アメリカ主導のシリア攻撃
4月13日、イギリス・フランスとの共同作戦により、アメリカがシリアをミサイル攻撃したと発表されました。
今回は、池上彰先生の解説(56分~)を基にしながら、その背景を紹介します。
https://www.youtube.com/watch?v=moaZ1U3dH1A
中東を巡る経緯に関しては、こちらの記事が参考になります。
今回は出来るだけシンプルに、中東に対するアメリカの今後の動きを、「America First」で考えてみます。
シリアへの介入
「アメリカへのエネルギー供給」という側面だけで見れば、
- シェール革命以前:中東を出来るだけ安定化させたい
- シェール革命以降:そこまで安定しなくても良い
という形だと考えられます。
それに加え、オバマ政権とトランプ政権では「中東に対する対応」も大きく変わっています。
- オバマ大統領:化学兵器の使用は断固認めない姿勢だったが、軍事行動はしなかった。(2013年)
- トランプ大統領:↑この対応を批判(腰抜け野郎が!)。基本的にはシリア問題には不介入の方針。
そこで今回、弱腰批判の対象となった「化学兵器」が出てきたわけです。
自身が痛烈に批判していた訳ですから、軍事行動をしないと体裁を保てなかったという側面もあります。
ただ、事前にTwitterで「ロシアを攻撃するかも」と匂わせていたことからも、攻撃の目的は「強硬姿勢」を演じることだったのかもしれません。
トランプ政策の建前と本音
アメリカでは2018年の中間選挙が大きなイベントです。
トランプ大統領は自身が「弱腰外交」への批判をしていたこともあり、国民に向けた建前としては
強くて偉大なアメリカの大統領
を演出したいと思っています。しかし一方で、大統領選挙を巡るロシアの関与が疑われていることもあり、
ロシアに対して弱腰なんじゃないの?
と国民から不信の念を抱かれています。今回の攻撃は、
俺はやるときはやるんだぞ!
という強気な大統領を演出する一方で、
(でも本当はロシアとの関係を悪くしたくない)
という本音があったのではないでしょうか。
それがTwitterでの忖度発言(≒逃避勧告)に反映されている感じです。実際、今回の攻撃の後、Twitterでもトランプさんは
「終わったぜ!」
的な発言をしています。
つまり、今回の攻撃は1回きりの、選挙対策パフォーマンスであり、投資家も実体経済に与える影響が限定的だと判断した感じです(参考記事)。
(強い)アメリカファースト
シェール革命後のエネルギー事情も含めて考えると、
中東が政情不安でも、アメリカは困らないヨ
という状況になりつつあります。
つまり、「中東情勢」が「アメリカ経済」に与える影響度が低くなり、中東に対する関心は薄れつつあります。
にもかかわらず、今回の攻撃が行われた背景には、
(強いアメリカのイメージを植え付け、支持率を持ち直したい)
という想いがあったのではないでしょうか。
アメリカの軍事攻撃は今後も増える?
アメリカの軍事行動は、ひとまず中間選挙までは増える見込みはないと考えられます。その理由は、今回の攻撃が
「化学兵器の使用を認めない」という「強いアメリカのイメージ」を保つために行われた行動であり、トランプ大統領もロシアとの軍事的な衝突を避けたいという思惑(Twitter発言)があるからです。
それに加え、軍事衝突が火種となって戦争が始まることは、「アメリカファースト」を標榜するアメリカ社会にとってもマイナスに働くと考えられます(軍事支出の増加と人口の減少)。
ただ、なぜ化学兵器の使用に関する確定的な情報がないまま、アメリカが「見切り発車」したのか?と言う点は引き続き疑問ですので、今後の動きに注目ですね。