AIで地方議会の決算審査はどう変わる?現役市議が考える活用法と課題

AIの進化により、私たち地方議員の仕事の進め方も大きく変化しています。

今回は、2021年から2026年にかけて、AIが普及する前後の決算審査を経験してきた立場から、審査の進め方がどのように変化したのか、また、これからの地方議員はどのようにAIを活用していくべきなのかを紹介します。

主に地方議員の皆さんに向けた情報提供ですが、議会活動に関心のある方にも参考になれば幸いです。

もっとも、執筆時点でもAIの進化は目覚ましく、私自身、最新の機能や使い方には取り残されていると感じることもあります。

PCが使えないと逆効果

多くの地方議会でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、かつては分厚い紙の資料を持ち歩いていた頃と比べると、ずいぶん便利になりました。

しかし、議員自身がPCを十分に使いこなせず、支給されたタブレットだけに依存していると、かえって審査力が低下してしまうのではないかと感じています。

従来は、分厚い資料を丁寧に読み込み、気になる数値や項目には付箋を貼りながら、決算審査に臨むのが一般的でした。

ところが、資料のタブレット化によって、こうした付箋を貼るような作業がしづらくなり、資料を読み込む負担がかえって大きくなった側面があります。

もちろん、タブレットにも付箋やメモに相当する機能はありますが、細かい数字を長時間確認するのはそれなりに疲れますし、ページ数が多い資料では、必要な箇所を行き来するのも大変です。

タブレットは資料を閲覧するには便利ですが、情報を深掘りしたり、複数の資料を比較したり、質問事項を整理したりするには、やはりPCでの作業が必要だと感じています。

一方、最近は音声入力の精度も格段に向上しています。AIに口頭で指示を出しながら資料を分析できるため、将来的にはキーボードすら不要になるのかもしれません。

大切なのは、単に紙の資料をデジタル化することではなく、デジタル化された情報を議員自身がいかに活用できるかという点だと思います。

ひとまず資料をAIに読み込ませてみる

AIを活用して決算審査に臨むにあたっては、まず、公開資料など入力に問題のない情報を、できるだけAIに読み込ませることが出発点になります。

例えば、ChatGPTなどのAIサービスで「決算審査」や「議会活動」といったプロジェクトを作成し、関連する資料をまとめて管理する方法があります。

決算審査では、事前に議員向けのさまざまな資料が提供されます。これらをAIに読み込ませることで、内容の要約や資料間の数値の整合性確認などが容易になります。

AIの分析精度を高めるためには、関連する情報をできるだけ充実させることが重要です。過去の議事録や事業評価の資料なども、有益な情報源になります。

例えば、予算書、決算書、主要施策の成果説明書、過去の議事録などを突き合わせて分析すれば、これまで気付かなかった数値の変化や、政策間の矛盾、事業の成果に関する疑問点が見えてくることがあります。

人間が大量の資料を一つひとつ比較するには膨大な時間がかかりますが、AIを活用すれば、そうした作業を効率化できます。

ただし、注意点もあります。

資料によっては、AIが正しく文字や数値を読み取れず、文字化けや読み取りミスが発生することがあります。特に、画像化されたPDFや複雑な表については注意が必要です。

そのため、AIが正確に資料を読み取れているか確認するとともに、必要に応じて、ExcelやCSVなど分析しやすい形式でのデータ提供を行政側に求めることも重要だと思います。

また、非公開情報や個人情報などの取り扱いには十分注意し、自治体の情報セキュリティに関するルールを遵守する必要があります。

そして、AIの回答が必ずしも正しいとは限らないため、重要な数値や事実関係については、必ず元の資料に立ち返って確認することが欠かせません。

決算審査の重要な役割は、予算が適切に執行され、期待された成果が得られたのかを検証し、最終的に決算の認定・不認定を判断することです。

そのため、予算書と決算書、さらに事業の成果を示すデータをセットでAIに読み込ませ、執行状況や成果を比較分析することが、審査の質を高める一つの方法になると考えています。

認定・不認定の判断基準について

私が所属する五島市議会をはじめ、他の自治体における決算の認定・不認定についても調べてみました。

すると、意外なことに、決算全体の評価というよりも、個別の事業や政策上の問題を理由として、認定・不認定が判断されるケースが多いように感じました。

例えば、佐世保市議会の事例では、2つの事業が不認定の提案理由として挙げられています。

参考:佐世保市議会の決算審査に関する事例

もちろん、個別事業に重大な問題があれば、それを理由に決算全体を不認定とする判断もあり得ます。

しかし、決算審査では、個別の事業だけでなく、予算全体がどのように執行され、どれだけの成果につながったのかを検証することも重要です。

例えば、当初予算と決算額に大きな乖離がある事業や、多額の予算を投入したにもかかわらず成果が乏しい事業などは、重点的に検証すべき対象になります。

AIを活用すれば、こうした事業を膨大な決算資料の中から抽出し、比較・分析することも容易になります。

これまで議員個人の経験や関心に左右されがちだった審査についても、客観的な数値や共通の指標に基づいて、より体系的に進められる可能性があると感じています。

ただし、数字だけでは測れない政策効果や地域固有の事情もあります。

最終的に何を問題と捉え、どのような判断を下すのかは、AIではなく議員自身が担うべき役割です。

まとめ

地方議会ではDXが進み、紙の資料がデジタル化されてきました。

一方で、資料をタブレットで閲覧するだけでは、かえって分析や比較が難しくなるという課題もあります。

しかし、資料がデジタル化されたことで、AIによる分析は格段に容易になりました。

膨大な資料から数値の不整合や事業の課題を見つけ出し、過去の議事録や予算と照らし合わせながら検証できることは、決算審査における大きな変化だと思います。

これからは、議員自身がAIを使いこなせるかどうかによって、審査の効率や質に大きな差が生まれるのではないでしょうか。

また、行政側が分析しやすい形式でデータを公開し、議員がそれをAIで検証できる環境が整えば、自治体間の比較や、共通の指標に基づく客観的な評価も進めやすくなるはずです。

もちろん、AIが議員に代わって政治的な判断を下すわけではありません。

むしろ、AIに任せられる分析作業はAIに任せ、議員は政策の妥当性や住民への影響を考え、判断することに、より多くの時間を使うべきだと考えています。

AIの進化は、地方議員の仕事を奪うものではなく、議員本来の役割に集中するための大きなチャンスなのかもしれません。