最近はヒアリング活動で、農村を歩き回る事が多いです。
本日は、聴いたお話の中から、
農業の後継者が不足している理由
について考えてみます。
①設備投資が高額
田んぼをやっている農家では、昔は牛さんが家族だったそうです。1家に1頭牛を飼い、農作業のパートナーでした。
ところが、機械化が始まると牛の役割は不要になり、徐々に必要性が薄れていきました。
最近では、東京オリンピックの影響からか、牛の価格も高値で推移しているため、農家さんも人間のお米よりも飼料米を作る方が多いそうです。
理由は、食用米に掛かる手間暇よりも、資料米を作る方が簡単で、価格も安定しているからだそうです。
そんな形で、現在の農業は「大規模化&機械化」が前提条件です。農機具・倉庫・ハウスなど、初期投資の金額が数百万~数千万にも及ぶため、
「自分で農業を始める=負債を背負う≒新築で家を建てる」
ようなものです。
行政的には、衰退著しい農業を支援する策として
- 農業研修生になって知識を身に着けてもらう
- 設備投資の融資を補助・斡旋し、農家になってもらう
を講じています。ところが、いざ始めてみても、設備投資を回収するまでには、数十年単位の「辛抱強さ」が必要となります。
始めるためのハードルの高さが、農業の特徴です。
②生産が不安定
農業は天候に左右されます。
特に最近は、大規模災害や○○年に1度の災害が常態化しているので、従来の経験則が全く通用しません。
五島あたりでは、普段は季節外れとなっている魚が、通年で採れるようになっているそうです。
それだけでなく、日本は今、深刻な人手不足に陥っています。
例えば収穫の時期を迎えた農産物があったとしても、人手がなければ出荷までの作業が進みません。
天候という不確実性と、人手不足という社会的な構造の変化の中で、工場のように安定した生産が見込めない点が、農業の難しさです。
➂価格が不安定
農作物は、他の生産者との競争にもさらされています。
海外の農産物は、米中貿易戦争の煽りを受けて輸入の量が増えたり、新規参入事業者との価格競争にもさらされます。
日本はまだ、アメリカほどの産業保護規制をしておらず、農業分野ではTPPを推進しています。
そうした中で、農産物の市場価格も不安定になります。
ダイレクトな卸先がなく、市場価格に依存する生産者からすれば、太陽光発電のような固定価格でない限り、とても継続が困難な状況ともなっています。
④輸送コストがかかる
生産した農作物が消費されるのは、大都市が多いため、一次産業では、そもそも「消費地が遠隔」であるという構造的な弱さがあります。
特に五島のような離島で厳しいのは「輸送コスト」で、この部分が価格に転嫁され、価格競争力の足かせとなります。
国境離島新法では、「輸送コスト支援事業」という形で、この部分の悪条件を緩和する方向性の措置が取られています。
輸送費用だけでなく、離島では「食品の加工施設」も少ないため、加工品のバリエーションも限られてしまいます。
補助の金額や制度そのものも、政治的な決定により覆る可能性があります。
まとめ
島の一次産業は、年々戸数が減り、大型化・機械化・企業経営家する傾向にあります。個人で農業を始める事が難しい理由は
- 設備投資が高額
- 生産が不安定
- 価格が不安定
という部分にあり、更に離島では、「輸送コスト」が足枷となります。五島に住んでいると、五島の方が
農業は儲からん。止めた方が良い。
というのも頷けます。
ただ、こうした不確実で不利な条件の中でも、儲かる事が不可能な訳ではありません。
https://nakanishidaisuke.com/2017/10/20/agri-corporation/
いずれにせよ、「根気強さ」は必須条件になりそうです。