特別交付税の要望活動〜総務省の幹部に直談判〜

2026年1月14日、五島市として「特別交付税」に関する要望活動のため、総務省および国会議員事務所を訪問しました。この記事では、全国の自治体議員・市町村職員の方にも参考になるよう、特別交付税の制度的な位置づけや、要望活動の実務上のポイント(準備物・伝え方・留意点)を補いながら整理します。

特別交付税とは?

特別交付税は、地方交付税(国税の一定割合を原資とする「地方の固有財源」と位置づけられる財源)のうち、普通交付税で十分に捕捉できない「特別の財政需要」等に対応するために交付される枠です。地方交付税総額のうち、特別交付税は概ね6%とされています。

普通交付税が「算定式(基準財政需要額と基準財政収入額)」に基づく客観配分であるのに対し、特別交付税は、次のような要素を踏まえて配分されます。

  • 普通交付税で捕捉されなかった特別の財政需要(例:災害、離島・へき地特有のコスト、突発的事案 等)
  • 基準財政収入額に過大算入がある場合の調整
  • 災害等に伴う特別需要 など

また配分時期は、一般に12月・3月に配分額が決定されることが多く、国の資料でもその整理が示されています。

五島市からの要望活動

今回の訪問メンバーは以下のとおりです。

  • 市長、議長
  • 総務水道委員長、副委員長
  • 市職員(議会事務局+財政課)

移動は「五島 → 福岡 → 羽田 → 総務省」。離島自治体にとって、要望活動は移動時間・費用・調整コストが一定発生する点も、実務上の論点だと改めて感じました。

現地では、東京事務所職員の方、県議会議員(清川久義議員)、国会議員(金子容三議員)にも合流いただきました。

要望活動のお相手

総務省では、次の関係者の方々に対して要望を行いました(全体で約50分)。

  • 自治財政局長
  • 大臣官房審議官
  • 自治財政局 財政課長
  • 自治財政局 交付税課長
  • 自治財政局 地方税課長

主な説明内容(要旨)は次のとおりです。

  • 五島市の概要(離島が多い地理的条件・行政コスト構造)
  • 再エネ(浮体式洋上風力の説明)
  • 多額の維持費がかかる事業(モバイルクリニック、全天候型こどもの遊び場、公共施設の解体費 等)
  • 国境離島新法等の後押しで社会増の年もある一方、近年の出生数は著しく減少していること

ここで全国の自治体向けに補足すると、特別交付税は「要望の熱量」だけで決まるものではなく、特別需要の“根拠資料(客観性)”と“他団体との整合”が重要になります。制度上も、特別需要・過大算入等の事情を踏まえて決定される整理です。

要望活動が交付税措置に与える影響

要望活動の目的は、五島市が想定する特別交付税(または交付税措置相当の配慮)について、必要性を正確に理解してもらい、配分判断の材料に反映される状態をつくることです。

五島市では、令和6年度の交付実績が約23億円で、令和7年度は27億円の要望としています。

ただ、五島市は毎年要望活動をしているため、「実施しなかった場合」との比較で効果を定量化するのは難しいようです。

一方で、要望活動には少なくとも次の“実務的な効用”があります。

  • 制度(特別需要・算定の考え方)に沿って、自治体の特殊事情を短時間で共有できる
  • 書面だけでは伝わりにくい地理的条件やサービス提供の困難性を説明できる
  • 翌年度以降も含め、担当部局が状況を把握しやすくなる

ただし、記事にもあるとおり「要望活動をした自治体が増額される」という前例が強く見えると、全国から要望が殺到し、制度運用としても説明が難しくなる(結果として全体の増額に繋がりにくい)というジレンマは確かにあります。

だからこそ、自治体側は“要望=陳情”にならない設計(データ・根拠・公平性)が重要だと感じます。

五島市の財政を圧迫する事業

市長が取り上げた「モバイルクリニック事業」について、説明の要旨は次のとおりでした。

  • 従来は玉之浦の5つの診療所運営により交付税措置があったが、廃止に伴い交付税措置も終了。
  • 診療所廃止に伴いモバイルクリニックを稼働しているが、維持費が毎年約2,000万円と高額であり、配慮してもらいたい

私は、こうした構造は事前に見通せたためモバイルクリニック事業には反対しましたが、議会では承認された経緯があります。

また、全天候型施設も同様に、年間3,500万円程度の維持費が必要となる見込みで、こちらも私は反対しましたが可決されました。

全国の議会・執行部に共通する論点としては、「整備費」よりも「維持管理費(人件費・委託費・修繕費・更新費)」が中長期財政を圧迫しやすい点です。特別交付税は“特別需要”の補完であり、恒常的な維持費を恒久的に穴埋めする制度ではないため、自治体側では以下のような手当てが重要になります。

  • ライフサイクルコスト(LCC)の公開・定期更新(更新投資も含めて見える化)
  • 事業開始後のKPI・利用実績・費用対効果を毎年検証し、運用を柔軟に見直す
  • 同種サービスの代替(共同化・民間活用・複合化)を常に比較対象として持つ

国会議員への要望活動

総務省での要望活動終了後、長崎に関係のある国会議員の方々、ならびに市長がこれまでお世話になった国会議員の方々にも要望に回りました。

ただ当日は国会日程や選挙準備等で調整が難しい場面もあり、議員事務所での直接面会には至りませんでした。

補足として、国会議員ルートの要望は、制度決定を直接左右するというよりも、

  • 離島・へき地が抱える構造課題の“政策課題化”
  • 制度改正・運用改善の議論の土台づくり
  • 関係省庁との調整を円滑にする

といった意味合いが強いと整理しておくと、自治体内での説明がしやすくなります。

全体を通じて

初めて総務省や国会議員事務所を訪問できたことは貴重な経験でした。同時に、離島自治体が要望活動を行うには相応の負担(時間・費用・調整)が発生することも実感しました。

島の声を直接国に届けることは大切です。一方で、自治体としては、

  • 財政運営の効率化
  • 不要不急事業の見直し
  • 将来負担(維持管理費・更新費)の可視化

といった足元の行財政改革も同時に進めなければ、持続可能な自治体運営は難しくなります。

最後に、今後同様の要望活動を行う自治体向けに、私なりの「準備チェックリスト」を置いておきます。

要望活動の準備チェックリスト(実務)

  • 要望項目ごとに「特別需要」に当たる理由を制度用語で説明できるようにする
  • 維持費・更新費・対象人口・移動距離等を1枚図表で即答できる形に整える
  • 単年度の不足ではなく、3〜5年の見通し(費用の増減要因)を添える
  • 代替案(縮小運用・共同化・民間活用等)も示し、「やりっぱなし」ではないことを示す