米中貿易戦争で岐路に立つ中国の社会

輸出依存度の高い中国経済

中国が経済発展してきたのは、アメリカ・日本を始めとする外資系の資本投下が大きいです。

ですが期待に反して、中国は独裁政権から民主政治には移行せず、太平洋戦争の頃の日本のように「拡張主義」に走ってしまいました。

そうした状況は、アメリカにとっての脅威になります。

トランプ大統領は、中国に対して貿易戦争を仕掛けていますが、これは双方にとって痛みを伴う戦争です。

しかし、社会全体の構造を俯瞰した時、圧倒的に痛手が大きいのは中国です。

なぜなら、中国経済の「貿易依存度」(2016年)は33.3%であり、日本(25.4%)やアメリカ(19.9%)と比べて輸出に占める割合が大きい状態です。

それだけではなく、国内消費の割合は低い状態です。

  • 日本:60%前後
  • アメリカ:70%前後
  • 中国:37%前後

簡単に言うと、輸出がなければ国内の経済がアメリカ以上に致命的な打撃を受ける、ということです。

その辺りの詳しいことはこちらの本で紹介されています。

今までの中国は、輸出によって得られた黒字を基に、国内の軍備拡張や海外への資金投下を行っている状態です。

そもそも、中国が輸出大国として世界で製品をバラまくことが出来た背景には、都市へ出稼ぎに来ていた低賃金労働者の存在があります。

しかし、インフレ率が上昇する中で人件費が高騰し、海外資本はより人件費の安いタイやベトナムに生産現場を移しつつあります。

そうした中で、習近平さんは出稼ぎ労働者を強制的に地方へ送り返すという強硬政策も行っており、彼らの潜在的な不満は高まる一方です。

溜まる人民の不満

国内の低賃金労働者によって輸出で稼ぐ成長を遂げてきた中国ですが、アメリカから仕掛けられた貿易戦争に端を発し、状況はますます苦しくなっていきます。

具体的には、

  • 出稼ぎ労働者の社会保障が機能していないことに対する不満
  • 独裁的な強権弾圧・監視社会に対する不満
  • 人民解放軍の退役軍人たちによる不満

などが挙げられます。

こうした様々な不満を解消するために、共産党は外へ外へと拡張的な政策を掲げ、膨張していく方針(一対一路)を打ち出しています。

しかしながら、多くの国々が、それは中国を利するだけの制度に過ぎないと認識し始めているため、有効な活路としては機能しなそうです。

国有企業の債務問題

そうした庶民の不満だけでなく、中国国内では、国有企業・地方政府が抱える債務の多さも問題視されています。

国有企業の負債は108兆元(2017年)にも上り、年間のGDP(83兆元)を大きく上回っています。

債務の不履行を強権的に実行すれば、金融機関が泣き寝入りを強いられ、経済が大混乱になることは明白でしょう。

それだけでなく、最近は個人の債務残高の膨張も問題視されています。家計負債の対GDP比は、2007年からの10年間で、18.7%から44.1%まで上がっています。

不動産価格の低迷により、個人が多額の債務を背負わされ、前述の個人消費が更に落ち込みます。

まとめ

中国が貿易戦争で「出口」を塞がれてしまうと、経済が目詰まりを起こし、国内で抱える様々な人民の不満や、経済的な矛盾(債務の不履行)が噴出します。

そうなったとき、中国共産党は「後始末」に多大なコストを強いられるようになります。

具体的には、国内にいる弱者の弾圧や利用です。

そうしたことを大っぴらに実行すると、ますます社会的な不満が溜まるという状況ですので、どうにも救いがなさそうに見えます。