令和8年9月五島市議会定例会で、中西大輔議員が取り上げた一般質問・議案質疑の内容を整理します。
単なる質問と答弁の羅列ではなく、「議会で新たに明らかになったこと」「質問・提案を受けて市が前向きに取り組むこと」「市が消極的だったこと・今後も課題として残ること」の3つの視点から整理しています。
※以下は議会での発言を基に整理したもので、正式な議事録ではありません。文字起こし等を基にしているため、表現や数値等に誤りを含む可能性があります。
【一般質問】1.スポーツイベントと交流人口の今後
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 五島市では、トライアスロン大会から市が実行委員会を離脱し、マラニックも休止となったことから、中西議員はスポーツによる交流人口拡大策の今後を質問しました。
- 市の総合戦略では、令和11年度の「スポーツ集客イベント参加者数」を4,071人としています。
- 市長は、この目標値について複数の大会の開催を前提として設定されたものであり、大会数そのものが減少する場合には、計画期間の途中であっても数値目標を変更する必要がある可能性を示しました。
- トライアスロンに代わる新たな大会については、庁内で検討はしたものの、具体的な大会を開催するところまでは決まっていないことも明らかになりました。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 市は、既存のスポーツイベントについては、内容の充実や見直しを行いながら今後も実施する方針です。
- トライアスロンについて、競技団体が今後の大会像を示し、市に具体的な協力を求めた場合には、市として可能な支援を検討する考えが示されました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 交流人口を増やすための新たなスポーツイベントについて、市はボランティア確保、市民負担、費用対効果などを理由に「慎重に検討すべき」との姿勢を示しました。
- トライアスロンに代わる具体的なイベントは決まっておらず、交流人口減少分を別の大会で補う明確な方針は示されませんでした。
- 中西議員からは、競技団体による大会継続を想定し、道路使用許可取得への協力、市有施設の使用、市が保有する大会備品の貸出しについて支援を要望しました。現時点では具体的な回答には至っていません。
【一般質問】2.小中学生の島外遠征費への支援
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 6月議会では、スポーツ活動を行う子どもたちの島外遠征に伴う負担軽減を求める請願が採択されています。
- 市は現在、スポーツ振興補助金、地域クラブ活動への支援、スポーツ・文化活動支援など複数の制度で対応しています。
- 今年度のスポーツ・文化活動支援では、練習試合や合宿などの島外遠征について、小学生1人5,000円、中学生1人7,000円を支援しています。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 物価高騰や部活動の地域展開を踏まえ、既存のスポーツ関係補助予算は今年度拡充されています。
- 市は、現在の補助制度を利用してもらった上で、「何が足りないのか」を検証する考えを示しました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 市は、現在の制度への申請件数がまだ少ないことを理由に、現時点で新たな遠征補助制度を設ける考えは示しませんでした。
- まず既存制度を利用してもらい、不足部分が明らかになった段階で必要性を判断するという姿勢です。
【一般質問】3.通知表とこれからの学習評価
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 通知表の回数や様式については、市教育委員会が一律に決定しているものではなく、学校長の裁量による部分が大きいことが確認されました。
- 全国では通知表そのものを廃止したり、回数や様式を見直したりする学校も出ています。
- 次期学習指導要領を見据え、現在の評価の観点や評価方法についても今後変化することが想定されています。
- 中西議員は「通知表を市が一律に廃止する」という提案ではなく、通知表の意義、教員負担、子どもの成長、保護者への伝わり方を改めて議論する必要性を提案しました。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 学校教育課は、校長会などの場で通知表や学習評価の在り方を協議の話題として取り上げる考えを示しました。
- 「子どもの成長につながる評価とは何か」「保護者にとって分かりやすく役立つフィードバックとは何か」という視点から検討する方針です。
- 次期学習指導要領に向けて、各学校と評価基準や評価方法について研修を進める考えも示されました。
- 教育長も、通知表を学校から家庭への「便り」と位置づけつつ、社会の変化を踏まえ、よりよい形を研究していく考えを示しました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 現時点で、五島市全体として通知表の回数・様式を変更する具体的な方針が決まったわけではありません。
- 最終的には各学校長の裁量となるため、学校ごとに対応が異なる可能性があります。
【一般質問】4.悪臭問題と悪臭防止法の規制地域
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 事業所に関係する悪臭について、市には令和7年度に3件、令和8年度も現時点で1件の市民からの苦情・相談が寄せられていることが明らかになりました。
- 五島市で悪臭防止法の規制地域となっているのは、現在旧福江市の一部のみです。
- それ以外の地域は悪臭防止法による規制地域には指定されておらず、現在、同法に基づいて対応している案件もないとの答弁でした。
- 中西議員は、旧福江市以外でも継続して悪臭への住民の声があることから、長崎県内の他自治体の事例も示し、規制地域の見直しを求めました。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 悪臭の相談が寄せられた場合、市職員が現地を確認し、原因が特定できれば原因者への指導を行っています。
- 必要に応じて保健所などとも連携しながら対応していることが確認されました。
- 市長は一般論として、市民の生活環境や健康を守るため、悪臭対策について市として対応できることは行う必要があるとの認識を示しました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 市は、都市計画上の用途地域などを理由に、現時点では悪臭防止法の規制地域を旧福江市以外へ広げる考えはないと答弁しました。
- 継続的に住民から悪臭への声がある地域についても、新たな法的規制や行政として一歩踏み込んだ具体策は示されませんでした。
- 中西議員は、事業者の自主的な改善だけでは解決していないとして、他自治体の事例や法律の解釈を含め、改めて規制地域指定を検討するよう求めました。
【一般質問】5.クーリングシェルターを「使える制度」に
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 五島市は、市役所や図書館など22の公共施設をクーリングシェルターに指定しています。
- さらに7月23日から、市内18の郵便局もクーリングシェルターとして追加されました。
- 法律上の正式な開放基準となる「熱中症特別警戒アラート」は、制度開始以降全国で一度も発表されておらず、五島市で基準に基づき正式開放された実績も0件でした。
- 一方、市は特別警戒アラートが出ていない場合でも、危険な暑さであれば施設管理者の判断で柔軟に利用できるよう協力を求めています。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 中西議員は、自宅にエアコンがない市民などが日常的に利用できる「涼みどころ」「クールスポット」を増やすよう提案しました。
- 市は、危険な暑さから市民の生命と健康を守るため、クーリングシェルターとして協力できる民間施設等を市ホームページなどで随時募集する考えを示しました。
- 制度上の特別警戒アラートだけに依存せず、平常時から柔軟に利用できる場所を確保する方向性が示されました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 高齢者や車を持たない市民など、クーリングシェルターまで自力で移動できない人への送迎・移動支援について提案しました。
- 市は、車両の確保、職員配置、事故発生時の責任や賠償などを理由に、「現在のところ送迎等の支援は難しい」との考えを示しました。
- 今後は、福祉部門と公共交通部門を含め、特に熱中症リスクが高い市民を「施設につなぐ仕組み」が課題として残ります。
【議案質疑】6.イノシシ対策―巡回と箱わなを連動できるか
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 9月補正では、イノシシ捕獲用箱わな50基に663万6,000円、水田被害防止巡回事業に134万円、合計797万6,000円が計上されました。
- 水田巡回事業では、猟銃を所持したハンターが水田周辺を巡回し、発見したイノシシの捕獲や追い払いを行います。
- 巡回事業のKPIはイノシシ50頭の捕獲とされています。
- 二次離島では、既に奈留島3基、久賀島61基の箱わなが設置されていることも明らかになりました。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 市は当初、巡回事業と箱わな購入は「直接連動した事業ではない」と説明しました。
- しかし中西議員が、巡回で得た出没地点や目撃情報を箱わなの設置・移設に活用すべきと重ねて質疑した結果、巡回で得たイノシシの情報を共有していく方針が示されました。
- 追い払いと捕獲を一体的に運用する余地が生まれました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 現時点では、巡回情報をどのように箱わなの配置や移設判断につなげるのかという具体的な運用ルールまでは示されていません。
- 約800万円を投じる事業であるため、捕獲頭数だけでなく農作物被害額の減少なども含めた効果検証が今後必要です。
【議案質疑】7.「五島締め」で漁業者の所得は本当に増えているのか
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 市は「五島締め」の魚について、輸出時には五島市内の魚市場価格と比較して1.5倍~2.5倍程度の単価が見込めると説明しました。
- 前年度の輸出先は7店舗で、今後10店舗、20店舗と取扱店を増やす方針です。
- 一方、事業目的として掲げる「漁業者の所得向上」について、当初、市は漁業者個人の所得増加額を算定していませんでした。
- 中西議員が成果を所得ベースで示すよう重ねて質疑した結果、市は5年間の販売額約650万円、国内販売と比較した収入増を約220万円とする試算を初めて示しました。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 市は、輸出先店舗と1店舗当たりの取扱量を増加させ、「五島締め」の輸出を継続・拡大する考えです。
- 最終的に漁業者所得の増加につなげるという政策目的を改めて明確にしました。
- 質疑を通じ、単なる「PR」や「輸出量」ではなく、国内販売と比較した収入増という具体的な数字が示されました。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 現時点では、個々の漁業者について「五島締めによって所得が年間いくら増えたのか」という実績値までは把握できていません。
- 今後は販売額・輸出店舗数だけではなく、漁業者所得の増加額そのものを成果指標として検証することが求められます。
【議案質疑】8.観光の安定財源―入島税・宿泊税も検討対象へ
議論の整理(市民に伝えるべき新事実)
- 地域力創造アドバイザー事業では、五島市観光の現状・課題を整理し、外部専門家から今後の観光政策について提言を受ける予定です。
- 既存の観光振興計画に記載された課題だけではなく、外部の視点から新たな施策についても提言を受けることが確認されました。
- 中西議員が「財源確保に向けた制度設計」の中身を質した結果、市は、入島税や宿泊税も観光財源の選択肢として検討対象になるとの認識を示しました。
ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)
- 市は、持続可能な観光地域づくりには安定した財源が必要との認識を示しました。
- 他自治体の事例も参考にしながら、入島税・宿泊税を含め、観光客にも一定の負担を求める新たな観光財源を幅広く検討する方針です。
- 外部専門家には、既存政策の点検だけではなく、新しい取組についても提言を求めます。
ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)
- 入島税や宿泊税について、現時点で導入を決定したものではありません。
- 導入時期、税額、対象者、徴収方法などの具体的な制度設計はこれからであり、現段階では「選択肢として検討する」段階にとどまっています。
まとめ
今回の中西大輔議員の一般質問・議案質疑では、単に行政へ新規事業を求めるだけではなく、既存政策が掲げる「目的」と、実際の事業・数値目標が一致しているのかという点が繰り返し問われました。
特に前進が確認できたのは、通知表の在り方を校長会で議論すること、クーリングシェルター協力施設を増やすこと、イノシシ巡回情報を箱わな対策と共有すること、「五島締め」の所得効果を具体的な金額で示したこと、入島税・宿泊税を観光財源の選択肢として検討することです。
一方で、スポーツ交流人口減少への代替策、悪臭防止法の規制地域拡大、クーリングシェルターへの移動支援、小中学生の島外遠征への追加支援などについては、市は現時点では慎重・消極的な姿勢を示しました。
今後の議会では、今回「検討する」とされた事項が実際の制度や予算、運用変更につながったのかを継続して確認する必要があります。
