ベーシックインカムって日本では実現可能なの?
そもそもどういった制度なの?
こうした疑問に答えます。
結論としては、
「政治家が本気を出せば可能」ですが、時期は不明です。
この記事では、「影響力のある政党・政治家」の見解を参考に、ベーシックインカム(以下、BI)の方向性を紹介します。
目次
政党と政治家
自民党(議員連盟)
下村博文選挙対策委員長らが2020年6月に立ち上げた議員連盟(新たな国家ビジョンを考える議員連盟)でBI導入に向けた議論を開始しています。その中間報告(8月27日)によると、BI 導入の前提として、
- 財政支出を社会保障分野に限らず総点検し、
- 重複する行政サービスを洗い出したうえ廃止・縮減、また新たな所得税制等の在り方を検討し、
- BI の水準に応じた必要な財源を確保
した上で、
所得階層別の可処分所得の変化のシミュレーションや資産格差もふまえた公平性の検討も必要である。
と提言されています。
立憲民主党(枝野幸男氏)
2020年5月29日の定例記者会見にて「ベーシックインカムについての考え」に対して
あえて申し上げると、小福祉小負担か高福祉高負担かいう対立概念というのは、20世紀型かなと思っている。ベーシックインカムの基本的な考え方、発想、どんな方でも最低限生きていくための収入、所得は保障されるべきであり、それは政治の役割であるという考え方を否定するものではないが、今求められている、特に当面求められているのは、脆弱化している現物給付、サービスをしっかりと充実した安心したものをいかに量的に安定的に確保するのか、そのことこそが政治の役割だと思っている。
と述べています。ベーシックインカムよりも、現物給付の充実を目指す考えのようです。9月の日曜討論では
枝野代表「落ち込んだ消費を強力に刺激する必要がある。消費税の減免、所得税の減税、加えてやはり給付。ミニマムなベーシックインカムのスタートとして、今回の定額給付金をシステム化して、コンスタントに支払い続ける。所得を底上げして、消費を拡大させる。これを徹底する。」 #日曜討論
— 立憲民主党 (@CDP2017) September 6, 2020
と述べています。
国民民主党(玉木雄一郎氏)
以下、9月25日の動画からのまとめです。
国民民主党は「コロナ下での10万円の現金給付」を早くから主張していました。
コロナ時代は、その発展形として、
給付付き税額控除(税戻し+給付)に昇華できる
としています。具体的には、マイナンバーを口座と連動させて、所得を把握し、控除又は給付が可能になる仕組みです。
国家の役割と未来像
動画では、
何が起こるか分からない中では、突然の変化に備えた「just in case」への備えが必要であり、国家の義務。貯金0でも不安0の社会を目指したい。
と述べています。その上で、ユニバーサルなBIは現実的ではないとして、まずは
新しい職に就くまでの研修期間に対して「求職者ベーシックインカム」を保障したい。
と述べています。それに加えて、BIの効果として
最低限の生活保障をすることにより、想像性を開放する効果もあると思っている。
就労を阻害する訳ではなく、犯罪が減ったり社会的プラスの効果も出るため、世の中が変わると思っている。
と述べています。
日本維新の会
国民民主党と同様に、10万円給付の恒常化を求めています。4月27日の「総理大臣に対する提言」によると、
- 10万円の特別定額を機に、ベーシックインカムを導入し、継続して直接給付を実施する。
- 感染拡大期の生活支援を確実に実行する一方、高額所得者には課税する等により払い戻しを求める。
とあります。
https://o-ishin.jp/news/2020/images/7b072aea6b6a44e369ad117d5695b135f3c9d1b4.pdf
さらに、元代表の橋本徹氏によると、日本維新の会が独自に進めている試算では、
- 月に7万円を給付する場合は100兆円の予算が必要
- 既存の所得控除や社会保障を整理すれば、何とか捻出できるのではないか
と述べています。
れいわ新選組(山本太郎氏)
国民民主党・維新の会と同様に、コロナ対策として「毎月10万円給付」を掲げています。
毎月10万円給付の根拠 >>https://youtu.be/xiM6JLBlk5I
それとは別に、
ベーシックインカム的な要素をもつ政策として、インフレ率2%になるまで、現金給付・期限付き商品券給の給付
も唱えています。
https://note.com/bobby_shibaki/n/n1b24bc51e23a
みんなの党(渡辺喜美氏)
代表の渡辺喜美氏によると、
「みんなの党」が目指すものは1940年体制の転換、そして令和時代を輝ける経済国家にしていく、貧困の撲滅はベーシックインカムで行っていくというアジェンダであります。
https://news.yahoo.co.jp/articles/39b4a4fa0af24f3a14a97b0cb6b6ed10d4d2145f?page=2
ベーシックインカムの今後
全体としては前向き
ベーシックインカムは、コロナで困窮する国民が増える中で、多くの政党・政治家が導入に向けた議論を活発化させています。
全体としてみると、その重要性が高まる事を背景に、議論が進んでいるようです。
ただし、一口にベーシックインカムと言っても、その在り方や進め方については、かなり異なる部分があります。
ハードルは利害調整
日本では既に多くの「社会保障制度」が乱立している状態です。
生活保護や年金や医療など、貰っている人から見ると「なくなっては困る」制度も沢山存在します。
そうした利害関係者に対して、どこまで踏み込んだ改革ができるか、という部分が論点になりそうです。
3つのタイプ
ベーシックインカムのタイプを大まかに整理すると
- 統合型:既存の社会保障制度をBIに一元化
- 融合型:既存の社会保障制度とBIを一部で融合
- 追加型:既存の社会保障制度にBIを追加
となり、すごく大雑把に各政党の色を分類すると
タイプ | 財政負担 | 政党 |
統合型 | 小 | 自民党 |
融合型 | 中 | 国民民主、日本維新の会 |
追加型 | 大 | れいわ新選組、共産党、立憲民主党 |
のように感じます(あくまで主観です)。
より詳しく知りたい方向けに、書籍の紹介です。