昨年の記事の続きです。
https://nakanishidaisuke.com/2018/08/02/suisan/
本日は、五島市に合併して以降の「政治と漁業の歩み」をご紹介します。
合併当初の危機感
農業、漁業、林業と言った第一次産業の衰退は、五島市に合併した15年前から始まっていました。合併当初のH16.12月の菊谷議員の質問では
漁業においては、豊かな資源と漁業者一人一人の懸命なる努力により、種々の問題をはね返し、経営を維持してまいりました。しかしながら、今日、温暖化によるものと思われる自然界の変化に加え、
- 漁獲量の激減
- 魚価の低迷
- 燃油の高騰等
まさに漁業を取り巻く環境は危機的状況にあります。
と紹介されています。私が集落で聞いた話だと、
昔と比べて魚の取れる量が3分の1になり、魚価が半分になれば売上は6分の1になり、燃油の高騰がさらに経費を圧迫した。。。
そうです。
そうした状況を示すデータが、市政要覧にあります。2019年度版の五島市市政要覧によると、
経営の総数を見ると、
- 25年間で3分の1近くに減少
- 15年間で半減
しています。右肩下がりとはこのことです。さらに、漁獲量でみても、
- 海面漁業が減少傾向
- 養殖業は増加傾向
- 全体としては減少傾向
にあることが分かります。
離島漁業再生支援交付金
こうした離島沿岸部の漁業に関する危機的な状況を受け、
水産庁は、H17年度事業に盛り込む予定の「離島漁業集落活動支援事業」を始めました。一言で言えば、国の交付金制度です。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/ritou/
制度の活用に向けて、合併当初の中尾市長は
今後、県の指導も受けながら対応してまいりたいと存じます。私もこの事業に大変期待をして待っております。
と答弁しています。
交付金が出来た訳
交付金は、地元出身の国会議員の方の尽力が大きかったようです。少し長いですが、H17.6月の熊川議員の答弁から抜粋です。
これは、衆議院議員谷川弥一の国会での発言集でございます。私、これを読ませていただきまして、谷川代議士が国会の中で大臣を相手に、あるいは官僚のトップを相手に、もうほとんどが、80%近くが離島の振興について質問しております。
質問をしているというよりは、どちらかというとけんかをしていると。けんかをしながら五島を何とかしてくれということを訴えている文言であります。
特に、一次産業、農林水産業、特に代議士は林業も訴えております。そして、この五島において、職場の確保のために公共事業が大事だということで、公共事業の減ったということも含めて、そんなら国は何とかしろと、離島は大変だよというような訴えをしております。
そういった中で、この中で代議士が今国会でけんかをしている中で、漁業者は農業みたいにいろんな補助金がないじゃないですかということを訴えて、ことしの4月1日に発足したのが先ほどの離島交付金です。
(中略)要するにこの交付金を利用して、離島、これは離島だけですからね、離島の漁業をどんどん活性化しようではないかという制度なんですよ。
交付金額が1戸につき13万6,000円、そして、五島市全体で、これは私が説明を受けた数字ですが、五島市全体で年間2億4,000万円の交付をすると。そして、これは5ヵ年間続けてやりましょうという制度でございます。
ご存知の方も多いかと思いますが、現在の「国境離島新法」(運賃の割引や農産物の移送補助、事業拡充への支援)も、地元の代議士の方の尽力によって実現した法制です。
まとめ
過去15年間をざっくり振り返ると、
- 五島市の漁業は合併当初から、衰退傾向だった
- 地元出身の代議士が奮闘し、国の交付金を活用する道を開いた
- 五島市はそれを最大限に活用し、漁業の再生を図った
という経緯があります。そのため五島市では、熊川議員によると
種苗放流・藻場・干潟の管理・改善等々いろいろあるわけですが、要するに、結果から見ると、漁業のために皆さんが工夫して何かをやれば、そこに交付金を出しますよという制度
にお金が使われました。しかし残念ながら、漁業全体としての衰退傾向に歯止めをかける状況には至っていません。ここで私が思うのは、
もしこうした国の交付金・補助金がなかった場合、
現在とどんな違いがあったのだろうか?
という事です。
五島市では、現在も国からの補助メニューを活用し、移住者数は増えていますが、全体としての人口は減り続けています。
そろそろ抜本的な方策の転換が必要ではないでしょうか。