離島で相次ぐ定期航路の減便/自治体に求められる対策は?

離島航路を守るために、船員確保への支援を

長崎県の離島では、船員不足により船便が欠航を余儀なくされるケースが相次いで発生しています。

各社それぞれの事情はありますが、人口減少による働き手不足は離島においても深刻です。中でも、離島航路は島民の生活、通院、通学、物流、観光、そして緊急時の移動を支える「命綱」としての役割を果たしており、単なる交通手段にとどまらない重要なインフラです。

  • 対馬ではジェットフォイルの減便
  • 五島では定期便の欠航
  • 二次離島では海上タクシーの担い手不足

こうした状況を受けて、市町村としても対応を余儀なくされています。

赤字補填だけでは航路を守れない段階に

陸上交通を含む公共交通に対しては、これまでも航路や路線の赤字補填、運営支援、燃料費高騰対策など、多額の補助金が投じられてきました。

もちろん、離島航路の維持にはこうした財政支援が不可欠です。

しかし、いくら運航経費を補助しても、実際に船を動かす船員が確保できなければ、便は出せません。つまり、今後の離島航路対策は、単に「赤字を補填する」だけではなく、「働き手をどう確保するか」という視点が必要になっています。

肝心の働き手確保については、事業者努力だけでは思うように進んでいないのが実態です。人口減少が進む離島地域では、地元だけで人材を確保することは年々難しくなっています。また、船員という仕事は専門資格や実務経験が必要であり、すぐに人を増やせる職種ではありません。

船員不足は事業者だけの問題ではない

船員不足は、単に航路事業者の経営課題ではありません。

航路が欠航・減便すれば、島民の通院や通学、物資輸送、観光客の移動、災害時の対応にも影響が及びます。特に二次離島では、海上タクシーや小型船が地域の生活を支えているケースも多く、担い手不足は地域存続に直結する問題です。

そのため、市町村としても、安定的な航路の維持に向けて、人手確保に資する支援策を検討する段階に来ているのではないかと考えます。

全国の公共交通支援策から見える有効策

今回、有効な支援策がないか、全国の公共交通事業者への支援策をAIで調査・整理しました。

その結果、離島航路にも応用しやすい支援策として、特に有効だと考えられるものは次の3つでした。

1位:船員資格取得・研修費補助

最も重要なのは、船員に必要な資格取得や研修に対する補助です。

船員として働くためには、海技免許や安全講習、旅客対応に関する研修など、一定の専門的な資格・知識が求められます。これらの取得には費用も時間もかかるため、個人や事業者だけに負担させるのではなく、行政が支援する仕組みが必要です。

例えば、以下のような費用を補助対象にすることが考えられます。

  • 海技士免許や小型船舶操縦士免許の取得費用
  • 旅客船の安全講習・研修費用
  • 研修受講に伴う交通費・宿泊費
  • 資格取得期間中の事業者負担の一部
  • 新規採用者や若手船員の育成費用

船員不足は短期間で解決できる問題ではありません。だからこそ、今から計画的に人材を育てる制度が必要です。

2位:採用支度金・移住支援金

次に有効だと考えられるのが、採用支度金や移住支援金です。

離島で働く場合、島外からの移住が必要になるケースもあります。その際には、引っ越し費用、住居費、生活の立ち上げ費用などが大きなハードルになります。

そこで、船員として一定期間勤務することを条件に、採用支度金や家賃補助、移住支援金を支給する制度が考えられます。

例えば、次のような支援です。

  • 島外から就職する船員への移住支援金
  • 家賃補助や住宅確保支援
  • 採用時の支度金
  • 一定期間勤務した場合の奨励金
  • 短期離職時の返還規定を設けた制度設計

特に若い世代や子育て世帯にとっては、仕事だけでなく住まい・生活環境も重要です。人材確保を進めるためには、雇用支援と移住定住支援を一体的に考える必要があります。

3位:高校生・若者向け乗船体験

3つ目は、高校生や若者向けの乗船体験です。

船員という仕事は、地域にとって重要である一方で、若い世代にとっては仕事内容が見えにくい職業でもあります。実際に船に乗り、現場で働く人の話を聞き、仕事の魅力や役割を知る機会をつくることが必要です。

特に離島地域では、地元の高校生や若者が、島の交通を支える仕事を進路の選択肢として考えられる環境づくりが大切です。

具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • 高校生向けの乗船体験
  • 船員による出前授業
  • 航路事業者の職場見学
  • インターンシップや短期就業体験
  • 水産高校・普通高校・専門学校との連携

将来的な担い手を増やすためには、早い段階から「船員という仕事を知る機会」をつくることが重要です。

加えて必要な支援策

上記の3つに加えて、離島航路の実情を考えると、次のような支援も必要だと考えられます。

船内・職場環境の改善

若い世代や女性が働きやすい環境を整えるためには、船内や港の待機所の環境改善も重要です。

  • 船内Wi-Fiの整備
  • 仮眠室・休憩室の改善
  • トイレ・更衣室・シャワー設備の整備
  • 女性船員が働きやすい設備の整備
  • 港側の待機環境の改善

人材確保は、給与や資格取得支援だけでは不十分です。「ここで働き続けたい」と思える職場環境を整えることも、行政支援の対象として検討すべきです。

海上タクシー・小規模航路への支援

二次離島では、定期船だけでなく、海上タクシーや小型船舶が地域の生活を支えています。

しかし、こうした小規模な海上交通は、制度の枠組みから漏れやすい面があります。高齢化や後継者不足が進めば、住民の移動手段が一気に失われる可能性もあります。

そのため、海上タクシー事業者に対しても、資格取得、安全設備、燃料費、後継者育成、代替船確保などを支援する仕組みが必要です。

行政がまず行うべきこと

今後、行政として取り組むべきことは、まず事業者の現状を正確に把握することです。

  • 各航路で何人の船員が不足しているのか
  • 今後5年以内に退職が見込まれる船員は何人いるのか
  • 欠航・減便の主な理由は何か
  • 資格取得や研修にどの程度の費用がかかっているのか
  • 採用活動でどのような課題があるのか
  • 住宅や移住支援が必要なケースはあるのか

こうした実態を把握した上で、事業者任せにするのではなく、公共交通を守るための政策課題として位置付ける必要があります。

まとめ

離島航路は、島民の生活を支える重要な社会インフラです。

これまでは、航路維持のために赤字補填や運営補助が中心となってきました。しかし、船員不足が深刻化する中では、補助金を出しても人がいなければ船は動きません。

これからは、航路維持の支援を「運航費の補助」だけでなく、「人材確保」「資格取得」「移住定住」「若者への職業体験」「職場環境改善」まで広げて考える必要があります。

全国の公共交通支援策を参考にすると、特に有効だと考えられるのは、

  1. 船員資格取得・研修費補助
  2. 採用支度金・移住支援金
  3. 高校生・若者向け乗船体験

です。

行政側の課題として明確に位置付け、事業者の現状を把握しながら、実効性のある対策に着手する段階だと思います。

離島航路を守ることは、島民の暮らしを守ることです。船員不足を「事業者の問題」として片付けるのではなく、地域全体の課題として向き合う必要があります。