きの内容:戸籍関係の相談、資産税の管理関係の相談。移住相談の提案(これから具体的な手続きは精査)
- メリット:書類の現物をオンラインで見ながら対応できるようになる。
- 財源内訳:電算システム、サーバーソフト、初期環境構築の委託料、備品購入の端末、タッチパネルディスプレイ(初期導入費はデジタル田園都市国家で半分)
- 維持管理経費:35万、来年度は年度途中からの46万9千円を見込んでいる(一般財源)
質疑の内容だけでは、本当にこれが必要なのかどうかわからなかったので、福江島の4つの支所(岐宿・三井楽・玉之浦・冨江)を訪問して、現場のニーズを聞き取り調査をしてみました。
各支所で共通している事
各支所で共通しているのは
- 担当する業務範囲は幅広い(税務、福祉、介護、検診等)が、窓口対応する職員の数は少ない(1人~3名程度)。
- 確定申告やマイナンバーなど、支所の業務が増えると窓口対応の職員は更に減る(時間帯によっては不在)。
- 専門的な知識が求められる業務が発生すると、本庁への問い合わせが必要になる(当然と言えば当然)。
- 建物は新築への建て替えが進んでいる
という感じでした。
こうした状況から、支所の窓口担当の方からは
専門外の問合せや申請が発生した時に、繋げる本庁の窓口があれば助かる
という感じでした。
支所ごとに異なる事情
問合せ件数
冨江支所では月曜朝とお昼過ぎの来庁者が多く、窓口対応が追い付かない場合もあるとの事でした。
実際にR3年度の決算書を見ると、同じ支所でも玉之浦と富江では年間の戸籍関係の件数に7倍ほどの差があります。
- 本庁:22,705件
- 富江:1,173件
- 玉之浦:167件
これは人口規模もさることながら、支所の立地条件によるところが大きいと考えられます。
(荒川地区だったら玉之浦支所に行くよりも本庁の方が近い)
こうした事から、職員の数に対して問い合わせが多い富江では導入のメリットが高く、比較的件数の少ない玉之浦ではメリットが小さいと考えられます。
代替案と支所の役割
今回のシステム導入で期待される効果・目的は「支所に来た住民の課題がすぐに解消出来る仕組み」です。
それをする上で、必ずしも今回のようなシステムが必要でしょうか?
私の考えでは必ずしも必要ではありません。
今やネットとPCはどこでも整備されているので、ZoomやSlack等のソフトを経由して本庁に問合せが出来ます。
別の考え方として、わざわざ専門性の高い人に頼らなくても、AIに必要な業務の手続きを覚えさせ、回答してもらう事も考えられます。
難しくてイレギュラーな支所への相談が来ても、必要な手続きを支所の職員がAIを駆使して解決できれば理想的です。
職員の定数と業務
議会の答弁では現在の所、システムの導入に伴う支所職員の削減については考えていないという事でした。
が、人口減少と市の職員定数を見据えた場合、支所の職員を減らす事は避けられそうにありません。
そうした事も踏まえ、支所が将来的に果たすべき役割を考える必要があります。
【関連する議会提案】
結論
今回のシステムに関しては、
- 住民の課題解決に繋がる代替案(Zoom、Slack、チャットGPT等)
- 必要とされる場面と費用対効果
- 人口減少する中で、支所が将来的に果たすべき役割と人員配置
の検討が不十分であるため、導入の必要性は考える必要がありそうです。
国から半分初期導入費(デジタル田園交付金)が出るからと言って、ポンポン買って良い金額ではないはずです。
それと合わせて、
- 支所の負担軽減に向けた対策(負荷の分散、職員の増強)
は必要であると考えられます。