保護司法改正に伴い注意すべき変更点を解説

保護司法等の改正について

1. 研修の目的

今回の研修テーマは、保護司法等の改正についてです。

令和7年12月10日、更生保護制度の充実を図るために、
保護司法等の一部を改正する法律が成立・公布されました。

ただし、この改正法はすでに公布されているものの、現時点ではまだ施行されていません。
一部の規定を除き、公布日から起算して1年を超えない範囲内で、政令で定める日から施行される予定であり、
令和8年12月頃の施行が見込まれています。

そのため、現在運用されているのは改正前の保護司法であり、改正後の制度が実際に運用されるのは、今後の施行日以降となります。

今回の研修では、主に次の点について説明が行われました。

  • 保護司法改正に至った背景
  • 改正の主なポイント
  • 今後想定される保護観察所や保護司会の取組
  • 保護司からの意見聴取

また、研修の最後には、保護司の意見を記入する用紙の提出が依頼されました。
今後、保護観察所が具体的な取組を検討していくにあたり、現場の保護司の意見を参考にしたいという趣旨です。

2. 法改正に至る背景

保護司法は、昭和25年に制定されました。
その後、平成10年に実質的な改正が行われ、今回の改正は
27年ぶり、実質2度目の大きな改正となります。

今回の改正の背景には、大きく次の2点があります。

  1. 保護司の担い手不足
  2. 保護司の安全確保

3. 第二次再犯防止推進計画で示された課題

令和5年3月に閣議決定された第二次再犯防止推進計画において、
保護司制度に関する現状認識と課題が示されました。

保護司は、犯罪をした人や非行のある少年が社会の中で孤立せず、安定した生活を送れるよう、
保護観察官と協働して保護観察などの活動を行っています。
地域社会の安全・安心にとって、欠かすことのできない存在です。

一方で、次のような課題も指摘されています。

  • 保護司の担い手確保が年々難しくなっている
  • 保護司の高齢化が進んでいる
  • 保護司活動に伴う不安や負担が大きい
  • 幅広い世代から多様な人材を確保する必要がある
  • 持続可能な保護司制度を構築する必要がある

これを受け、法務省では、保護司の待遇、活動環境、委嘱条件、職務内容、
保護観察官との協働体制などについて検討を進めることとされました。

4. 持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会

令和5年5月、法務省において、
「持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会」が設置されました。

この検討会では、保護司や関係者、有識者などにより、保護司制度の今後のあり方について議論が行われました。

検討会は令和5年から令和6年10月頃まで複数回開催され、最終報告書が取りまとめられました。
その中で、保護司の使命、委嘱条件、職務内容のあり方、活動環境の整備、安全確保などについて、
保護司法の見直しが提言されました。

また、令和6年5月には、滋賀県大津市で保護司が自宅で殺害される事件、いわゆる
大津事案が発生しました。
この事件を受け、保護司の安全確保を求める声がさらに高まりました。

こうした背景を踏まえ、令和7年12月に保護司法等の改正法が成立・公布されました。

5. 改正の主なポイント

今回の保護司法改正のポイントは、大きく次の3つです。

  1. 保護司の適任者確保
  2. 保護司の活動環境の改善
  3. 保護司の安全確保

6. 改正ポイント① 保護司の適任者確保

保護司の適任者確保については、主に次の3点が改正内容として挙げられます。

  1. 保護司の使命および委嘱条件の見直し
  2. 広報や関係機関との連携による多様な人材確保
  3. 保護司の任期延長

6-1. 保護司の使命・委嘱条件の見直し

改正前の保護司法では、保護司の使命に関して、
「地域社会の浄化」という表現が使われていました。

しかし、この表現については、対象者の更生を支える活動を「浄化」と表現することに違和感があるとの意見もありました。

今回の改正では、この表現が改められ、
「安全安心な地域社会の実現」という趣旨の表現に変更されました。

また、委嘱条件についても、従来の
「時間的余裕を有していること」
という表現が見直され、
「職務遂行に必要な時間を確保できること」
という趣旨の表現に変更されました。

これは、現役世代や働きながら活動する人も含め、多様な人材が保護司として活動しやすくするための見直しと考えられます。

6-2. 多様な人材確保に向けた保護観察所の責務

これまで保護司候補者の推薦は、実務上、保護司自身の人脈に頼る部分が大きい状況でした。

しかし、地域社会のつながりが希薄化する中で、この方法だけでは限界があります。
そのため、保護司や保護司会だけに任せるのではなく、
保護観察所が主体的に人材確保に取り組むべきという意見が示されました。

今回の改正では、保護観察所長の責務として、次のような取組が明記されました。

  • 保護司の職務の意義や内容に関する広報
  • 関係行政機関との連携
  • 多様な人材確保に向けた協力要請
  • 保護司会や保護司と協働した人材確保

具体的な取組としては、次のようなものが想定されています。

  • 保護司活動インターンシップ
  • 保護司活動メンターシップ
  • 保護司セミナー
  • 地方公共団体への働きかけ
  • 経済団体、職能団体、地域団体への協力要請

保護司活動インターンシップは、保護司活動を体験する機会を提供するものです。
一方、保護司活動メンターシップは、継続的・定期的に更生保護活動に関する情報提供を行う取組です。

6-3. 保護司の任期延長

保護司の任期についても改正が行われます。

従来の任期は2年でしたが、改正後は3年に延長されます。

これは、保護司としてより長期間活動してもらい、その間に一定の活動経験を積んでもらうことで、
保護司としての適性や活動継続の意欲を高めることを目的としています。

ただし、任期延長の具体的な運用については、現時点ではまだ正式な通知が来ていないとの説明がありました。

現段階で示されている運用イメージとしては、
施行日より後に委嘱・再任された保護司の任期が3年になる
という考え方です。

一方、施行日前に委嘱・再任された保護司については、経過措置により、従前どおり2年の任期が適用される見込みです。

ただし、これはあくまで現時点での運用イメージであり、正式な取扱いについては今後、保護観察所から改めて連絡される予定です。

7. 改正ポイント② 保護司の活動環境の改善

保護司の活動環境の改善については、主に次の4点が挙げられます。

  1. 更生保護サポートセンターの法定化
  2. 保護観察所長による保護司会への支援規定の新設
  3. 地方公共団体からの協力確保
  4. 民間事業者からの協力確保

7-1. 更生保護サポートセンターの法定化

更生保護サポートセンターは、これまでも各地で設置・運用されてきましたが、
法律上明確に位置づけられていたわけではありませんでした。

今回の改正により、更生保護サポートセンターが保護司法上に明記され、法定化されました。

これにより、地方公共団体に対して、保護司会や保護司活動への協力を求めやすくなることが期待されています。

7-2. 保護観察所長による保護司会への支援

今回の改正では、保護司会への支援についても規定が設けられました。

保護司組織がその任務を円滑かつ効果的に遂行できるよう、
保護観察所長が情報提供や助言などの必要な支援を行うことが明記されました。

具体的には、次のような支援が想定されています。

  • 保護司会の運営方法に関する助言
  • 地方公共団体との協議への保護観察所の積極的関与
  • 保護司会の会計事務などへの支援
  • 保護司活動に関する事務の簡素化
  • デジタル化による負担軽減
  • 実費弁償金の充実

保護司が長く活動を続けられるように、組織運営や事務負担の面から支援を強化することが目的です。

7-3. 地方公共団体からの協力確保

地方公共団体による保護司および保護司組織への協力についても見直しが行われました。

従来は、地方公共団体が協力することが「できる」という規定でしたが、
今回の改正により、より積極的な協力を求める規定に改められました。

想定される協力内容としては、次のようなものがあります。

  • 庁舎やコミュニティセンターなどの公的施設を面接場所として提供すること
  • 土日祝日や夜間にも利用できる面接場所を確保すること
  • 広報誌などで保護司活動を紹介すること
  • 地方公共団体職員の中から保護司の適任者を推薦すること
  • ボランティア休暇や職務専念義務免除の対象に保護司活動を含めること

7-4. 民間事業者からの協力確保

民間事業者についても、保護司活動への配慮規定が設けられました。

具体的には、保護司である従業員が活動しやすいよう、
休暇を取得しやすい環境を整備することなどが求められます。

これにより、現役世代の保護司が、仕事をしながら保護司活動に参加しやすい環境を整えることが期待されています。

8. 改正ポイント③ 保護司の安全確保

保護司の安全確保については、主に次の3点が改正内容として示されました。

  1. 利便性の高い面接場所の確保
  2. 担当保護司の複数指名の積極活用
  3. 保護観察官による直接関与の強化

8-1. 利便性の高い面接場所の確保

保護観察所において、夜間や休日を含め、柔軟に利用できる面接場所の確保を引き続き進めることとされました。

これにより、保護司が自宅で対象者と面接する負担や不安を軽減し、
安全な環境で面接を行えるようにすることが目的です。

8-2. 担当保護司の複数指名の積極活用

事件担当の指名にあたり、新任の保護司が担当する場合や、保護司本人から希望があった場合には、
複数の保護司を担当として指名することを積極的に活用していくこととされました。

複数指名により、保護司が一人で抱え込むことを防ぎ、相談しながら活動できる体制づくりが期待されます。

8-3. 保護観察官による直接関与の強化

保護観察対象者に対するアセスメントを適切に実施し、
事案に応じて保護観察官が直接関与する場面を強化していくこととされました。

特に、いわゆる4号対象者については、
原則として保護観察開始直後に少年鑑別所による鑑別を求めることとされています。

9. 保護観察対象者の区分

研修では、保護観察対象者の区分についても説明がありました。

保護観察対象者は、大きく次の4つに分けられます。

9-1. 1号対象者

家庭裁判所の審判により、少年院送致ではなく、そのまま保護観察処分となった少年です。

9-2. 2号対象者

家庭裁判所の審判により少年院送致となり、その後、少年院から仮退院して保護観察を受ける少年です。

9-3. 3号対象者

刑務所に収容された後、仮釈放となり、その仮釈放期間中に保護観察を受ける成人です。

9-4. 4号対象者

裁判所で保護観察付き執行猶予の判決を受けた成人です。

4号対象者は、刑務所や少年院を経由せず、裁判の言渡し後すぐに保護観察が開始されます。
そのため、本人の生育歴、家庭環境、性格、能力、障害の有無などに関する情報が、
保護観察所に十分にない状態で始まる場合があります。

このため、4号対象者については、保護観察開始直後に少年鑑別所による鑑別を求め、
リスクや処遇方針の見立てを行うことが重視されます。

この点については、今後の定例研修会でも改めて説明される予定です。

10. その他の改正 更生保護事業法の改正

今回の改正では、保護司法だけでなく、更生保護事業法の改正も行われています。

更生保護事業法は、更生保護施設などに関係する法律です。

更生保護施設とは、刑務所や少年院を出た後、帰る場所や引受人がない人が一時的に生活し、
自立に向けた支援を受ける施設です。

保護司の安全確保が課題となる中で、同じく更生保護を担う更生保護施設の職員についても、
安全確保の重要性が高まっています。

そのため、更生保護施設などの職員の安全確保に関する改正も併せて行われました。

11. まとめ

今回の保護司法改正の大きなポイントは、次の3つです。

11-1. 保護司の適任者確保

  • 保護司の使命や委嘱条件の表現が見直された
  • 保護観察所が広報や関係機関との連携を通じて人材確保に取り組むことが明記された
  • 保護司の任期が2年から3年に延長される

11-2. 保護司の活動環境の改善

  • 更生保護サポートセンターが法定化された
  • 保護観察所長による保護司会への支援規定が設けられた
  • 地方公共団体の協力がより明確に求められるようになった
  • 民間事業者にも、保護司活動に参加しやすい職場環境づくりが求められるようになった

11-3. 保護司の安全確保

  • 安全で利便性の高い面接場所の確保が進められる
  • 担当保護司の複数指名が積極的に活用される
  • 保護観察官による直接関与が強化される
  • 特に4号対象者については、開始直後の鑑別やリスク評価が重視される

12. 研修後の依頼事項

研修の最後に、保護司に対して意見記入用紙への記入が依頼されました。

記入内容としては、例えば次のようなものが想定されます。

  • 今後進めてほしい取組
  • 保護司活動上の不安や課題
  • 面接場所や安全確保に関する意見
  • 人材確保に関する意見
  • 任期延長や活動環境改善に関する疑問点
  • 保護観察所に求めたい支援

記入後は、前方の机に提出するよう案内がありました。

以上をもって、今回の研修「保護司法等の改正について」の説明が終了しました。

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