海ごみ交流事業
長崎県は、日本で2番目に海岸線の長い都道府県です。
海岸線が長いことに加えて特徴的なことは、韓国や中国と言った近隣諸国とも地理的に近いということです。
壱岐・対馬・五島では、「海ゴミ交流事業」と言うものが催されていて、平成29年度は中国・韓国の留学生も交えて壱岐市で行われました(12/23-12/24)。
2017年の参加者数は総勢137名で、海外からの参加者は上海6名、釜山30名となっています。
さらに日本と韓国は、生物の多様性に関する協定を結んでおり、相互協力が継続的に行われています。
今回は、そんな「海ゴミ交流事業」の内容をご紹介します。
長崎県の海ゴミを取り巻く状況
長崎県五島市出身のT川先生のご尽力によって、平成21年に「海岸漂着物処理推進法」が公布・施行されています。
関連リンク:環境省のHP
長崎県では、「長崎県海岸漂着物対策協議会」という組織が法律に則って組織され、市と連携しながら事業の推進に当たっています。
聴いた話では、シンポジウムを「離島開催」にすると、開催費用の9割が国の負担になるそうです。
そうした事もあり、ビジネス的には収益性のなさそうな「ゴミ拾い」活動が継続的に、多くの人を巻き込みながら実施されています。
離島に漂着するゴミは氷山の一角
離島の沿岸部には、実に大量の「海ゴミ」がやってきます。海に国境はないため、沿岸部のゴミは容赦なくかき混ぜられて滞留していきます。
その様子はまるで巨大なゴミの焼却処分場。ですが処分場との一番の違いは、誰もそれを焼いたりする人がいないことです。
そこで海岸に漂着した莫大な量のゴミたちを、学生さんやボランティがせっせと拾い集めます。
しかしながら、実は清掃除去で見つかっているのは、海に捨てられたゴミの1%に過ぎないそうです。
残りのゴミはどうなっているのかと言うと、
①人間が立ち入らない場所に漂着している
②漂着せずに海水を漂っている
③海に沈殿している
④細かくなって海中に浮遊している
⑤生物の体内に滞留している
ということです。韓国の大学生の発表によると、なんと「地球の海表の40%は海ゴミで溢れている」のだそうです。
まさしく、漂着したゴミは氷山の一角に過ぎない、と言うことがわかります。
マイクロプラスチックは人間の体内にも!?
上記の中で特に懸念されているのが⑤の状態のゴミ。生物の体内に取り込まれるくらいの小さなプラスチックは「マイクロプラスチック」と呼ばれ、魚の体内にも含まれているのではないかと指摘されています。
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人間が便利さを求めて消費したプラスチックが、巡り巡って人間の体内に取り込まれるという循環です。
マイクロプラスチック自体は人体への被害は未解明だそうですが、悪影響は0とは言えなさそうですね。
人間が出した排出物で人間自身が被害を被る。
環境汚染というくくりで見れば、規模こそ違えど福島第一原子力発電所と同じ構図になっています。
公害問題の厄介な点は、
- 関係のない人にまで被害が及び
- 責任を取る人が不明確である
という点に尽きるのでしょう。どれだけエコでクリーンな生活を自負していても、誰もが被害者になる可能性があるということです。
海ゴミ事業の継続性はあるの?
この活動が法律と言う国のルールによって推進されていることもあり、2017年時点では継続的な活動が行われています。
そして2018年の7月には、五島でも「海ゴミ交流事業」実施されるようです。
そこで私が疑問に思ったのは、
「1円もお金を生まない活動では勿体無いのでは?」
ということです。特に高齢化と過疎化が進む離島地域にあっては、どうしても「ボランティア活動」だけでは限界があります。参加するほうも疲れるし、継続性と言う観点で見れば大いに疑問です。
しかしそこには、最先端の技術を活用して、新しい産業が生まれそうな予感さえします。例えば、
『ゴミを加工した美術展を開く』
という活動だけを考えた場合でも、
- 「ゴミの情報収集」→ドローン活用による空撮
- 「ゴミの回収」→巨大ゴミロボットによる回収装置の開発
- 「ゴミの選別」→人工知能によって効率的なゴミの選別
- 「ゴミの保管」→空き家を活用し貯蔵庫として利用
- 「ゴミの加工」→芸術家の協力、作品の展示
- 「ゴミの販売・消費」→インターネットを活用し世界中に販売
というような循環が生まれそうです。ここでのポイントは、
「今まで出来なかったこと(上記1~3)」が、
「新しい技術」
を活用することにより、価値を生む種になる、と言うことです。こうした活動を成功に導くためには、
- 継続的に取り組むこと(=単なるボランティアではなく、楽しい要素を盛り込む)
に加え、
- 関係のなさそうな人たちも巻き込んでいくこと
が大切です。何しろ誰にも無関係なことではないですからね。
これ一枚だけでも事業計画書を書けそうな気がしますね。