五島市議会議員として、また現場に立つ観光ガイドとして、佐世保市の「黒島」を視察してまいりました。 今回の訪問の目的は、私の住む五島市の「久賀島(ひさかじま)」との比較研究です。
同じ長崎県にあり、同じ年に世界遺産となった二つの島。 実際に歩いてみて、まるで双子の兄弟のような共通点と、これからの観光振興における大きな「差」を肌で感じました。本日はその気づきをレポートします。
共通する歴史と現在
黒島に降り立った瞬間、不思議な既視感を覚えました。 五島市の久賀島と同じく、かつて外界から隔絶されたこの地には、他地区からの移住者によってカトリックのコミュニティが形成されました。明治の世になるまで、表面上は仏教徒を装いながら信仰を守り抜いた「潜伏」の歴史。そのルーツは驚くほど似通っています。
現在に目を向けても、共通点は多岐にわたります。 共に人口は300人未満、高齢化が進む小さな島です。2018年に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産に登録され、信徒の方々が懸命に教会を守り続けている姿、そして本土からの定期船が就航している点も同じです。
決定的な「歴史」の違い
しかし、歴史のページをめくると決定的な違いが浮かび上がります。 久賀島では明治元年に「牢屋の窄(さこ)殉教事件」という、わずか6畳の牢に200名が押し込められる過酷な弾圧が起きました。
一方、黒島ではそのような大規模で悲劇的な弾圧は明治以降に発生しませんでした。 ガイドとして歴史を語る際、久賀島にはどうしても「鎮魂」の祈りが中心にありますが、黒島にはどこか穏やかな空気が流れているように感じたのは、そうした歴史背景の違いがあるのかもしれません。
学ぶべき「体験型観光」の充実
今回の視察で最も危機感を持ち、かつ参考にすべきだと感じたのは「観光のあり方」です。 黒島は、体験型コンテンツ(コト消費)が非常に充実しています。
「黒島観光協会」のサイトを見ると一目瞭然ですが、電動自転車での島内周遊、特産の「島豆腐」づくり体験、そして何より地元の食材を使った「島めし」の提供など、観光客が「滞在を楽しむ」ための仕組みが整っています。
https://kuroshimakanko.com/index.php/category/enjoy
久賀島も素晴らしい景観と歴史を持っていますが、見学が中心になりがちで、食事や体験といった「お金を落とし、思い出を作る場所」の整備では黒島に一日の長があると感じました。
同じ課題(人口減少・維持管理)を抱える遺産の島として、黒島の取り組みは五島市にとっても生きた教科書です。 歴史の重みを伝える久賀島と、体験の楽しさを備えた黒島。 互いの強みを学び合いながら、長崎の宝を次世代へどう繋いでいくか、議員活動を通じてしっかりと提言していきたいと思います。
