1月19日に長崎県知事からの発表がありました。
前提としては
- これまでの過去最多を大きく上回る409人の感染者が確認されるなど爆発的に感染が拡大
- このまま拡大が続けば、医療提供体制が逼迫し、県民の皆様の命や健康の維持に深刻な影響を及ぼすことが懸念
- 本県へのまん延防止等重点措置の適用が正式に決定された
- 長崎市、佐世保市をはじめ県民の皆様には、更に強い対策の実施をお願い
という事ですが、示された対策・要請に対して、
- 対策の科学的根拠はあるのか?
- リスクコミュニケーションは適切か?
という点が疑問です。
科学的根拠はあるのか?
会食について、長崎県民への要請として、
普段一緒にいる方と、4人以内かつ2時間以内とする(県独自の取り組み)
とされ、重点地域の飲食店に対しては、
終日、酒類の提供を行わないこと(利用者による酒類の店内持ち込みを含む)
と要請されています。
会食への制限は、感染拡大を防ぐ有効な対策のように見えます。
しかしこれまで、全国で度重なる飲食店への制限に対して、業界は大きなダメージを被ってきました。
こうした事から、食団連という団体が立ち上がり、「科学的根拠に基づく対策」を求めています。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000093536.html
今回の要請は、科学的根拠に基づいていない事から効果があるのか分からず、
逆に経済活動へのダメージが及ぶことを危惧しています。
県の方針に対する疑問の声
酒類の禁止については、知事選挙に出馬予定の大石氏もFB上で反対の意向を表明されています。
【「まん延防止」下におけるアルコール提供について】「まん延防止」下におけるアルコール提供について、私は提供できる選択肢は残すべきと考えます。そもそも今回、県がアルコールの提供を一律で制限することで、どのような効果が得られると考えているのか、その想定と根拠を知りたいと考えています。明確な根拠でなければ、大石は、アルコールの提供を一律で制限することは致しません。これまでの経緯から、それぞれの具体的な行動制限が、どのような客観的効果をもたらすのか、十分に分かっていない状態であることはご理解いただけると思います。しかし、そのような中で、経済活動を守り、教育や医療・介護・福祉を守っていかなければなりません。行動制限ばかりでは経済が倒れ、行動制限なくしては他が倒れます。医療をはじめ、他の分野で崩壊が生じないレベルに抑えつつ、積極的な制限緩和を行うべきと考えます。あとは、その上で、しっかりと持続可能な医療提供体制を整備し、ユーザーフレンドリーな情報提供を行って、県民の皆様が安心して生活できる環境を提供できるかが重要であると考えます。
現職の中村知事への支持を表明された立憲民主党長崎県連の赤木氏も、対策への疑問を呈しています。
【まん延防止措置について】
真面目な方が損をする。このコロナ禍何度あったことか。
・コロナ対策認証店と非認証店の不満
・家族5人の不平等
・対象区域の不安これらについて意見してきました。コロナ対策に100点はありませんが、よりよくなるようこれからも取り組みます。https://t.co/VfHwKzrTTl
— 赤木幸仁 長崎県議会議員(長崎市) (@yukihito_akagi) January 20, 2022
県民への要請である「会食時間・会食人数」の制限にしても、しっかりと県民が納得できる根拠を示す事が必要だと感じます。
リスクコミュニケーションは適切か?
1月19日の会見では、「県独自の取り組み」として、幾つかの方針が示されていますが、これらは「取り組み」ではなく「お願い」です。
会食制限は、あくまで要請ですので、従わない人がいたとしても、罰せられる事はありません。
そもそも、全ての県民に対して方針の遵守を強いる事は、現実的に不可能です。
そのため、「県独自の取り組み」と称して「やっている感」の演出に過ぎないと感じます。
その他、県独自とされる取り組みには以下の点が挙げられます。
- 県外出張の際は、出張先での県外の方との会食を控える
- 時差出勤やリモートワークの推進等による出勤者の半減
- 職員の行動管理や健康管理
- 重点措置区域(長崎市・佐世保市)については、開館時間の短縮や休館を実施
どれも従来から言われてきた「お願い」であり、どれだけ浸透するかも疑問です。
勿論、「やらないよりはやった方が良い」という意見もあると思います。
ただ、現実的でない要請を列挙するよりも、もっと端的に、
「これだけは守って下さい!」
とお願いした方が、県民に対するメッセージ性は強いと感じます。
まとめ
オミクロン株の出現により、重症化リスクや感染スピードなど、デルタ株とは異なる状況になりました。
オミクロンのリスクを巡っては、専門家の間でも意見が分かれているとの事です。
ところが、長崎県知事の発表を見る限りでは、
従来とは異なる状況に対して、従来と同じような対策・要請
しか出来ない事が、どうなんだろうか?と思う次第です。
しかし実際問題として、長崎県としても「有効な打ち手」がなかったのだと思われます。
そうした中で、Abemaの番組でも指摘されていましたが、政治家の意思決定に当たっては、
目に見える感染者数 > 目に見えずらい経済損失
になってしまう傾向がありそうです。
100%の正解は難しいのかもしれませんが、
- 慌てず冷静にオミクロン株に関するデータを分析した上で
- オミクロン対策のゴールを決め
- 科学的根拠と実効性の高い取り組みを実施する事
が大切であると考えます。
皆さんはどのように感じますか?