一次産業=基幹産業?
よく五島では、農業・漁業の一次産業が「基幹産業」であるといわれています。
しかしながら、実際の一次産業は、どんどんと働き手が減っている「衰退産業」です。
それでも「基幹産業」と位置付けているのは、昭和の時点において、農業・漁業が盛んな集落が多く、現在も高齢者を中心に、従事している人が多いからです。
そのため、国・県・市では様々な手法で一次産業の衰退を防ぐべく、対策を講じています。
五島市の制度の中には、
- 独立後、経営が安定するまでの最長5年間支援する補助
- 経営のノウハウを習得させる研修への補助
など、様々な制度が活用できます。
深刻な人手不足
そういった対策を講じても、なお人手不足の問題を抱えています。介護や育児の人手不足と同じような構図です。
一次産業の漁業について、H29年の市議会の答弁では
既に五島市内でも、刺し網でありますとか、あるいは水産加工でありますとか、そういったところに外国人の方を受け入れられてるところも実際あります。
それから、確認してみたところ、(長崎)県内のまき網業者においても、既にもう受け入れを開始をした、あるいはこれから開始する予定
だそうです。
食料のコモディティ化
一次産業の衰退には様々な理由があるかと思いますが、私は食料というものが、生活の中で非常にありふれた存在になってしまったことが原因ではないかと思います。
- 経済のグローバル化
- 大規模な経営をする生産者が安く商品を販売
- 100円ショップでも野菜や魚が手に入る
という流れで、食料自体がありふれた存在となりました。
更には加工食品や冷凍保存といった技術も高まり、「中食」という形態も一般的に広まりました。
こうした食料を巡る環境の変化を受けて、生産者は「ただ生産するだけでは飯が食えない」状態になってしまいました。
大口顧客への販売ルートを確保したり、食自体をブランド化しない限り、継続的な収益を得られないのが現在の一次産業です。
それは電気や水道・ガスと同じように、食料自体が「ありふれた存在」になってしまったからです。
後継者は必要?
そんな環境の変化を受けている一次産業ですが、「後継者の育成」を掲げること自体、何だか変な感じがします。
それはまるで、弓矢が普及した時代に、石器時代に使われていた矢じりに磨きをかけるようなものです。
これからの時代は、(言うまでもなく)マンパワーではなくロボットが製造業・一次産業の分野でも幅を利かせてきます。
短期から中期的に見れば、「データを扱う人」のニーズが高まりますが、長期的に見れば「現場で汗を流す」人手は外国人も含めて必要なくなると考えられます。
そうである以上、市役所が力を入れて取り組むべきなのは、
- 労働者依存の農家・漁業者への補助
ではなく、
- データ活用型経営者への補助や誘致
ではないでしょうか。市役所の方針では、「大型化・集約化」という部分は見えますが、マンパワー型の経営に対する依存度が感じられます。