感染症法改正案の提出が見送られた背景を解説

ねこ

オミクロン株が流行ってきて、病床の逼迫が心配。。。

なぜ政府は感染症法の改正案を見送ったの?

という方のために、その背景を解説します。

そもそも「感染症法改正案」とは?

現在もオミクロン株の影響で、医療現場の崩壊の危機が迫っていますが、

第5波でも医療逼迫した地域が多発した事が背景にあります。

こうしたことから、厚生労働省では、自治体と医療機関が結ぶ病床確保の協定に法的根拠を与える想定でした。

国や自治体の権限を強化し、病床確保の実効性を高める狙いがあったとされています。

背景1. 法的根拠がなくても対応可能

従来お願いベースで対応してきた病床の確保ですが、これまで通りの枠組みで法的な措置がなくても、対応可能と判断したと考えられます。

現に岸田総理は

年末にお願いした、各都道府県において、病床の確保は順調に進んでおり、今後の鍵となる在宅・宿泊療養に対する地域の医療機関数は、計画を3割上回る体制を準備することができました。

と述べ、

まずは今用意したものをしっかり稼働させることに集中したい

とも述べています。

背景2. 現状の課題が未整理

国や自治体がどれだけ「病床確保せよ」と言ったところで、

  • 病床を増やすと経営的に成り立たない
  • そもそも現場のリソース(医師や看護師)が足りていない

という問題が解決されなければ、実効性がありません。

法律でこれを縛り、罰則を与える事により、かえって医療機関の経営に悪影響が及ぶ可能性もあります。

これは賃上げと同じ構図で、

「経済の好循環のために、賃金を上げてください」

と政府がお願いしても、会社が赤字になってしまっては本末転倒です。

岸田総理は、

中長期的な課題を6月までにしっかり洗い出した上で法改正を考えていく

と述べています。この事からも、行政府側と医療機関側が請け負う責任について、現段階では課題が未整備だと考えられます。

背景3. 治療薬、ワクチンの普及

感染症法の改正を見送る一方で、「医薬品医療機器法(薬機法)改正案」が提出される予定です。

これは、感染症拡大などの緊急時に、ワクチンや治療薬など新たな医薬品を迅速に使えるようにする薬事承認制度です。

これにより、今後の新たな変異株に対する適応力を高める狙いがあると考えられます。

さらに岸田総理は11日の全国知事会で

高齢者を対象とするブースター接種のペースアップを強く要請いたします。どうか、各知事におかれましては、大規模接種会場を含めた接種体制の強化への協力をお願いいたします。

と要請をしています。

治療薬とワクチンを急ピッチで広める事により、医療リソースの逼迫を避ける狙いがあると考えられます。

背景4. 会期を延長したくない

2022年の通常国会では、「出入国管理法」や、「マイナバー法改正」など、与野党で判断が分かれそうな法案も、提出を見送ったとされています。

  • 法案の強行採決により悪いイメージを国民に与えたくない
  • 通常国会の会期が長引くと、参議院選挙の準備に影響が出る

という背景があります。

逆に、参議院選挙に与党が勝利できれば、国政選挙の日程がない3年間の政権を担う事が出来るので、より腰を据えた政権運営が可能となります。

まとめ

今回感染症法改正案の国会提出が見送られた背景としては、

  1. 現状の枠組みで対応可能である事
  2. 法的な課題への対応が未整備である事
  3. ワクチンや治療薬などの普及を優先させたい事
  4. 国会の会期を延長したくない事

と言った要因がありそうです。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

政府の本当の思惑は私には分かりませんが、少なくともどの法案を提出し、見送るかについては、

緊急性、タイミング、必要性、実効性という様々な点を観点を考慮しながら、慎重に判断する必要がありそうです。