次世代自動車産業の未来
この本を読んでみました。
かなり詳しく、「激変する自動車業界と自動車の未来」について書かれていました。簡単に内容の紹介と、感想を書いておきます。
100年に1度の危機
トヨタの社長が述べている通り、自動車業界は「100年の一度の危機」であり、「生きるか死ぬかの競争」を迎えようとしています。
その理由は、
- 今まで自動車には無縁だったIT企業が続々参入し
- 自動車のあり方・産業構造が根本的に変化
しているからです。その上で、
- それぞれの企業の経営方針や戦略
- それぞれの国の戦略
- 日本の立場と今後の方策
が詳しく紹介されています。
日本の自動車メーカー
本書でも問題提起されていましたが、
「日本は海外に比べ、次世代自動車産業に遅れを取っている」
という印象です。
個人的な見方として、その理由は、
自動車メーカーのピラミッド構造が上手く出来すぎている
ことではないでしょうか。
大手の会社を頂点としたピラミッド構造と、高い品質での生産方式は、日本が自動車業界を牽引してきたシステムです。
ただ、現在起きている大きな変化を前にして、
- 今までの雇用はどうするのか?
- 今までの取引先はどうするのか?
- 今までの工場はどうするのか?
という点が足かせとなり、スピードが結果を左右する競争に出遅れてしまっている感じがします。現状としては、
危機意識は足りているけど、スピードが足りない
という印象です。コレは相対的な問題ですので、世界の流れと変化も見ていく必要があります。
自動車業界に限らず、他の産業についても同じことが言えそうですね。
社会課題を解決する視点
2020年に控えた東京オリンピックでは、日本の技術力を世界にアピールする重要なチャンスとなり、次世代自動車のお披露目もされることでしょう。
具体的には、5G回線に接続されて、完全に自動的に走る自動車(区間は限定)のお披露目です。
ただし、日本の都市部に関して言えば、最早クルマという端末自体が不要なくらい、電車のネットワークが完成されています。
都市部の課題は交通ではなく、地震が起きたときの防災機能でしょう。
逆に、交通が社会的な課題となるのは、交通網の発達した都市部ではなく、交通が未整理で、人手不足に悩む山間僻地です。
そうした日本の農村部こそ、
「技術の社会課題への適用」
という枠組みで、「次世代移動手段」としての自動運転を世界に披露したほうが良いでしょう。
農村部の社会的な課題
私が住んでいる五島に関して言うと、確かに課題が山積しています。
- 利用率の低い路線バスの維持に、多額の税金が使われている
- 高齢者が大半を占め、山間部の交通弱者が増えている
- ガソリン依存の移動費用は、本土に比べて高額な負担
- マニュアル運転が困難な狭い道も、多数存在する
などなど。こうした高齢化に起因する社会的な課題の多さで言えば、世界に類を見ないと言っても過言ではありません。
何もしなければ、従来の行政サービスを維持する余力がないため、住む場所をコンパクト化するしかありません。
ところが、本書でも述べられている
「公共サービスとしての自動運転による移動」
が一般化されれば、山間部の僻地で居住することが、不利な条件にはなりません。技術の視点も大事ですが、
それで社会がどう変わるのか?
という視点も大事な気がします。