【令和4年3月/五島市議会】施政方針2.五島の恵みを活かし、雇用を生み出す“しま”をつくる

五島市では、議事録が公表されるまでに数か月かかりますので、

3月2日に市長から公表された「施政方針」をご紹介します。

1五島の恵みを活かし、雇用を生み出す“しま”をつくる

【農林水産業の振興】

五島市の基幹産業である農林水産業については、後継者及び新規就業者の確保・育成に努めながら、持続可能な力強い産業として発展できるよう必要な対策を講じてまいります。

農業においては、ドローンによる農薬散布などスマート農業による省力化を推進してまいります。また、人材を呼び込み、定着を図るため、新規就農者育成総合対策事業としてIターン者1名を含む17名に対し、資金面や技術面の支援を行うなど、就農前から就農後のフォローアップまできめ細やかに支援し、担い手の育成と確保に努めます。

有限会社岐宿農研については、昨年3月定例会において、今年度中に解散も含めて協議することをご報告しておりましたが、協議の結果、今年8月末を目途に解散することになりました。

今後、財産処分や貸借農地の解約など、解散に向けた手続きを進めてまいります。

 

肉用牛については、昨年3月の子牛せり市で、平均価格が平成29年5月以来となる80万円台を記録し、今年1月も77万7,000円と高値を維持しております。

10月には、和牛のオリンピックと言われる「全国和牛能力共進会」が鹿児島県で開催されます。全国に五島牛の魅力をPRできるよう、関係機関と一体となって取り組んでまいります。

繁殖雌牛の増頭については、五島市内5,200頭を目指し、畜産クラスター構築事業や優良雌牛の導入に係る支援を行います。

養豚及び養鶏についても餌の移入に係る輸送コスト支援等を行ってまいります。

五島食肉センターについては、現在、施設をHACCP(ハサップ)対応とするための改修工事を行っており、完成後は五島牛及び五島豚の販路拡大が見込まれます。引き続き施設の稼働率向上に向けた取組を進めてまいります。

 

有害鳥獣対策については、猟友会、専門業者等による捕獲に加え、ICT機器の導入などによる捕獲体制の強化を図りながら、農作物等への被害の軽減に努めてまいります。

また、捕獲されたイノシシ・シカについては、埋却個体の減量化や捕獲者の負担軽減のため、ジビエ肉としての利用を推進してまいります。

 

農地基盤整備については、鐙瀬地区が令和4年度をもって完了する予定であり、久賀地区、寺脇地区及び富江・日の出地区については継続して整備を進め、農地の有効利用と農業経営の効率化を推進してまいります。

 

これまで葉たばこの乾燥・出荷等に係る事務を行っていた西九州たばこ耕作組合福江連絡所が、今月末をもって閉所されることになりました。令和4年度から、耕作者により設置される協議会がその事務を行うことになっております。市としては、当該事務機能を維持するため、協議会の設置、運営等に係る経費について支援してまいりたいと考えております。

 

林業については、利用間伐を促進し、輸送コストを支援することにより間伐材の島外出荷量の増加を図ります。

また、カーボンニュートラルの実現に向けた取組として、市内事業所を対象に木質バイオマスに係る説明会を開催するなど、木質バイオマス導入の可能性について検討してまいります。

林道整備については、引き続き林業専用道川原線及び内闇線を延伸します。また、森林環境譲与税を活用して、岐宿町楠原地区で森林所有者に対する経営管理意向調査を、富江町田尾地区及び松尾地区で市が管理する森林の経営管理事業を行います。

令和2年度に松枯れ被害が大きかった岐宿町八朔地区の保安林においては、昨年7月に策定した五島市松林保全計画に基づき広葉樹の植栽を行い、保安林機能の維持と回復に努めながら、三井楽地区及び富江地区の保安林とともに計画的な保全管理を図ってまいります。

 

椿の振興については、椿実の安定生産及び管理しやすい椿林育成のため、椿植栽事業の推進と剪定等による椿実収穫作業の省力化に取り組み、生産者に対する栽培方法等の講習会を実施します。

また、椿油の安定供給や物産フェアへの出店などによる取引業者の拡大に努めるとともに、椿関連事業者との連携を図り、地域資源である椿を活用した「椿の島・五島」をPRしてまいります。

 

水産業においては、燃油や資材の高騰、コロナの影響による魚価の低迷等により依然として厳しい漁業経営が続いておりますが、漁協単位で策定した「浜の活力再生プラン」に基づく漁業収入向上のための取組や漁港施設等の水産関連施設の整備を支援してまいります。

 

漁業の担い手育成・確保については、UIターン者や地元漁家子弟へ就業を促しながら、新規就業を希望する研修生の確保に努めます。令和4年度は県の「次世代を担う漁業後継者育成事業」による新規就業研修生が10名となる見込みであり、そのうち1名はIターン者で、市外からの就業者も継続して参加しております。独立・就業後においても漁具や燃油等の経費を支援し、就業しやすい環境の整備に努めてまいります。

 

離島漁業再生支援交付金については、引き続き磯焼け対策、種苗放流、アオリイカ産卵床設置等のほか、新規就業者の定着を図るため漁船リース等の支援を行い、生産力の向上や漁業集落の活性化を図ってまいります。また、特定有人国境離島漁村支援交付金を活用し、漁業集落における雇用の創出に取り組みます。

磯焼け対策については、「五島市磯焼け対策アクションプラン」に基づく藻場の回復・拡大のさらなる促進に向け、人材育成に努めます。また、令和3年度に設立された五島市ブルーカーボン促進協議会と連携しながら藻場回復活動を他地区へ展開することで、水産資源の確保を図り、生態系を活用した二酸化炭素の削減を目指します。

 

マグロ養殖事業については、県内生産量の3割を占めており、今後も増産が見込まれています。養殖場における漁場の情報化など、引き続きICTやIoT技術を活用したマグロ養殖の振興に努め、マグロ養殖基地化を推進してまいります。

また、市内での養殖マグロの消費拡大を目的とした「マグロフェア」を開催し、市民の皆様や観光客への消費を促し、五島産マグロのブランド構築と販売促進を図ってまいります。

燃油高騰対策については、市独自の助成制度を見直し、国の漁業制度セーフティネット構築事業と併せ、出漁機会の増加と漁業者の経営の安定を図ってまいります。

【物産・ブランドの振興】

大都市圏における五島産品の認知度向上と販路拡大は、五島市の地域振興と経済発展にとって重要であることから、引き続き五島市物産振興協会や離島振興地方創生協会と連携し、物産展や各種イベントの開催につなげます。

五島市物産振興協会は、物流機能を有する地域商社として五島産品の販路拡大に取り組んでおります。令和4年度もこれまでに構築した集荷システムを運用し、輸送費の縮減と安定供給体制の確立を進め、販路拡大を図ります。さらに、複数の店舗を展開するスーパーでの五島フェアの開催や商談会等への参加のほか、バイヤー等の招聘による地元生産者との商談機会の創出により、五島産品の魅力発信と販路拡大に取り組んでまいります。

 

ふるさと納税については、五島市出身の方々や五島市を応援してくださる全国の方々から寄附をいただいており、市の貴重な財源として活用させていただいております。

2月末現在、1万1,479名の皆様から、約2億7,200万円の寄附をいただきました。

さらなる寄附拡大を図るため、昨年10月から、ふるさと納税に係る業務全般を委託し、新商品開発やポータルサイトの魅力化を行っております。

今後も「五島市ならでは」の魅力ある返礼品を揃え、五島市の宣伝・広告に力を入れるとともに、寄附していただいた方の意向に沿えるよう各種事業に活用してまいります。

企業版ふるさと納税については、令和3年度に2社から寄附をいただきました。今後も市の取組に対し多くの支援をいただけるよう情報発信に努めてまいります。

【企業誘致・地場産業の振興】

企業誘致については、五島市の地域特性に応じた企業の誘致につながるよう、引き続き長崎県産業振興財団等の関係機関と情報を共有し、連携を図ってまいります。

地場産業の振興については、有人国境離島法による雇用機会拡充事業を活用した創業・事業拡大を促進し、良質な雇用の確保に努めてまいります。

令和3年度から市内事業者を対象としたキャリアコンサルタントの派遣による人材育成支援、経営分析等を行っており、引き続き経営者のスキル向上や事業所の経営体制の強化に取り組んでまいります。

また、国はバブル崩壊後に卒業を迎えた就職氷河期世代の就労を支援しており、市でも調査を行ったところ36名の支援希望者が判明したことから就労支援を実施しました。現在10名の方が就労されており、残る26名の方も就労につながるよう引き続き支援してまいります。

 

人材不足の解消については、昨年3月に県内初の認定を受けた五島市地域づくり事業協同組合が、組合員企業17社、職員3名で事業を開始しました。現在は組合員企業19社、職員も当初の予定を大きく上回る9名となっており、さらなる支援の強化により人材不足の解消と雇用のミスマッチ解消につなげてまいります。

若者地元定着支援として、ハローワーク五島や五島振興局と共同して高校生を対象とした合同企業説明会や企業訪問バスツアーを実施しております。高校生が市内企業の業務内容や勤務条件などを直接聞くことで、地元企業への理解を深め、新卒者の地元就職につなげること、一旦島を離れてもUターンし、地元企業に就職するとの考えを選択肢に加えてもらうことを目的に毎年開催しており、平成30年度以降、高校卒業者の地元就職率は50パーセント以上となっております。

市内事業者の皆様には、今後とも「若者が安心して働ける職場づくり」にご尽力いただきますようお願いいたします。

【再生可能エネルギー産業・次世代産業の創出】

2030年度に、2013年度と比較して33パーセントの温室効果ガスの削減を目標とする「五島市気候エネルギー行動計画」について、市内の経済団体・市民団体から、さらなる温室効果ガスの削減につながるご提案をいただきました。これを受け、温室効果ガスの削減目標を50パーセント以上に見直します。

また、2050年にゼロカーボンシティを実現できるよう、まずは省エネルギーの重要性を理解していただくため、町内会、事業所、学校及び各団体を訪問して説明会や学習会を開催し、さらに広報誌やケーブルテレビなどを活用して広報啓発活動に取り組んでまいります。

 

浮体式洋上風力発電事業については、再エネ海域利用法に基づく「長崎県五島市沖における協議会」が2月21日に開催され、風車の設置位置、スケジュール等の事業計画について、発電事業者である五島フローティングウィンドファーム合同会社から説明がありました。

今年9月頃から、2,100キロワットの風車8基を促進区域である崎山沖に順次設置し、令和6年1月から運転を開始するとの方針が示されました。また、協議会において意見として出されていた、地域や漁業との協調・共生のための基金については、これまで市議会でご報告したとおり、漁業振興基金の設立及び風車を設置する海域の利用について漁業関係者と合意しており、発電事業者からの寄附金と風車の固定資産税収入の一部を原資として基金を造成し、漁協組合員の漁船保険料や燃料代の一部支援、藻場の再生など、漁業振興につながる事業に活用したいと考えております。

今後も工事が安全に進むよう発電事業者及び漁協等の関係団体と連携を図るとともに、地域経済の活性化及び漁業振興につながるよう取り組んでまいります。

現在、福江港大津地区において、浮体式洋上風力発電機の製造・組立が行われておりますが、崎山沖のウインドファーム事業が完成した後も、浮体建造ヤードを現地に残して事業を継続し、雇用を維持していただきたいと考えております。このため、事業者及び土地所有者である県と協議を進めてまいります。

潮流発電については、現在、環境省の実証事業として奈留瀬戸に設置している発電機を撤去し、同じ場所に大型の発電機を設置して新年度以降も実証を継続する予定となっております。実用化・商用化につながるよう、今後も漁業者及び地域の方々のご理解を得ながら、国、県及び関係機関と連携して支援してまいります。

また、AIやIoTなどの先端技術を活用し、次世代産業の創出や経済の活性化に取り組む市内の再生可能エネルギー関連事業者に対して、国の交付金等を活用しながら引き続き支援してまいります。