五島市まち・ひと・しごと 創生人口ビジョン・総合戦略 (骨子案) について

昨日までは、こちらの「アンケート」に関する分析を行いました。本日は、総合戦略に対する意見をご紹介します。

https://www.city.goto.nagasaki.jp/s007/040/010/080/010/010_0.pdf

人口ビジョンについて

少し長いですが、総合戦略とは何か、という部分の引用です。

五島市まち・ひと・しごと創生総合戦略(以下「総合戦略」という。)は、まち・ひと・しごと創生法(平成 26 年法律第 136 号)第 8 条に基づき、今後5年間の基本目標、基本的方向、具体的な施策をまとめたもの

五島市の持つ強みと地域資源を最大限活用し、良質な雇用の創出、交流人口の拡大、子育て支援とこれらを支えるまちづくりに取り組み、人口ビジョンを踏まえた人口減少対策を推進するものです。

とあります。この「人口減少対策」は、全国の市町村でも同じように、策定が求められています。

そのため、マクロな人口減少が避けられない自治体同士は、

移住者の奪い合い

という構図になっています。九州では、長崎県を筆頭に人口の社会減に歯止めがかからず、福岡の独り勝ち状態となっています。

検証は十分か?

五島市も人口減少対策として施策を講じました。結果として、

2015(平成 27)年度に策定した人口ビジョンでは 25~69 歳のUIターンなどで年間 100 名程度のプラスを見込み、2060(令和 42)年に 2 万人を維持することを目標としていましたが、

高校卒業生の流出や 70 歳代の人口減少などにより、2018(平成 30)年度ベースで目標を 318 人下回る結果となりました。

高校生がいなくなることや、高齢者がいなくなることは、誰でも容易に分かる事ですが、さらに突っ込んだ「検証・分析」が骨子の中から抜け落ちています。

例えば、どうして予想したよりも移住者の数が増えなかったのか?など。

乖離する目標と現実予想

五島市の目標では、

人口減少を抑制し、2060(令和 42)年において 2 万人程度の人口を確保する

としています。一方で、

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、五島市の人口は、2060(令和 42)年で 10,115 人と 2015(平成 27)年の約 27%まで減少すると推計

されています。実に倍以上も予測と目標に差があるというのは衝撃的です。

目標設定の問題点

人口ビジョンで掲げる目標の問題点は以下の通りです。

  • 2015年時点の目標が不達成だった事への詳細な検証・分析がされていない
  • 2020年に立てる人口維持の目標は、国の予測よりも倍近くであり、実現可能性が疑問
  • 2060年時点の目標達成に対する責任の所在が不明のため、意味がない
  • 「UIターン者の定住に関する環境を整備」とあるが、その具体的な戦略が不明確

基本目標について

人口分析の後に、「基本目標」が掲げられています。しかし、「基本目標」は何のための目標なのかが、今一つ分かりません。

仮に、基本目標が「人口減少対策」のための手段であれば、基本目標が人口減少に与える影響についても述べるべきだし、関連付けが必要です。

現行の様式では、第一章で述べられた「人口ビジョン」に対する第二章の「基本目標」との関連性が不十分です。そのため、

「とりあえず、今までやってきたことを、これからも続けます」

という感じにしか見えません。

現在の市政の大きな問題点はここにあり、「今までやってきた方向性から転換が図れない」事だと感じます。

戦略としてのマーケットの視点

冒頭でも紹介しましたが、「まち・ひと・仕事」は全国で同じように策定が求められています。

そのため、人口減少対策と言う点では、競合分析や、他市の事例なんかも注目しながら、

他の市町村とは差別化された方向性

が必要になってきます。

例えば、雇用を核として人口減少対策に挑むのであれば、福岡以上に魅力的な雇用環境でなければ、求職者は集まりません。

ところが、現在の総合戦略案では、そうした「他市との競争」の視点がなく、

「今まで続けてきた事」

をベースに、2階部分を建てようとしている者だから、戦略的とは言えない状況です。

戦略的ではない方針1. 一次産業

その最たる例が、以下の文言。

基幹産業である農林水産業従事者の高齢化による担い手不足の解消に向け、生産・経営基盤を強化し、域外から外貨を稼ぎ、地域経済をけん引する産業としての地位を築きます。

この分野で、「地域経済をけん引する産業としての地位」を築くのであれば、グローバル企業にも負けない設備投資と競争力が必要になります。

果たして財政が弱小な五島市で、それが実現可能なのでしょうか?

それに、今後の企業型経営の農家では、従来のように「雇用者」は不要になります。

作業の工程が機械化され自動化されることで人件費の負担を減らしている訳なので、この分野の産業が成長したとしても、「良質な雇用」はむしろ減っていきます。

勝てない分野での競争で勝とうとしている事も、五島市の政策が間違っている発想の一つです。

戦略的ではない方針2. 軸がバラバラ

さらに戦略についてダメ出しをすると、軸がバラバラであることも挙げられます。例えば以下の文章。

五島市の強みを活かした海洋再生可能エネルギー事業を推進するとともに、ロボットや IoT などの次世代産業の創出に取り組みます。

また、地場産業との連携、関連企業・研究機関などの誘致など、地域経済の活性化に取り組むとともに、多様な働き方や働きやすい環境整備を進め、良質な雇用を創出します。

「アレもこれも」という形で、結局何がしたいのか、軸が定まっていない事が分かります。

戦略とは、取捨選択で、「やるべきこと」と「やるべきでないこと(捨てる部分)」を明確にすることです。

五島市の戦略では、

  • 再エネの普及を頑張る
  • ロボットやIoTなど次世代産業も頑張る
  • 地域経済の活性化も頑張る
  • 研究機関の誘致も頑張る
  • 働き方改革も頑張る

という形で、「二兎を追う者は一兎をも得ず」どころか、

「五兎を同時に」追いかけようとしています。これでは他市との差別化できないため、結局すべてが中途半端に終わりそうです。

戦略的ではない方針3. やる事多すぎ

P19以降の「政策体系」では、各プロジェクトと、それに対するKPIが設定されています。

KPI自体、その数字の達成に何の意味があるのかも良く分かりませんが、五島市はやることが多すぎです。

KPIを設定するならば、それが達成されなかった時の責任や検証も含めて行うべきです。

五島市の場合は、世界遺産登録の推進もそうですが、「やったらやりっぱなし」状態です。

宿泊施設の例で言えば、大切なのはハコモノを建てる事よりも、

いかに継続をして、その施設の価値を高めていくか?

という事です。

ところが五島市は、「家を建てて満足」しているようなものです。

まとめ

骨子を見る限り、五島市の次期総合戦略では、「今までの政策」から大きな変更点はなさそうです。

この路線での問題点は、

  1. 他市との競争における、マーケティングの視点がない事
  2. 人口減少対策の戦略として、軸が定まっていない事
  3. やることが多すぎて、政策の検証・分析ができていない事

です。

さらに根本的に大きな問題としては、政策の方向性の土台が「今までの事業」であるため、「市民アンケートのニーズに十分にこたえていない事」です。

市民アンケートでは、

島の医療・交通を何とかしてくれ

という回答が最大公約数でした。

しかし、これに対しても、五島市として本腰を入れて対策を推進するという気概が感じられません。