人間の骨を集めることが、近年ブームになっている。
そこには飛躍的な「人骨解析」技術の向上があり、骨をスキャンするだけで、今まで見ることの出来なかった世界がたちどころに分かるようになった。
例えば、出世時点からの死ぬまでの歩行距離、血液型や食生活、栄養の状態から病気の有無、更には家族構成など。
大量の骨を解析することで、そうした個人がどのような社会を形成していたのかを掴む事が出来るようになった。
「人骨解析」が盛んになった背景は、機械が益々仕事の幅を広げる中で、「人間とは何か?」を研究する人たちが増えてきたからだ。
大学の研究部門も、「人間学部」の創設が増え、心理学・宗教・哲学と言った分野を先行する学生が増えている。
特に研究が盛んなのは、アフリカだ。人類が最初に大地に骨を残した場所だけあり、研究者から見れば宝の山だ。
世界中を見渡せば、アフリカ以外にも古い遺跡の骨が残っている場所は数多く存在する。
ところがそこには、宗教的な理由から、個人の骨を採取し、分析するということに対する抵抗感が大きい。
それならばということで、各国政府はアフリカに研究団を送り、まだ見つかっていない人骨の採取に躍起になっている。この研究競争に乗り遅れるということは、人間研究に遅れをとることを意味する。
植民地支配以降、先進国の関心から取り残されてきたアフリカは、今再び世界から注目を浴びるようになっている。
人間研究の世界的な権威であるリチャード博士は言う。
「有史以来、人類は数々の大量虐殺、破壊行為を繰り返してきました。ただそれは、善悪の問題を超えた、物理現象として説明がつくと考えています。ですので私たちは、そのサンプルを集めています。」
ある新聞記事によると、人間研究は今後10年間で、数十兆円規模の市場になると期待されている。そしてそこには、数多くの不当な勢力も絡んでいる。
例えば有史以来、血統の混血が殆ど見られない部族は、世界でも希少な存在であり、学術的な価値が高い。
そうした部族に対して、人骨のサンプルを得るために、無差別テロを装った破壊行為を斡旋する業者も存在する。
アフリカは、いわば「人間研究」の無法地帯と化しており、非人道的な行為が日常的に繰り返されているのが現実だ。