五島市の課題
五島市では、総合戦略の策定の材料として、市民アンケートを実施しています。対象は
五島市内在住の満19歳以上の男女2,500人
だそうです。詳細はこちら。
https://www.city.goto.nagasaki.jp/s007/040/010/080/010/010_0.pdf
本日は、心理学部出身の私が、統計的な観点も踏まえて、徹底的に中身の解説をしてみます。
母集団とサンプル数
母集団の人口は 37,022であるのに対して、18歳以下(約4000人)や80歳以上の高齢者(約6000人)を除くと、母集団の数は、27,000人程度だと推定されます。
アンケート調査の際に、上下5%の誤差範囲で調査する際に必要なサンプル数は、1万人に対して370人ですので、今回の場合は999人必要となります。
参考:
今回、アンケートを送付した人数は2500人ですので、全体の約10%くらいとなっています。
ところが、有効回答数は、それに対して728人の29.1%となっています。サンプル数としてはまずまずの妥当性と言えそうです。
五島市は住みやすいのか?
この問いに対しては、
約8割の市民が「住みやすい・どちらかといえば住みやすい」と回答
とあります。しかし注意が必要なのは、「年代によってばらつきがある」という事です。実際、
年代が高くなるにつれて「住みやすい」の割合が増加し、70 歳以上では「住みやすい」と「どちらかといえば住みやすい」の合計は 84.8%となる。
と記載されています。私も集落に訪問して、高齢者のお話を聴いて感じるのは、
それほど多くの市民が住みづらさを訴えていない
という事です。
しかし、それは「住みやすい」というよりは、むしろ「住み慣れている」と表現した方が適格である気がします。
- 近くにコンビニがない
- 車がないと移動はできない
- 台風のときは遠出が出来ない
など、「五島ならではの現実」に対して、年齢を重ねるにつれて、慣れてくる、という部分が大きいと感じます。
逆に、全体の中では、30代の人が他の年代に比べて「どちらかと言えば住みにくい」、「住みにくい」と感じています。
この理由としては、
同年代の人と比べて、都会との比較をする機会が多い
という部分が背景にある気がします。実際、五島出身の30代の殆どの人は、島外で生活をしています。
外の世界を知らなければ、現状に対する生きづらさ、疑問や批判は生まれません。
他人の芝生は青く見えると言いますが、五島の人の中でも
「五島には何もない」
とおっしゃる方が多いです。確かに都会と比べれば、仕事や娯楽など、ないものも多いです。そうした「都会との比較」において、住みづらさを感じる年代が多いのが30代だと言えそうです。
これからも住みやすいのか?
住みやすさでは、高齢者の満足度が比較的高く、若年層では低い、という結果でした。
そうした結果もあり、人口分布もいびつな形になっています。
今後は人口減少と、行政サービスの統廃合・縮小が避けられないので、「従来通りのサービス」を維持するのが困難になり、高齢者層の「島離れ」に拍車がかかると考えられます。
今でさえ、五島市の中の旧5町は、疲弊が著しく、「町の半分以上の人が施設入居者」となっている集落もあります。
(続く)