高齢者の島、五島
五島市は、高齢化を迎える日本の中でも最先端を突っ走ってまして、2018年では高齢化率が38%を超えています。
ただ、そんな五島市の中でも高齢化率には濃淡がありますので、まずはその数値をご紹介します(H30.6.30時点)。
- 本庁(旧福江市) 30.69%
- 富江 43.81%
- 玉之浦 56.92%
- 岐宿 42.26%
- 奈留 50.90%
- 崎山 43.64%
- 奥浦 46.43%
- 本山 39.63%
- 大浜 47.80%
- 椛島 65.87%
- 久賀 57.01%
- 全体 38.42%
そんな五島市で問題になっているのが、高齢者の介護費用でして、年々負担額は増えています。
https://nakanishidaisuke.com/2018/07/31/kaigohoken/
厚生労働省では、「地域包括ケアシステム」の構築を目指して、全国に取組みを促しています。
市町村では、 2025年に向けて、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じて、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築していきます。
簡単に言うと、従来のように高齢者の負担を病院や介護に任せるのではなく、住みなれた地域を主体として解決していこう、という方針です。
五島市では、理念として
高齢者が生きがいをもって充実して暮らすことができるまちづくり!
を目指しています。ポイントは「まちづくり」であって、「病院作り」ではないという点です。
地域ミニ・デイサービス
認知症予防や健康増進を目的として、「地域ミニ・デイサービス」が五島では取り組まれています。
その数は何と40箇所近くも存在し、各地区で
- 介護予防体操
- 脳トレ
- 運動レク
- 茶話会
- 調理実習
などが行われています。
その効果として、五島市ではH27~H29までの間で、高齢化率が徐々に増加している一方で、要介護認定の認定率が下がっていると紹介されています。
- H27年:高齢化率35.90% 認定率 23.02%
- H29年:高齢化率37.47% 認定率 20.59%
住みなれた地域でいつまでも?
五島市では、「住みなれた地域にいつまでも」をスローガンに、こうした地域包括ケアシステムの普及を目指しています。
実際、玉之浦地区の事例では、「いつまでも玉之浦に暮らしたい」と希望を持っている高齢者は80%以上であると紹介されました。
確かに、地域の力で健康寿命を延ばすことは、医療費の削減にも繋がり、高齢者にとっても楽しみが増えます。
しかし、元気なうちは良いですが、やがて訪れる「終末期状態」の高齢者を、本当に地域だけで受け入れることは出来るのでしょうか?
私の知り合いにも、100歳ちかくの高齢の方を、施設に入れるか入れないかで家族間で揉めているという話を聞きました。
五島の中では、「親を施設に入れる=軽薄・親不孝」であるといいう見方もまだまだ根強く残っているそうです。
人は誰でも死ぬし、衰える時期は必ずやってきます。
現在の市政が掲げる理念は、60歳~80歳くらいまでの、いわゆる「元気シニア」世代の方にとっては有効な考え方です。
しかし、その先にある「終末期のあり方・支援体制」については、あまり踏み込んでいないように見えます。
死に方と向き合う
五島では、老老介護という言葉に代表されるように、終末期状態の親の介護で苦しんでいる人が多い現実ではないでしょうか。
最近では、自民党内でも安楽死や尊厳死といった、「終末期の制度」について議論が始められたようです。(関連記事)
やはりこれまで、「死」というテーマを政治的に扱うことは、非常に難しかったのだと思います。「死」についての法整備は、
- 高齢者のうば捨て山だ!
- 死を助長する制度だ!
- 生き辛い人が出てくる!
といった反対の声が予想されるからです。しかし今後は、ネットやニュースで「死に向き合う頻度」が高くなることは避けられないので、
「死について、考えざるを得ない状況」
が、以前にも増して増えてくるでしょう。高齢者だけでなく、誰もが向き合うべき問題として。