7月1日、3期12年務めた野口市長のコラムについての紹介と、私の意見の紹介です。
「五島市の健全な財政運営を目指して」というタイトルのコラムがありました。
https://www.city.goto.nagasaki.jp/s014/010/010/090/120/202407/202407.pdf
今までの政策と成果を書いた後、最終部分で市長は
毎年多額のお金がかかる事業は財源をしっかり確保しないと、次の世代・我々の子ども達に大きな負担をかけることになります。
と書かれました。私はこの文章を読んで、市民向けの情報というよりも、次の市長に対する申し送り事項のように感じました。
更に議員の立場で考えると、「お金がかかる事業」とは、散々提案されながらも導入に消極的だった「学校給食費の無償化」だと思いました。
実際、給食費の無償化は議会でも度々取り上げてきたテーマですが、財政上の理由を盾に実施する考えは述べられませんでした。
今回は、市長の述べる「金のかかる事業=給食無償化」だと捉えて話を進めてみたいと思います。(違っていたらごめんなさい)
無償化は子供たちに大きな負担?
市長は6月議会の私の一般質問への答弁で、「給食費の無償化は将来の財政運営に禍根を残す」、というニュアンスの発言をし
毎年1億が50年続けば50億の出費となり、本庁舎1つが立つくらいの金額になる
という感じの答弁でした。そもそも子供の数が減っているのだから毎年同じ金額にはならんやろ、というツッコミはさておき、子育て世帯の生活よりも、市の財政健全化を優先した考えだと思います。
しかし言うまでもなく、給食費の無償化は1億円分の「次の世代・我々の子ども達に大きな負担」の軽減です。
更にオーガニック推進と合わせ、子供たちへのより良い食事の提供だと考えれば、これは子育て世帯や農家への投資であり、単なる無駄な出費という性質でもありません。
あえて前述の文章に批判的に捉えれば、市長が3冠を達成したと自負する日本遺産、世界遺産、ジオパークに関して、その財源はしっかり確保されているのでしょうか?
少なくとも毎年の予算から数千万円規模の予算計上がされている現状を考えれば、こうした維持管理も少なからぬ財政負担になっていると言えます。
しかも世界遺産に関しては、久賀や奈留にお金が落ちていない、という致命的な問題も抱えています。
「健全な財政」と市民サービスのバランス
コラムの中で市長は
3期12年、様々な事業を展開し市勢の発展に努めてまいりましたが、五島市の借金残高は私が市長に就任する前(平成23年度末)の約377億円から30億円減少し、貯金残高は約86億円から76億円増加しました。
この数値だけ見ると、財政自体は好転しているように見えます。
が、注意すべきなのは、借金の返済や貯金に回ったお金は、「市民サービス向上にも使えるお金」でもあったという点です。
言うまでもなく、自治体として借金の返済見込みがなかったり、貯金にある程度の余裕がない事は問題です。
一方で、市民サービスへ使うべきお金を使わない事は本末転倒であり「財政のための財政」になってしまいます。
実際、五島市は実質公債費比率はR3で7.5と県平均よりも高い数値となっており、比率が高いほど借金返済に充てる割合が高く、資金繰りが厳しい状態です。
市役所の財政破綻は当然避けなければいけませんが、それは「市民サービスを支えるための」財政運営でなければ意味がなく、
市役所の庁舎はピカピカでも、市民の生活がボロボロでは、何のための市役所なのか、という事になります。
給食費の無償化で財政は破綻する?
同じくコラムによると
五島市の財政を破綻させないため、やりたくてもやれないことはやらない。安易な約束はしない。そしてその批判は自ら受ける。それが市長の務めだと思っています。
この文言そのものには私も同感です。
が、果たして給食費を無償化する事で財政は破綻してしまうのでしょうか?
少なくとも金額ベースで言えば、雇用拡充支援事業と滞在型観光の促進に約1億の予算を計上している訳ですから、政策判断として無理、という話ではありません。もちろん他にも削れる部分は沢山あると思います。
健全な財政運営とは?
究極的には、「健全な財政運営とは何か?」という問題に帰結すると考えられます。
私の考えでは、
- その方向性で市政運営を続けた場合、財政破綻しない事(=ずっと赤字ではない事)
- 突然の出費に対して、ある程度の財政的な余力がある事
だと思います。
その意味で、財政破綻とは程遠い金額の給食費無償化に難色を示すのは、やはり本気度が足りない、と感じます。
今回市長はコラムで「借金と貯金」というストックに焦点を当てましたが、肝心の市の財政構造については述べませんでした。
それは五島市の致命的な問題である「自主財源比率が低い」という点です。
この数値は20%前後で、就任当初と比較しても大きな変化がありません。
ふるさと納税の向上で僅かには改善されましたが、以前として大きな問題として次の市長に残されています。
この部分に関しては、時代の変化も見据えて実施可能な手段を再度検証し、取り入れていく必要があると感じています。