令和8年9月五島市議会|草野久幸議員 一般質問まとめ

令和8年9月五島市議会定例会で、草野久幸議員が取り上げた一般質問の内容を整理します。

今回は、離島航路・航空路の運賃低廉化、消防職員をめぐるハラスメント・処分問題、奈留医療センターの入院病床、市職員の高卒者特別推薦枠について議論が行われました。

単なる質問と答弁の羅列ではなく、「議会で新たに明らかになったこと」「質問・提案を受けて市が前向きに取り組むこと」「市が消極的だったこと・今後も課題として残ること」の3つの視点から整理しています。

【ご注意】
以下の内容は、五島市議会における実際の質問・答弁等の音声をもとに、内容を分かりやすくお伝えすることを目的として文字起こし・整理したものです。正式な会議録を全文掲載したものではありません。音声からの文字起こしのため、聞き取りの誤り、誤字・脱字、固有名詞や数値等の記載誤りが含まれる可能性があります。正確な発言内容については、後日公開される五島市議会の正式な会議録をご確認ください。


【一般質問】1.離島航路・航空路の運賃低廉化をどこまで広げるのか

草野議員は、有人国境離島法に基づく航路・航空路の運賃低廉化について、島民だけでなく帰省客や観光客など島外から五島を訪れる人まで対象を広げる必要性を取り上げました。

議論の整理(市民に伝えるべき新事実)

  • 国の令和9年度予算概算要求では、有人国境離島政策関係予算として約95億円が要求され、運賃低廉化について帰省客を「準住民」の対象に加える方向が示されていることが確認されました。
  • 市長は、五島を離れた子どもや孫が帰省しやすくなることについて「大きな成果」と評価しました。
  • 一方、制度の詳細はまだ国から正式に示されておらず、どの範囲の帰省客が対象になるのか、市の負担額がどの程度増えるのかについては、現時点では確定していません。
  • 五島市はこれまでも、運賃低廉化の対象を島民から準住民へ、さらに最終的には航路・航空路を利用するすべての人へ拡大するよう国へ要望してきたと説明しました。
  • 草野議員は、運賃低廉化によって島民が島外へ買い物に出やすくなり、島外消費が増える側面もあると指摘しました。
  • これに対し市長は、島外で買い物や映画鑑賞などができる環境があることで、「五島から転居せず住み続けられる」という効果もあるとの考えを示しました。

ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)

  • 市長は、帰省客への対象拡大を歓迎するとともに、国の予算に確実に反映されるよう引き続き国へ強く働きかける考えを示しました。
  • 対象者の範囲と必要となる財政負担を確認した上で、国や長崎県と協議・交渉していく方針です。
  • 市としても、運賃低廉化を単なる市民の移動支援だけではなく、来訪者増加や島内経済の活性化につながる施策として期待していることが確認されました。

ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)

  • 今回示された対象拡大は帰省客などへの拡大であり、観光客や出張者を含む「すべての利用者」への低廉化が決まったわけではありません。
  • 草野議員は、交流人口拡大や島内経済活性化のため、観光客を含む全利用者まで対象を広げるよう求めました。
  • 対象拡大によって五島市の財政負担も増えることが想定され、市長は国・県との協議を行う考えを示したものの、現時点で具体的な負担軽減策は示されていません。
  • 草野議員は、地方自治体の負担を増やさず、国の負担割合を大幅に引き上げるよう国へ求める必要性も訴えました。

【一般質問】2.消防職員をめぐる暴行事案とハラスメント・処分のあり方

草野議員は、消防職員間で発生した暴行事案について、市が掲げる「ハラスメントを許さない組織づくり」と実際の処分との整合性を問いました。

議論の整理(市民に伝えるべき新事実)

  • 市政報告で明らかにされた消防職員間の事案では、勤務時間外の飲食店における行為について、関係職員が裁判所から罰金10万円の略式命令を受けたことが報告されています。
  • 一方、市内部で行われた措置は、地方公務員法上の懲戒処分ではない「訓告」だったことが確認されました。
  • 草野議員は、市の懲戒処分基準では公共の場所での粗暴な言動等について懲戒処分の標準例が示されていることから、今回の訓告との整合性を問題視しました。
  • 市は、懲戒処分基準はあくまで「標準」であり、行為の態様、周辺の状況、過去の非違行為の有無などを総合的に考慮して処分を決めると説明しました。
  • しかし、今回なぜ訓告となったのか、いつ消防から報告が上がり、いつ審査が行われたのかといった具体的な判断経緯については、個別の人事案件や審査委員会の非公開性を理由に明らかにされませんでした。
  • また、この事案について、市職員全体に対して個別の事実説明は行っていないことも明らかになりました。

ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)

  • 副市長は、パワーハラスメントを含むハラスメント事案が発生した場合には、速やかに報告し、必要な処分が伴う場合には適正に判断する必要があるとの認識を示しました。
  • 今後は所属長や総務課から副市長にも速やかに情報が上がる体制の中で対応していく考えが示されました。
  • 市は、今回の個別事案そのものを全職員に説明してはいないものの、パワーハラスメント防止を含めた職員への周知・啓発は継続していると説明しました。

ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)

  • 草野議員が最も問題視した「なぜ懲戒処分ではなく訓告だったのか」という具体的な判断理由は、最後まで明らかにされませんでした。
  • 処分決定までの時系列や、その後の人事との関係についても、市は個別人事を理由に回答を控えました。
  • 草野議員は、第三者委員会から過去の不祥事について「職員への説明不足」が指摘されたことも踏まえ、重大な事案が発生した場合には、個人情報に配慮しながらも職員へ事実を共有し、再発防止につなげるべきだと求めました。
  • 市からは、今回の事案について改めて全職員に説明するなどの具体的な対応までは示されませんでした。

【一般質問】3.奈留医療センターの入院病床休止はどうなるのか

草野議員は、奈留医療センターの入院病床休止に反対する意見書を五島市議会が全会一致で採択したことを踏まえ、その後の状況と市長の認識を確認しました。

議論の整理(市民に伝えるべき新事実)

  • 五島市議会は7月、奈留医療センターの入院病床休止に反対する意見書を全会一致で採択しました。
  • 市長は、この議会の総意を「極めて重いもの」として受け止めていると答弁しました。
  • 奈留医療センターは、奈留島と前島に暮らす約1,700人の市民にとって、生命・健康・日常生活を支える「地域医療の要」であるとの認識を示しました。
  • 長崎県病院企業団は当初、令和9年4月から入院病床を休止する方針を示していました。
  • しかし、市議会の意見書や地域からの意見、市との協議を受け、企業団は当初方針を改め、「五島市と十分に協議した上で休床について決定する」方針へ変更したことが明らかになりました。

ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)

  • 令和9年4月からの休床が既定路線ではなくなり、五島市との協議を経て判断する形となったことは、大きな前進です。
  • 市長自身も、奈留地区で入院機能が失われることが住民の生活基盤を脅かす問題であると明確に認識しています。
  • 市は今後、長崎県病院企業団との協議の中で、奈留・前島地区の住民の生命と健康を守る観点から対応していく方針です。

ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)

  • 今回の方針変更は「休床の撤回」ではありません。休床するかどうかは、今後の五島市と病院企業団との協議に委ねられています。
  • 人口減少や病院企業団の厳しい経営状況など、休床議論の背景となった構造的な問題は解消していません。
  • 草野議員は、人口が少ない離島だから、経営が厳しいからという理由だけで医療サービスを縮小すれば「島で暮らせなくなる」と指摘しました。
  • 離島医療を維持することは自治体だけではなく国の責任でもあるとして、国に対して財政支援や制度面で強く働きかけるよう求めましたが、新たな具体策までは示されませんでした。

【一般質問】4.市役所の「高卒者特別推薦枠」は復活するのか

最後に草野議員は、市内高校を卒業した若者の地元定着と市役所の人材確保という二つの観点から、過去に実施されていた高卒者特別推薦枠の復活を提案しました。

議論の整理(市民に伝えるべき新事実)

  • 五島市では過去、市内高校の卒業見込み者を対象として、学校長の推薦を受けた生徒が受験できる高卒者の特別推薦枠を設けていました。
  • 市の説明では、この制度は高校卒業後の地元就職者を増やすことを目的として、平成27年度採用試験から実施されていましたが、現在は廃止されています。
  • 令和7年度の市内高校卒業者の就職状況について、市の説明では、就職者41人のうち島内就職者は20人で、島内就職率は約48.8%でした。
  • つまり、就職する高校生のおよそ半数が島外へ出ている状況です。
  • 五島市は第3期総合戦略でも、若い世代の安定した雇用の創出と、高校卒業後の市内就職率向上を掲げています。
  • また今年度から、一定の要件を満たして地元に就職した若者などに5万円を支給する新規就職者支援も開始しています。

ポジティブな方向性(提案を受け、市が今積極的に取り組む事を整理)

  • 草野議員は、市役所自身も職員採用に苦戦している状況を踏まえ、「地元で働きたい高校生を市役所が育て、雇用してはどうか」と特別推薦枠の復活を提案しました。
  • これに対し市長は、地元を愛し、将来にわたって地域に貢献したいという高校生を確保することは「極めて重要」との認識を示しました。
  • その上で、市内高校の新規卒業者で学校長の推薦を受けた人を対象とする特別推薦枠について、「しっかり検討する」「前向きに検討する」と答弁しました。
  • 今回の一般質問の中では、最も具体的に市から前向きな回答が得られたテーマの一つです。

ネガティブな方向性(提案はされたが、市が消極的なテーマ、要望)

  • 現時点では「前向きに検討する」という段階であり、特別推薦枠の復活そのものが決定したわけではありません。
  • 募集人数、対象となる高校、推薦要件、採用試験の内容、実施時期などの制度設計は今後の検討事項です。
  • 今後、実際に令和9年度以降の職員採用試験へ制度が反映されるかを確認する必要があります。

まとめ

今回の草野久幸議員の一般質問では、離島で暮らし続けるために欠かせない「交通」「医療」、行政組織への信頼に関わる「ハラスメント・職員処分」、人口減少対策としての「若者の地元就職」という4つの課題が取り上げられました。

特に前進が確認できたのは、帰省客への運賃低廉化拡大、奈留医療センターの令和9年4月休床方針の見直し、高卒者特別推薦枠を市長が「前向きに検討する」と答弁したことです。

一方、消防職員をめぐる事案では、裁判所から罰金刑を受けた行為に対して市内部では訓告となった具体的な判断理由が明らかにされず、処分の透明性という課題が残りました。

また、運賃低廉化についても観光客を含む全利用者への拡大、奈留医療センターについても入院機能の恒久的な維持が決まったわけではありません。

今後の議会では、「前向きに検討する」「協議する」とされた内容が、実際の制度変更、予算措置、運用改善につながったのかを継続して確認していく必要があります。