令和8年9月五島市議会定例会で、松本晃議員が取り上げた一般質問の内容を整理します。
今回は、五島中央病院・奈留医療センターの厳しい経営状況、二次離島における緊急搬送体制、市有の多目的船の導入、人口減少と若者の地元就職などについて議論が行われました。
※本記事は議会中継の文字起こしをもとに整理した議事メモです。正式な議事録ではなく、発言の全てを反映していないほか、文字起こしに伴う誤字・数値等の誤認を含む可能性があります。正式な内容は、後日公開される五島市議会の会議録をご確認ください。
1.五島中央病院・奈留医療センターの経営と地域医療
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 長崎県病院企業団は、平成21年(2009年)の設立以降で最も厳しい経営状況にあり、令和7年度決算では企業団全体で約23億円の赤字となったとの説明がありました。
- 五島中央病院は約2億3,500万円の赤字、奈留医療センターは約9,600万円の赤字となっています。
- 五島中央病院から奈留医療センターの運営を支えるための支援は、累計で9億円を超えているとの説明がありました。
- 病院企業団では年間5億円を超える規模の経営改善に取り組んでいるものの、患者数の減少、診療報酬が公定価格であること、人件費・医薬品費・物価の上昇などから、経営改善が追いついていない状況です。
- 赤字の継続によって病院企業団の内部留保資金が急速に減少しており、将来的には病院運営に必要な資金が不足する可能性もあるとの認識が示されました。
- 五島市は五島中央病院、富江病院、奈留医療センターなどに対し、現在も年間12~13億円程度の財政支援を行っています。
- 市長は、医療体制の低下は人口流出やUIターンの減少にもつながりかねないとして、五島中央病院を地域医療の「最後の砦」と位置付けました。
- 病院企業団では、今後、在宅医療や訪問看護、幅広い診療に対応できる総合診療なども含め、各病院の役割分担を進める方向性が示されています。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 市長は、五島中央病院や奈留医療センターなどの医療提供体制を守るため、現在の財政支援を今後も継続する考えを示しました。
- 病院企業団の経営改善だけでは危機を乗り越えられない場合には、別の支援のあり方についても研究・検討する考えが示されました。
- 松本議員からは、五島中央病院により優秀な医師や専門医を配置し、島内で対応できる医療を増やすべきとの提案があり、市長も「できる支援はしていかなければならない」との認識を示しました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 松本議員は、人口減少以外にも経営を圧迫している要因がないか、コンサルタント等も活用して詳しく分析する必要性を指摘しましたが、具体的な調査実施についての明確な方針は示されませんでした。
- 脳神経外科や心臓分野などの専門医を五島中央病院へ配置してほしいとの要望に対し、必要性への理解は示されたものの、具体的な医師確保策や時期までは示されませんでした。
- 奈留医療センターを含めた病院機能の将来像についても、現段階では抜本的な経営改善策や具体的なロードマップは明確になっていません。
2.二次離島の緊急搬送と市有多目的船の導入
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 令和8年6月15日に前島地区で緊急搬送訓練と住民との意見交換が行われました。
- 前島では高齢化が進んでおり、急病人を自宅などから港まで運ぶことが困難なため、住民から搬送用車両や車輪付きストレッチャーの配備を求める声が出ました。
- 市は軽自動車やカート等も検討しましたが、燃料補給、車検、維持管理などの問題から現時点では配備していません。車輪付きストレッチャーについても安全性を理由に配置には至っていません。
- 奈留地区では令和8年6月中旬から夜間の緊急搬送に対応する民間事業者が参入し、質問時点までに4回の夜間搬送を行ったとの説明がありました。
- 民間事業者が確保できなかった場合に備え、市役所内ではプロジェクトチームを設置し、民間事業者との委託契約、市有船による緊急搬送、協力事業者への支援などを検討してきました。
- 市が検討している市有船は、二次離島の急病人・けが人の搬送だけでなく、医師や看護師を二次離島の診療所へ派遣する用途にも活用する「多目的船」として導入する方針です。
- 多目的船の財源確保については最終的な調整段階にあり、財源が決まり次第、議会に予算案を提出する考えが示されました。
- 予算化、入札・契約、船の建造などを経る必要があるため、市長は実際の導入まで2~3年程度を見込んでいるとの説明をしました。
- 令和8年5月には海上タクシー事業者の組合が設立され、市は今後、組合を通じて緊急搬送への協力意思を確認する方針です。
- 市有船導入後も、船のドック入りや点検、緊急搬送が重複した場合などには民間事業者の協力が不可欠との認識が示されました。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 市有多目的船の導入が具体的な財源調整段階まで進んでいることが明らかになりました。
- 財源が決まり次第、速やかに予算案を議会へ提出する方針です。
- 二次離島では救命講習、応急手当、AEDの取り扱いなどを普及させ、住民自身による初期対応能力も高めていく方針です。
- 海上タクシー事業者の組合を通じ、二次離島ごとの緊急搬送対応事業者を整理したリストを作成し、奈留医療センターや各診療所などと共有する方向が示されました。
- 市有船が整備された後も民間の海上タクシー事業者と連携し、官民双方で持続可能な緊急搬送体制を構築していく考えです。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 前島住民から要望があった搬送用車両については、維持管理上の問題を理由に現時点での配備は困難との回答でした。
- 車輪付きストレッチャーについても、安全面への懸念から配置されていません。
- 多目的船については導入方針が示されたものの、正式な予算化や導入時期はまだ確定していません。
- 松本議員は、必要に応じて長崎本土まで直接患者を搬送できる船や、海上保安部等との連携強化も求めましたが、具体的な対応方針までは示されませんでした。
3.人口減少と若者の地元就職・雇用確保
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 松本議員は、この10年間で五島市の人口が約5,000人減少しているとして、若者が島に残るための具体策を質問しました。
- 市長は人口減少について、「静かに進んでいるというより、音を立てて崩れるような状況」との強い危機感を示しました。
- 今後は人口減少と同時に、幅広い業種で働き手不足や後継者不足が深刻化すると市も認識しています。
- 五島市では毎年40~50人程度の高校生が就職しており、そのうち市内に残って就職するのは約半数との説明がありました。
- 市ではハローワーク五島と連携した合同企業説明会や、誘致企業などを紹介する説明会を実施しています。
- 令和8年5月には、農業、漁業、商工、タクシーなどの関係団体と連携し、「若者に魅力ある求人」の確保に向けた取り組みを行いました。
- 今年度から、市内高校を卒業して地元事業所へ新たに就職した人を対象に5万円を支給する制度を開始しています。
- 地元事業者で働くために必要となる資格・免許の取得や更新にかかる費用の一部を助成する制度も開始しています。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 市は高校生に対し、「五島にどのような仕事があり、どの程度の収入が得られ、どのような職場なのか」を積極的に伝えていく方針です。
- 高校卒業後の地元就職者への5万円支給や、資格・免許取得費への助成など、若者の地元定着を直接支援する施策が始まっています。
- 市長は、市内就職する高校生を現在の約半数からさらに増やすことが五島市の将来にとって重要との認識を示しました。
- UIターンだけでなく、五島で育った若者がそのまま島に残るための施策についても、今後継続して取り組む考えが示されました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 市内就職率を高める方向性は示されたものの、「何年までに何%まで高める」といった具体的な目標値は示されませんでした。
- 市は事業者に「魅力ある職場」をつくってもらう必要性を強調していますが、賃金水準や労働環境など、若者が島外就職を選ぶ要因そのものを改善する具体策については今回の答弁では明確になっていません。
- 人口減少について市長自身が極めて強い危機感を示している一方で、人口減少を反転させるほどの抜本的な施策は引き続き大きな課題として残っています。
