第5次エネルギー基本計画
第5次エネルギー基本計画を扱ったこの本では、
- 世界の潮流が大きく変化しているにも関わらず
- 第四次計画と大きな変化が見られない、消極的な内容
であると批判しています。世界の潮流変化とは、パリ協定に基づく世界の脱炭素化&再生可能エネルギーの普及です。
本日は、その細かい内容はともかくとして、エネルギー計画の立て方として、望ましい方法論を考えてみます。
電車に乗り遅れないように
エネルギー政策を巡り、再生可能エネルギーの導入目標が20%台に過ぎない日本は、たびたび「周回遅れ」であると指摘されています。
そのため、紹介した本の筆者も、
省エネ&再エネ比率を高めることが大事
と述べています。しかしながら、考え方として
「世界の潮流に乗り遅れないこと」
が、本当に大事なのでしょうか?例えば受験生が、隣のクラスの人を見て、
やばい、1年間勉強が遅れている、急いで勉強しなきゃ・・・
という感覚です。日本が再エネ分野で出遅れていることは事実です。しかし私は逆に、
出遅れたレースに参加することに意味があるのか?
と思います。
原子力や火力発電のように、世界の技術的潮流をリードできる立場にないならば、いっそのこと別の路線での生き方を模索することが賢明です。
上記の例でいえば、
受験勉強は止めて、実用的なスキル取得に時間を割く
というスタンスです。その上で、エネルギー政策を考えるポイントは、「国としての方向性」ではないでしょうか。
省力型社会か放漫型社会か
エネルギー問題とは要するに、
どうやって国全体で必要な電気を調達し、供給するか?
ということです。
その上では、人口動態を基にしたエネルギー需要予測が必要不可欠です。現在問題となっている九州電力の太陽光のように、過剰に生産しても意味がないどころか、逆効果です。
そのため、エネルギー計画の考え方はまず、「電源構成」比率ではなく、「需要予測」です。その需要予測のために、
- バンバンエネルギーを使う放漫型の社会を目指すのか
- 極力無駄なエネルギーを使わない省力型の社会を目指すのか
という社会的な合意形成が第一歩です。
エネルギー政策は「国の力」
その次に、需要と供給を最適化させるためには、「国の方針」を強く打ち出す必要があります。
そうでない場合、需要家からの要請に応じる形で、過剰な設備を抱える状態になってしまうからです。
逆に、戦時中のように「統制経済」が敷かれた場合、発電量を国が調整することが出来るので、エネルギー問題はハンドリングがしやすくなります。
現状のエネルギー政策を巡る問題は、
構成比率だけに目を奪われて、国としてのエネルギー供給量の方向性がよくわからないこと
にあるといえます。
エネルギー問題の方向性が示せていないというのは、裏を返せば「国としての方向性を示せていない」というのと同じです。
そのため、苦し紛れに他国の電源構成比率だけに目を向けていては、再エネの過剰設備(=負の遺産)を残すだけになる恐れがあります。