地方議員の決算審査、何をチェックする?五島市議が実践した9つの着眼点

令和7年度の五島市議会・総務水道委員会では、2日間にわたり決算審査を行いました。

今回は、私が決算審査において重点的に質疑した内容を、9つの観点から整理して紹介します。

決算審査は、単に予算が適切に使われたかを確認するだけではありません。支出に見合う成果が得られたのか、事業の進め方に問題はなかったのか、今後の予算編成にどう反映すべきかを検証する重要な機会です。

市町村議会議員の皆さんが決算審査に臨む際の、着眼点の一つとして参考にしていただければ幸いです。

1.予算・決算・過年度の数値比較

決算審査の基本は、数字の比較です。

まず、当初予算額と決算額に大きな乖離がある場合には、その原因を確認します。

単に「予定より安く済んだ」「執行額が少なかった」という説明だけでは不十分です。

当初の見積もりが適切だったのか、事業内容の変更があったのか、入札による減額なのか、あるいは計画どおりに事業を実施できなかったのかなど、要因を掘り下げる必要があります。

具体的な確認事例

  • 工事関係の予算額と契約・決算額の乖離
  • パソコンなどの物品調達における見積もりと実績の差
  • 地区ごとの消防・救急出動件数の前年度比較

また、前年度と比較して数値が著しく増減している場合にも、その背景を確認します。

特に今回は予算と決算が1億円近くも開きがある事業もありました。そうした事が起きないような改善も必要です。

数値の変化には、地域の課題や行政サービスの需要の変化が表れていることもあります。

2.大型事業の費用対効果

多額の予算が投じられた改修工事や施設整備については、支出の内容と成果を重点的に確認します。

工事が予定どおり完了したかという点だけでなく、当初の目的が達成されたのか、住民サービスの向上につながったのかという視点が重要です。

ちょっとその点では突っ込みが弱かった面もあると反省しています。

また、施設整備の場合には、完成後の維持管理費や将来の更新費用も考慮する必要があります。

「予算を使ったこと」ではなく、「予算を使って何が改善されたのか」を確認することが大切だと考えています。

3.市民の関心が高いテーマ

新聞やニュース、過去の議会で取り上げられた問題についても、決算審査で経過や対応状況を確認します。

特に、行政運営に関する問題が発生した場合、再発防止策が示されただけで終わっていないか、実際に改善が進んでいるかを確認する必要があります。

今回の審査では、消防関係の問題についても確認しました。

市民の関心が高いテーマほど、行政がどのような対応を行い、その後どう改善されたのかを継続的に検証することが重要です。

4.DX・AI活用の進捗と成果

行政のDXについては、特にAIの利活用状況を重点的に確認しました。

デジタル化やAI導入は、それ自体が目的ではありません。

例えば、システムを導入したことで職員の作業時間がどの程度削減されたのか、業務の正確性が向上したのか、住民サービスが改善されたのかといった成果を確認する必要があります。

また、AIの導入に伴う費用と削減効果の比較も重要です。五島市ではAI導入で4000時間以上もの時間が削減されたとの数値も示されました。

AI活用が本格的に進むと、総合計画や定員管理計画にも波及する可能性が高いです。

五島市においては、まだほそうした市政全体への波及効果については検証されていないとの事でした。

5.長期計画の実現可能性と事業の継続性

自治体には、5年以上にわたるさまざまな長期計画があります。

こうした計画については、策定時の目標と現在の実績を比較し、計画どおりに進んでいるのかを確認します。

今回、対象とした主なテーマは以下のとおりです。

  • 再生可能エネルギーの推進・脱炭素計画
  • 水道事業の管路更新計画
  • 男女共同参画計画

計画が遅れている場合には、その原因が財源不足なのか、人員不足なのか、あるいは計画そのものに無理があるのかを確認します。

社会情勢の変化によって、当初の計画が現実に合わなくなっている可能性もあります。

また、過去に重点的に推進した事業が、その後も継続的に運用されているかという観点も重要です。

例えば、五島市で取り組まれてきた「ドローンアイランドプロジェクト」についても、現在の事業内容や継続状況を確認しました。

事業を始めたことだけでなく、その後どのような成果が残っているのかを検証する必要があります。

6.自主財源の確保とふるさと納税

人口減少が進む自治体にとって、自主財源の確保は重要な課題です。

今回の決算審査では、特にふるさと納税に関して、以下の観点から質疑を行いました。

  • 寄付額の増加に向けた営業・推進体制は十分か
  • 新たな施策について効果検証が行われているか
  • 募集に要する経費の総額と経費率は適切か
  • 仲介業者への手数料や外部委託費を削減する余地はないか
  • 企業版ふるさと納税の実績と今後の推進方針はどうか
  • 既存の関係人口や五島市とつながりのある企業・個人に、どのような働きかけを行っているか

特に重要なのは、寄付額の増加だけを成果としないことです。

仮に寄付額が増加しても、それに伴って経費が大幅に増えてしまえば、自治体に残る財源は期待したほど増えません。

そのため、寄付額だけでなく、経費を差し引いた実質的な収入を重視する必要があります。

また、企業版ふるさと納税についても、単に関係のある企業に寄付をお願いするだけでなく、企業が地域課題への貢献や事業との関連性を実感できる取り組みになっているかが重要だと考えています。

7.防災対策の実効性

防災分野については、新たな情報伝達手段の導入効果と、今後解決すべき課題を確認しました。

新しいシステムや設備を導入したとしても、災害時に実際に機能しなければ意味がありません。

また、避難情報を発信することと、住民が安全に避難できる環境を整えることは別の問題です。

例えば、災害時の指定緊急避難場所の開設方針についても、開設する施設の選定基準や、住民への周知方法などを確認する必要があります。

防災対策については、設備や制度の整備状況だけでなく、実際の災害を想定した運用面での課題を明らかにすることが重要です。

8.行政計画や改革の進捗状況

市役所内部の事業評価において、進捗が見られない分野についても、その原因を確認しました。

特に、行政改革大綱に基づく取り組みについては、計画に掲げた目標がどの程度達成されているかが重要です。

行政改革は、計画を作成するだけでは成果につながりません。

実施できなかった取り組みがある場合には、その理由を明確にするとともに、今後どのように改善していくのかを確認する必要があります。

毎年同じような課題が記載され、改善が進まないままになっていないかという視点も大切です。

9.経費節減と業務効率化

最後に、行政運営における経費節減です。

特に、外部委託している定型的な業務については、自動化や機械化によって経費を削減できる余地がないかを確認しました。

具体的には、水道メーターの検針業務や施設の警備業務などです。

もちろん、外部委託には専門性の確保や職員負担の軽減といったメリットもあります。

そのため、単純に委託費の削減だけを目指すのではなく、直営・委託・機械化などの選択肢を比較し、費用対効果を検証することが重要です。

また、行政の基幹システムについても、特定の事業者に依存する「ベンダーロックイン」によって、システムの維持管理や改修に高額な費用が発生していないかを確認する必要があります。

さらに、経費節減という観点では、ごみ処理も重要です。

1人当たりの焼却ごみの削減(あまり進んでいない)や資源化率の向上が進んでいるのか、それによって処理費用の削減につながっているのかといった点も、継続的に確認すべきテーマです。ここはもっと力を入れるべきと思います。

まとめ:決算審査は翌年度以降の行政運営を改善する機会

今回紹介した9つの観点は、私が令和7年の決算審査で私が重点的に確認した内容です。

自治体によって財政状況や行政課題は異なりますが、予算と決算の比較、事業の費用対効果、長期計画の進捗、経費削減といった視点は、全国の市町村議会でも共通して活用できるものだと思います。

私自身、決算審査で特に重要だと感じるのは、次の3点です。

① 数字の変化から疑問点を見つけること

予算額と決算額の乖離や、前年度からの大きな増減には、必ず何らかの背景があります。その原因を丁寧に確認することが出発点です。

② 事業の実施ではなく、成果を評価すること

予算が計画どおり執行されたとしても、それだけで事業が成功したとは限りません。住民にとってどのような成果があったのかを確認する必要があります。自己評価としては、もっと批判的に検証すべき点もあったと反省しています。

③ 指摘だけで終わらず、次の改善につなげること

決算審査で明らかになった課題を、翌年度以降の予算編成や事業の見直しにどのように反映させるかが重要です。

最近はAIの進化によって、膨大な決算資料の分析や過年度との比較も、以前より容易になってきました。

こうした技術も活用しながら、数字に基づく客観的な検証と、住民の視点に立った政策評価を組み合わせていくことが、これからの地方議員には求められるのではないでしょうか。