【五島市市民アンケート】五島の課題を解説2.住み続けたい理由

五島市アンケートの分析の続きです。早速質問から

これからも住み続けたいですか?

この質問に対しては

約8割の市民が「住み続けたい」と回答

とあります。こちらも年代別に見えると、

 「住み続けたい」は高年代ほど高まる傾向がみられた。

とあります。下図にもある通り、母数の数も高齢になるほど多くなっているので、全体の傾向として、高齢者の声が大きく反映されています。10代・20代・30代の割合は、全体の10%以下です。

前回との比較では、

「住み続けたい」は前回調査に比べ 5.5 ポイント増加し
た。

とありますが、これは

五島市の魅力が上がった

というよりも、むしろ

市民の高齢化が進み、地域を離れずらくなった

からだと読み取れます。次に、地域を離れる理由についてです。

五島市から移りたいと思う理由は?

この問いに対する結果として、

全体では「保健・医療に関するサービスや施設が不十分」が 36.3%で最も多く、「道路事情や交通の便が悪い」が 26.5%で続いている。

とあり、これまた社会の高齢化と不可分な回答結果です。高齢になると、車が怖いので公共交通に頼る部分が多くなり、病院のお世話になる頻度も高まります。

医療・交通の課題は、高齢者にとっての死活問題です。上位の理由に対するポイント率が、5年前よりも微増している原因は、これも高齢化に起因するものだと考えられます。

しかし、上記の結果と合わせると、高齢者は

「たとえ島が嫌でも、島を離れる腰が上がらない」

という現実的な事情があります。

子育て世代が島を離れる

一方で注目なのは、子育て世代の不満の上昇です。(青が今回、赤が4年前)

子育て世代の不満が、前回よりも顕著に高まっているのが分かります。

全体の率としては10%と低いですが、そもそもサンプルの半分以上が、子育てには直接関係のない高齢者です。

その分を除いて考えると、子育て世代の教育・文化施設に対するニーズは大きい事が伺えます。

五島市では離島留学や島留学制度など、島外から積極的に子供を受け入れる政策を推進していますが、現在の教育・福祉サービスの質を向上することが、「島の子育て世代」の島離れを防ぐ効果が高そうです。

人手不足と島離れ

一方で、調査の分析では、

前回調査で 4 番目に多かった「市内に適当な職場がない」が今回調査では 10.7 ポイント低下し 8 番目となった。

とあります。行政担当者からすると、

国境離島新法の成果で、雇用不足が解消した!

となりそうですが、原因はそれだけではなく、実体としては

高齢化に伴う人手不足が深刻化し、且つ事業所が増えた

事が原因です。今はどこでも働くことが出来るので、求職者にとっては売り手市場ですが、事業者にとっては人手不足で苦しい状況が続いています。

個別の事情が沢山

島を離れたり、島に来たりする理由は人それぞれです。

交通や医療と言うのは表面的な課題に過ぎず、実際は家庭の事情、人間関係、仕事の給与、職場の軋轢、生活環境、など、様々な要素があります。

私も島で2年半生活して、色々な移住者に会い、色々な「島を去る人」に会いました。

その理由は様々で、上記のように、「交通が不便だから」なんて一口で片付くものではありません。

実際、「その他」や「不明」を選択した人の率は3割もいます。

移住政策を推進する行政としては、こうした個別で複雑なニーズに対するケア・相談をするような窓口を設置して、

徹底的に移住生活の支援をサポートする

と言うスタンスが大事ではないでしょうか。

良い人間関係が大事

島に移住した立場の私の意見からすると、島生活で大事なのは、「良い人間関係」です。

良い人間関係を沢山持っていれば、コンビニがなくても不便でも、島生活は楽しいです。

例えば、病院に行く手段を持っていなくても、頼れる人がいれば、買物や送り迎えを助けてもらえます。

逆に、高齢になって社会との接点を失い、孤立化してしまうと、どれだけ医療や交通のサービスが充実していたとしても、島暮らしの質は低下します。

薬物と同じですが、外から「何かを与えられる事」での満足度は、一過性のもので長続きしません。

その意味では、行政がサービスとして提供すべきなのは、従来のような「施設やハコモノ」ではなく、

市民同士が良い人間関係を構築する場所を増やしたり、仕組みをデザインする事です。

(続く)