※本記事は、五島市議会の一般質問の音声文字起こしをもとに、質問と答弁の趣旨を整理したものです。正式な議事録ではありません。文字起こしの性質上、誤字・脱字や数値等の誤りを含む可能性があります。
1.五島中央病院の厳しい経営状況と、五島の地域医療をどう守るのか
網本定信議員は、市民の生命を守る中核病院である五島中央病院の経営悪化について取り上げました。
単に「病院の赤字」の問題としてではなく、人口減少が進む五島市において、救急・入院・高度専門医療などを将来にわたってどのように維持するのかという、地域医療全体の問題として議論が行われました。
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 五島中央病院は、救急医療、入院医療、高度専門医療、災害時医療などを担う五島地域の中核病院です。
- 病院の経常収支は、令和5年度が約2億2,400万円の赤字、令和6年度が約3億1,100万円の赤字となりました。
- 令和7年度についても、2億円台の赤字となる厳しい経営状況が示されました。
- 市長は、人口減少に伴う患者数の減少に加え、診療報酬が公定価格である一方、人件費、医薬品費、物価などが上昇していることを経営悪化の主な要因として説明しました。
- 五島中央病院・富江病院・奈留医療センターの3施設に対し、五島市は毎年おおむね12~13億円を負担しており、過去10年間では約126億円に上ります。
- 病院企業団では、年間5億円を超える規模の経営改善に取り組んでいるものの、経営環境は依然として厳しい状況です。
- 患者満足度や医師とのコミュニケーションについても議論され、医療の質だけではなく、患者と医師との信頼関係も病院経営を考える重要な要素として取り上げられました。
- 今後は人口・患者数の減少に合わせ、病床数や診療機能などを適正化する必要性も示されました。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 市長は五島中央病院について、二次救急や高度医療を担う「市民の生命を守る最後の砦」との認識を示しました。
- 経営効率だけを優先し、市民に必要な医療水準を下回るような病院機能の縮小は行うべきではないとの考えを示しました。
- 人口や患者数の将来推計を踏まえ、病床規模や診療機能の適正化について病院企業団と検討していく方向です。
- 総合診療や在宅医療なども視野に入れた医師配置について、病院企業団と協議していく考えが示されました。
- 患者と医師とのコミュニケーションや信頼関係の改善についても、企業団に働きかけていく考えが示されました。
- 市だけでは解決できない構造的な経営問題について、国や県に対して診療報酬や地方財政措置の充実を求めていく方針です。
- 10年後、15年後も地域に必要な診療体制を維持するという視点から、五島中央病院の将来像を検討していく姿勢が示されました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 病院の赤字が続いた場合に、市がどこまで追加的な財政支援を行うのかについて、現時点で明確な基準や支援額は示されませんでした。
- 追加の財政支援については、今後の経営状況を踏まえ「個別具体的に判断する」という考えにとどまっています。
- 病床や診療機能の適正化についても具体的な規模や工程は示されておらず、将来の医療提供体制については今後の検討課題となっています。
- 病院経営の改善は企業団が主体となるため、五島市が直接経営改革を行える範囲には限界があるという構造的な課題もあります。
2.富江地区の基盤整備工事による養鶏場への影響
網本議員は、富江地区で行われた基盤整備工事に伴う騒音や振動により、近隣の養鶏場で産卵量が減少したとされる問題を取り上げました。
公共事業を進める一方で、地域で事業を続ける農業者への影響を行政がどのように把握し、支援するのかが論点となりました。
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 基盤整備工事における岩盤掘削などに伴い、養鶏場側から騒音・振動によって産卵量が減少し、経営に影響が生じたとの申し出がありました。
- 工事主体である県は、影響を抑えるため工法を見直しました。
- 県による損失補償も行われています。
- 五島市は、養鶏事業者からの聞き取り、県への報告や確認、現場状況の確認などを行ったと説明しました。
- 市は、県と事業者との協議や補償については、基本的に解決済みとの認識を示しました。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 市は、養鶏場から相談を受けた際に、県への情報提供や状況確認を行っています。
- 市長は網本議員からの指摘について、改めて県側に伝え、必要な相談を行う考えを示しました。
- 市としては、畜産クラスター事業など国・県の制度を活用しながら、市独自の上乗せを含めた一次産業支援を行っていることを説明しました。
- 地域の雇用や地産地消を支える農業事業者を守るという観点について、市としても重要性を共有する姿勢が示されました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 工事による経営損失に対する五島市独自の追加補償・支援については、具体的な実施方針は示されませんでした。
- 市は県による補償が行われていることから、基本的には県と事業者との問題として整理しています。
- 網本議員は、市長自身が現場の状況をより直接的に把握する必要性を指摘しましたが、市独自の新たな対応策に踏み込む答弁まではありませんでした。
- 公共工事による影響を受けた地域事業者に対して、市がどこまで主体的に支援するのかという点については、今後も課題として残ります。
まとめ
今回の網本定信議員の一般質問では、「市民の生命を守る地域医療」と「地域で事業を続ける農業者を守る行政の役割」という、人口減少下の五島市に共通する課題が取り上げられました。
五島中央病院については、市も「最後の砦」として医療機能を守る姿勢を明確にしています。一方、年間12~13億円規模の市負担が続く中、病院経営と医療機能をどのように両立させるのか、具体的な将来像を示すことが今後求められます。
富江地区の養鶏場については、県による工法変更や損失補償が行われたものの、市独自の追加支援には至っていません。公共事業によって地域産業に影響が生じた場合、市がどの段階から主体的に関与するのかについても、今後の行政対応が問われます。
