子供の預け先が遠い|五島列島で進む少子化と離島子育ての現実

五島市と新上五島町の子育て環境


五島市の人口は約33,000人規模で、新上五島町の人口は約16,000人規模です。五島列島全体で人口減少が進む中、保育・教育・医療・交通をどう維持していくかは、地域の将来に直結する重要なテーマです。

特に離島部では、近くに保育園がない、出産のために島外へ出なければならない、保育施設まで長距離の送迎が必要になるなど、都市部とは異なる子育ての課題があります。

五島列島で進む少子化と子育て環境の変化

五島市では、子育て支援や移住促進、ファミリーサポートセンターなど、さまざまな支援制度が整えられています。
しかし、出生数は近年減少傾向にあり、子どもの数が少なくなることで、地域ごとの保育所や学校、医療体制の維持が難しくなっています。

少子化は単に「子どもの数が減る」という問題だけではありません。
子どもの数が減ることで、保育園や学校が統合・休園・廃止され、結果として保護者の送迎負担が増えることがあります。

つまり、五島列島の子育て課題は「支援制度があるかどうか」だけではなく、
子どもを預ける場所までどうやって通うのか
誰が日々の移動や見守りを支えるのか
という現実的な問題でもあります。

上五島では分娩休止により島外出産が必要に

新上五島町では、上五島病院の産科における分娩取扱いが休止され、妊婦が島外で出産しなければならない状況になっています。

妊婦健診などの一部機能は地域で継続されているものの、出産そのものは島外の医療機関を利用する必要があります。
これは妊婦本人だけでなく、家族にとっても大きな負担です。

島外出産には、交通費、宿泊費、仕事の調整、上の子どもの世話、精神的な不安など、多くの課題が伴います。
子育て支援を考えるうえでは、保育園や学校だけでなく、妊娠・出産の段階から地域全体で支える仕組みが必要です。

玉之浦では保育所の休園・集約により送迎負担が課題に

五島市玉之浦地区でも、保育環境の維持は大きな課題です。

地域内の保育所が休園・集約されると、子育て世帯は福江方面まで子どもを送迎する必要が出てきます。
玉之浦から福江方面まで送迎する場合、片道約25km、朝夕2往復で1日約100kmの移動が必要になるケースもあります。

これは、単なる「送り迎え」ではありません。
保護者にとっては、毎日の生活時間、燃料代、仕事の調整、体力的負担に直結します。

保育施設を維持することが難しい地域ほど、送迎支援や地域での見守り体制が重要になります。

奈留島では保育所から高校までが一つのエリアに集約

一方で、奈留島では特徴的な取り組みも見られます。

奈留島では、保育所、小学校、中学校、高校が近接したエリアに集約されており、子どもの成長を地域全体で見守る環境がつくられています。

幼児期から高校生までが近い場所で過ごす環境は、全国的にも珍しい事例です。
少子化が進む地域において、教育・保育機能をどう維持していくかを考えるうえで、一つの参考になる形だと言えます。

施設を分散させるのではなく、子どもが少ないからこそ機能を集約し、世代を超えた見守りを生み出す。
これは、離島における子育て支援の一つの方向性です。

久賀島には保育園がなく、園児は船で通園

久賀島では、さらに別の課題があります。

久賀島には園児が通う保育園がありません。
そのため、園児は船を使って福江島側の保育施設へ通う必要があります。

久賀島では今年、1人の小学生が入学しました。
一方で、島内には園児が通う保育園がないため、平日はファミリーサポート事業として、園児の送迎支援が行われています。

筆者自身も、久賀島の園児送迎の見守り活動を担当しています。

久賀島の園児送迎の一日

新年度以降、久賀島の園児送迎は20日目を迎えました。
朝のスケジュールは、次のような流れです。

6:45福江港バス停到着
6:50福江港バス停出発
7:15奥浦到着
7:30フェリーひさか出発
8:00久賀島到着・園児お迎え
8:35福江島到着・園児送迎
8:45終了

※日によっては当番対応があります。

行きの船では、読書をしたり、スケジュールを整理したり、日記を書いたりしています。

帰りの船では、島の方々と園児のふれあいを見守りながら、和気あいあいとした時間を過ごしています。

この時間は、単なる移動ではありません。
島の人と子どもが顔を合わせ、声をかけ合い、地域全体で子どもの成長を見守る時間でもあります。

ただし、この仕組みは自然に成り立っているわけではありません。
船の時間、保育施設の時間、保護者の仕事、見守り役の確保がうまく組み合わさって、ようやく成立しています。

子どもの預け先が遠いという現実

都市部であれば、保育園や幼稚園が自宅や職場の近くにあることも多いかもしれません。
しかし、離島や人口の少ない地域では、子どもの預け先が遠いこと自体が大きな負担になります。

預け先が遠いということは、保護者の生活に次のような影響を与えます。

  • 毎日の送迎に長い時間がかかる
  • 燃料代や交通費の負担が増える
  • 仕事の時間を調整しなければならない
  • 悪天候や船の運航状況に左右される
  • 見守りや送迎を担う人材が必要になる

子育て支援を考える際には、保育料の補助や制度の有無だけでなく、
実際に子どもを預ける場所まで通えるのか
という視点が欠かせません。

少子化対策には「制度」だけでなく「移動」と「見守り」の設計が必要

五島市には、子育て支援制度やファミリーサポートセンターなど、さまざまな支援があります。
しかし、少子化が進む離島では、制度があるだけでは十分ではありません。

重要なのは、次のような視点です。

  • 子どもを預ける場所まで安全に移動できるか
  • 保護者が毎日送迎できない場合、誰が支えるのか
  • 保育所を地域ごとに維持するのか、集約するのか
  • 集約する場合、送迎負担をどう補うのか
  • 子どもが少ない島でも、地域とのつながりをどう保つのか
  • 妊娠、出産、保育、学校までを一体で考えられるか

人口が少ない地域では、保育所や学校をすべての地区に維持することは難しくなります。
一方で、施設を集約すれば、今度は移動の負担が発生します。

つまり、離島の子育て支援は、施設整備だけでも、補助金だけでも足りません。
交通、保育、教育、医療、地域ボランティアをつないだ仕組みづくり
が必要です。

五島市ファミリーサポートセンターの役割

五島市ファミリーサポートセンターでは、子育てを手助けしてほしい人と、子育てを手助けしたい人をつなぐ活動を行っています。

支援内容には、保育施設までの送迎、保育施設の開設前後の預かり、病児・病後児の預かり、産前産後の家事援助などがあります。

久賀島の園児送迎のように、地域の子育てを支える現場では、こうした仕組みがとても重要になります。

子育ては、本来は家庭だけで抱えるものではありません。
特に離島や人口の少ない地域では、地域の人が少しずつ関わることで、子どもが育つ環境を守ることができます。

五島市ファミリーサポートセンターでは、子育て支援に関わってくださる新規会員を募集しています。

子育てを地域で支える活動に関心のある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

Instagram:@famisapo1111

五島市ファミリーサポートセンターについては、五島市公式サイトもご確認ください。

五島市ファミリーサポートセンター|五島市公式サイト

まとめ:子どもの数が少ない地域ほど、子育て支援の価値は大きい

五島列島では、人口減少と少子化が進んでいます。

五島市では出生数が減少傾向にあり、新上五島町では分娩取扱いの休止により、島外出産が必要になりました。
五島市内でも、玉之浦、奈留島、久賀島のように、地域ごとに保育環境は大きく異なります。

子どもの数が少なくなると、保育所や学校を維持することは難しくなります。
しかし、子どもの数が少ないからこそ、1人ひとりの子どもを地域で支える意味は、より大きくなります。

久賀島の船通園は、五島列島の少子化の現実を象徴する出来事です。
同時に、地域の人が関わることで、子どもの育ちを支えることができるという希望でもあります。

子どもの預け先が遠い。

それは、単なる不便さではなく、離島の未来をどう支えるかという問いでもあります。

参考情報