五島市の観光と関係人口づくり

R6の五島市観光統計が発表されました。

https://www.city.goto.nagasaki.jp/s054/030/020/010/010/R6toukeisho.pdf

長いPDFファイルを読むのが面倒な方のためのまとめは以下の通りです。(ChatGPT5.0要約)

~ここから~

1. 現状分析

(1) 観光入込客数の動向

  • 総数:200,384人(前年比▲4.6%、令和元年比▲20%)。

  • 減少要因:

    • 令和5年のドラマ効果や旅行割引の反動減。

    • 世界遺産周遊ツアー・海上タクシー利用の減少。

  • 季節別では、冬期・春期・秋期がマイナス、夏期のみ微増(+1.2%)

  • 特に冬・春の落ち込みが顕著(10%近い減少)。

(2) 交通手段別

  • 航空路:全体▲2.6%、特に長崎便が▲9.6%。

  • 航路:全体▲5.5%、長崎港発着便の減少が大きい(▲7.7%)。

  • 福岡便(航空・航路とも)や大型客船は増加傾向。

(3) 観光消費額

  • 総額:約90億円(前年比▲3.6%)。

  • 物価上昇による単価上昇もあるが、入込客減少が総額を押し下げ。

(4) 主要施設・観光地

  • **世界遺産施設(旧五輪教会堂・江上天主堂)**の来訪者が令和元年比で▲55〜65%減。

  • 海水浴場は香珠子・頓泊が増加、高浜は微減。

  • 鐙瀬ビジターセンター、山本二三美術館は大幅増。

(5) 宿泊状況

  • 宿泊客実数:134,575人(▲6.1%)。

  • 平均宿泊数は1.65泊と増加(長期滞在型施設の増加が背景)。

  • 宿泊施設数は増加傾向(128施設)。

(6) 修学旅行

  • 学校数は令和元年比▲43%だが、前年より微増。

  • 体験民泊利用率は70%(元年の80%に近づく)。

(7) インバウンド

  • 外国人宿泊客数・延べ宿泊数ともに過去最高。

  • 特に東アジア(韓国・台湾・香港・中国)が増加、欧州・北米は一部減少傾向。

~AI分析ここまで~

この状況を踏まえて、私からの提言です。

観光振興の位置づけを見直す

かねてから五島市では、基幹産業とされる一次産業の従事者が減少し高齢化する中で、外貨を稼げる産業として観光振興に力を入れてきました。そうした中で旗振り役の五島市は、入込客数や観光消費額と言った「数」を成果指標として掲げていました。

コロナ前はメディア露出の追い風もあり、順調に成果指標も伸びていましたが、市民の暮らしの向上に対して、今一つ底上げ効果が低いのでは、と感じていました。そしてコロナ明けの「1億円を観光客にバラまくキャンペーン」に対して私は反対しましたが、市(及び賛成議員)の主張は

観光は裾野が広く経済波及効果が高い(だから公金を用いる事に合理性がある)

という答弁でした。が、観光で幾ら潤ったとしても、島内の消費が島外に流れてしまっては、所得の向上も期待できません。そこでそもそも、何のために市は税金を用いて観光振興するのか?という点を改めて考える必要があると思います。

人口減少対策よりも人手不足対策

市政では大きな枠組みとして「人口減少対策」を据えていますが、人口は日本全体で減少傾向が止まらない中で、焼け石に水な感じがあります。

自然増をいかに達成するかももちろん大切ですが、離島の中で喫緊の課題として深刻なのは事業所の人手不足対策です。市は良質な雇用の場の確保が大事として、「求職者数に対する正規職員割合」というKPIを設定しており、R6は実績値を達成しています。

一見すると良質な雇用の確保として良いトレンドのように見えますが、裏を返せばどの職場も主力となりうる正社員が不足している状況であるとも言えます。そのため、私は「雇用の場をとにかく増やす」事を優先に掲げ、国や県から多額の交付金が充当される国境離島新法の創業・拡大を推進するという市の方針に対して、違和感を抱いています。議会でその点も指摘していますが、市長が変わっても従来の方針は変更なさそうです。

観光から関係人口づくりへ

上述の通り、現状の市政運営に対しては二つの課題があると考えています。

  1. 観光は推進しているけれど、今ひとつ「市全体に対する良い効果」が実感しづらい
  2. 雇用拡充は推進しているけれど、どの職場も深刻な人手不足に陥って困っている

こうした二つの問題に対して、観光からの関係人口作りにもっと力を入れるべきと思っています。もちろん、現在観光に携わる事業者は、既にそれを実践している方が殆どだと思います。

私もSUPや観光案内ガイドを通じて若い都会から来る観光客の相手にする事が多いのですが、20代後半の「かつての私」を見ているような感じもします。

都会での生活に疲れ、嫌気が差して、のんびり田舎暮らしにシフトしたいな、と思っている若者も少なからずいます。そうした人に対して、私は五島の暮らしの良さをアピールして、「移住に興味があったら何でも相談してください」と積極的に営業活動をしています。

その観点で見ると、若い観光客は「関係人口の卵」であるとも言えます。コロナ前はテレワークを推奨する会社も少なかったですが、コロナを経てリモート仕事がしやすい時代になったと思います。

そうした中で、五島が持つポテンシャルってやはり大きいのではないかと思います。

空港・レンタカー・飲食店・宿泊施設・観光に携わる全ての人が、いわば営業マンとして、観光客を「五島市の関係人口」として深化させる役割を担っていると言えるのではないでしょうか。

市としては、観光の位置づけを「経済的な価値」から「関係人口」にシフトさせる事により、深刻化する人手不足の解消にも繋げていくことが求められているように感じます。

勿体ないと感じるのは、それを促す仕組みが現状の五島市には存在しない事です。市内には、宿での交流を通じて若い移住者を数十名も島に誘致した方もいます。

観光の第一線で活躍される事業者に対して、「五島市の関係人口を増やす営業マン」としてのポジションを担ってもらう事で、関係人口づくりが今以上に促進されるのではないでしょうか。

観光客が増える→関係人口が増える→人手不足の解消に役立つ

という形で、島の経済社会が成り立つような導線・仕組みづくりが必要ではないかと思います。

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