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地方自治体の環境政策
長崎県五島市議の中西大輔です。
皆さんの自治体の環境政策は、どうでしょうか?
私は地方議員として、もう少し環境政策に力を入れるべきと考えています。
特に五島市は、全国に先駆けてゼロカーボンシティ宣言をし、洋上風車の見学は全国から視察が絶えない状況です。
再エネ先進地、という感じで見られていますが、実際に住んでいる感覚からすると、そこまで環境対策に熱心ではないように感じています。
例えばゴミ処理の在り方については、1人当たり平均1052gのゴミを出しており、プラスチックも生ごみも全部燃やしています。
一時期は「燃やさないゴミ処理の在り方」が検討されましたが、結局は燃やし続ける方向性で、現在に至っています。
こうした中、地方議員の私としては、もう少し市民のゴミを減らし、環境対策を強化すべきだと感じています。
そこで本日は、どのように訴えれば、自治体の環境政策が前進するのか、その方法論を探っていきます。
環境政策としての生ごみの堆肥化
今回検討するテーマは、「生ごみの堆肥化」です。
例えば私が今回視察した鹿児島県日置市では、生ごみ堆肥化を行い、それを地域内に還元しています。
https://www.city.hioki.kagoshima.jp/documents/447/8482.pdf
この事例を五島市においても横展開出来ないか、その可能性を探ってみます。
生ごみ堆肥化のハードル
なぜ五島市で生ごみ堆肥化が進まないのか、議会での議論も踏まえて紹介します。
①ゼロカーボン推進で見ると僅かな率
燃やすごみはCO2を発生するので、ゼロカーボンシティの推進に逆行します。
しかし、Co2全体の排出から見ると、燃やすごみに代表される一般廃棄物の占める割合は2%程度と推計されています。
市長答弁でも、
2020年の五島市の排出量を計算させていただいております。全体で、CO2、24万5,000トン排出をしているということでございまして、その中の一般廃棄物は4,000トンということになっております。率としては1.6%ということで、低くはあるんですが、ただ、2050年に向けて、国として、カーボンニュートラル、そして、我々もゼロカーボンということを掲げておりますので、いろんな技術開発とか、そういったことがこれから進められてくることになるんだろうというふうに思っておりまして、そういった中で、どういったものが活用できるかということについては、注視をしていきたいというふうに思っております。
とされています。そのため、ゼロカーボン実現という枠組みで見た時、生ごみを含む分別は、「技術開発を待つ」スタンスで優先順位が低くなってしまいがちです。
②費用面のハードル
議会答弁では、費用面でのハードルがあるという答弁がされる一方で、幾らの金額がかかるのか、具体的な試算はされていないという事でした。
➂手間がかかる
生ごみを分別する場合、新たな保管場所を確保し、市分ける手間が増えます。
そのため、推進するためには市民の理解が欠かせないと言えるでしょう。
④既に別事業で補助している
五島市では既に、生ごみ処理機の購入補助を行っています。
しかしながら、直近3年間の数字では、年間の利用申請は13~18件に留まっているようです。
五島市が取り組みづらい理由まとめ
五島市においては、
- 既に別の事業で補助しているし
- ゼロカーボンシティ推進への影響も少ないし
- 市が新たに生ごみ処理施設を建設すれば億単位の費用と回収費用が必要となるし
- 市民の協力も得られるか分からないし
という事で、中々重い腰が上がらないのだと考えられます。これは他の自治体でも同じ状況ではないでしょうか。
生ごみ堆肥化の費用は?
生ごみの堆肥化を考えるにあたり、「誰が生ごみのリサイクルを行うか?」という点が分岐点となります。
ここでは、市民が行う場合を自家処理、行政が行う場合を一括処理として、検討してみます。
自家処理を推進する自治体
事例としては、
- 長野県須坂市
- 長野県上田市
- 東京都多摩市
が挙げられます。例えば須坂市では、家の畑でコンポストにする、家庭用生ごみ処理機を使うなどして減らす事により、老朽化した清掃センターの負担を減らす狙いがあるそうです。この場合は、各家庭に対する補助で生ごみ処理を進める方針です。
参考
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/226d5494799c21e1d5d05653adbbac3e387bf301
一括処理を推進する自治体
一括処理を推進する自治体としては、前述の鹿児島県の日置市が挙げられます。日置市では、
- 生ごみ回収ボックス設置
- 生ごみ収集
- 生ごみ処理装置で堆肥化
を行政が行う事により、生ごみの量は着実に減っています。
ただ、一括回収で回収に回る車両が排出するCO2の量と、それを支える行政コストに関しては、別途検証が必要かもしれません。
どちらの方法を実装するかにより、必要となる費用額は変わってきます。
ゴミの資源化×地域づくり
以上、行政が行う場合と市民が行う場合の費用項目を紹介しました。
次に、第三の選択肢として、行政と世帯の中間にある、「地域・集落」という単位で考えてみるのはどうでしょうか?
例えば、各集落には、必ず一つや二つは使われていない倉庫や遊休資産があります。
それらを活用して、地域内の住民が集まれる場所として、生ごみ処理の機能を実装させます。
そして歩いて行ける距離に、住民が自ら生ごみを持ち寄り、処理を行って堆肥を製造する。
こうしたリサイクルを通じ、地域間の人とのつながりが促進され、外出機械の増加にも繋がるのではないでしょうか。
メリット
- 地域住民の外出機会・交流機会が増え、高齢者の見守り促進や地域の活力が向上する
- 行政の費用負担を減らす事が出来る
- 焼却ゴミの削減に繋がる
デメリット
- 町内会や地域代表者の負担が増える
- ルールや運用を巡り、地域内でのいざこざの火種となる
まとめ
自治体の環境行政、特にゴミ処理を考えるにあたり、人口密度と分布、使われていない資源、地域性といった点を考慮する必要がありそうです。
大きく言えば、大都市になればなるほど、一括処理方式の方が経済合理性が高そうです。
一方で、五島市のように二次離島を含めて集落が広くまばらに点在している自治体では、生ごみは自家消費の方が経済的かもしれません。
とはいえ、全ての家庭に生ごみ処理装置を導入する事は、費用面から見ても、実際の普及率から考えても、波及効果が低い現状です。
ここに、「地域活力の再生」という新たな視点を加える事により、別の政策が提案出来ないでしょうか。
- 自治体の財政負担・維持管理費が少ない事
- 市民の理解と参画が促せる事
- 取り組みを通じて、副次的な効果が得られる事
等がポイントになりそうですが、何が正解かは分かりません。
市民の方との議論や事業者からのアイデアも頂きながら、次の一般質問の検討もしていきたいと思います。
参考書籍