「人口減少対策」という方便
現在、私が住んでいる五島市を始めとして、全国の田舎は「人口減少対策」に腐心しています。
全体的に人口が減る中で、パイの奪い合いのようなことをしていますが、集客に成功しているのは首都圏のみです。
「Iターン」とか「田舎回帰」とかいう流れも聞こえますが、まだまだメインストリームとはなっておらず、「一部の人たち」の選択に留まっている状態です。
ところで、全国的に行われている「人口減少対策」ですが、これって結局、人間の数が増えれば誰でもよいのでしょうか?
今回は、その点について掘り下げて考えてみたいと思います。
前提1.日本人オンリー
単純に、「人口を増やしたい」のであれば、話は簡単です。ヨーロッパの国々のように国境を開放し、移民を受け入れればよいだけです。
ただ、少なくとも自民党の安倍氏は
「いわゆる移民政策はやらない」
と公言していることからも、この方法は取られない感じです。
どうしてでしょうか?
答えは単純で、
「高齢者が嫌がるから」
です。選挙票の多くが高齢者に偏る現代にあっては、高齢者に嫌われるような方針は嫌われます。
そのため、暗黙の前提として、「人口減少対策(日本人のみ)」という形になってしまいます。
前提2.若者オンリー
例えば財政力の乏しい五島市が、「人口減少対策!」と称して、高齢者を沢山受け入れた場合はどうでしょうか?
この場合は、
「社会福祉の財政負担」
という、市役所にとっては頭の痛い問題が生じてしまいます。本音の部分で言えば、
(財政負担が増える高齢者はちょっとなあ。。。)
という感じです。
極端な話、人口の規模が倍増しても、その全て高齢者だった場合は、市町村自体が財政破綻します。
前提3.働く人オンリー
それでは若い人であれば、誰でも大丈夫なのでしょうか?
同じ観点で言えば、高齢者でなくとも、生活保護受給者など、「財政負担に繋がる人」は、市役所にとっては好ましくない存在です。
例えば、ある市町村の「生活保護窓口」が、他の市町村に比べて超緩い審査基準だったらどうでしょうか?
現代の世の中には、
(働かずに、部屋の中でダラダラ快適に過ごしたい)
というニート気質の人間が少なからずいるので、そんな楽園みたいな市町村があれば、移住者が殺到するでしょう。
ただ、市町村からすれば財政支出に繋がるだけになってしまいます。そのため、高齢者と同様に、「好まざる者」になってしまいます。
当然のことですが、働かない人が増えるよりも、働く人が増えるほうが税収も増えます。
まとめ
一口に「人口減少対策」と言っても、そこには市町村が抱える「本音」の部分があります。要約すると、
税収増に繋がる人材
がほしいのであって、そこには暗黙の()があります。
- 日本国籍の人間
- 高齢者以外の人間
- ニート気質以外の人間
これこそが、財政負担に苦しむ全国の市町村が欲している人材です。
そのあたりの「本音」は出来るだけ包み隠さずに、むしろ積極的に「求める人材」としてPRすべきです。
○○市町村では、××の分野でのスペシャリストを優遇します!
と、いうような形で、優遇政策として
- 家賃が無料
- 子育てが無料
- 光熱費が無料
みたいな制度を設ける方が良いです。ただ、こうすると、
不平等だ!
という地元住民からの批判を受けそうですが、今や市町村は、限られた日本人の奪い合いの競争にさらされています。
そうした地方自治体の生存戦略としては、
税収増に繋がる優秀な人材を獲得する
と言う視点を導入する必要があります。
そのため、「人口減少対策」という建前を止めて、移住政策そのものについても、「好む人材」と「好ましくない人材」の濃淡をつける必要があります。
会社や組織であれば当然の事ですが、市町村も今後は、そのビジョンに照らし合わせて「移住者を選ぶ」時代です。
具体的に言えば、
- 起業家にはインセンティブを与えたり
- 3人以上の家族にはインセンティブを与えたり
する形で、望ましい人材を確保していきます。