9月議会にいきなりドカンと、見慣れない事業が計上されました。
事業名 第三者委員会設置事業
事業内容
平成25年と平成29年に発生した五島市の元職員による不正・不適切な行為について、公正かつ中立的な観点から専門的な知見をもつ第三者による調査検証等に必要な経費9,130千円を計上する。
【1】事業内容
第三者委員会の設置、運営について、公正・中立の観点から、事務局運営、実態調査、再発防止策の検討、報告書の作成等を外部委託により実施する。
①第三者委員会事務局運営
②実態調査及び再発防止策の検討
③第三者委員会報告書の作成
事業費 市の一般財源 9,130,000円
事件の概要
まずこれが何の調査なのか、お分かりいただけない方のために説明です。以下、市長コラムから抜粋です。
平成25年の件
「五島市の元職員が、平成25年6月から平成25年11月までの間に、お年寄りの女性の預貯金4,560万円を違法に引き出した」
お年寄りの女性のご家族が五島市の元職員を相手取り、元職員が引き出した全額と、その遅延損害金を支払うよう求める民事裁判が令和4年12月に始まりました。
そして、今年3月13日、裁判所は、五島市と元職員が連帯して、ご家族に遅延損害金を含む損害賠償金を支払うよう命じました。
事件が発覚してから、五島市は、関係する部署で保管していた書類の調査や、関係職員への聞き取りを実施しました。しかし、元職員とお年寄りの女性の間に業務上の関わりがあったことを示す明確な資料や証言はありませんでした。
五島市は、今年3月27日に控訴しました。
今回の判決は、五島市の財産を強制的に差し押さえることができる内容になっています。それを回避するには、保証金6,400万円を準備する必要があり、今年4月16日付けで令和7年度一般会計補正予算の専決処分を行いました。
今回の事件は、元職員が12年前に起こしたことであり、現職とは直接の関係はありません。現職職員は真面目に働いています。今後、市民の皆さまに対し、五島市で何があったのかを、きちんと説明しなければなりません。
市民の皆さまにご心配をおかけしていることを深くお詫び申し上げます。
平成29年の件
長崎新聞より抜粋です。
長崎県五島市の保健師として支援していた高齢者のキャッシュカードを使い計400万円を盗んだとして、窃盗罪に問われた同市元職員の被告(58)=福岡市=に対し、長崎地裁五島支部(本井修平裁判官)は27日、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)の判決を言い渡した。
判決によると、被告は長寿介護課の長寿支援班係長だった2017年4~11月、五島市内の高齢男性(故人)から不正に入手したキャッシュカードで16回にわたり、計350万円を引き出し、盗み取った。さらに市を退職後の19年5月、同じ口座から50万円を引き出した。
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=759946373805981696
この後の2021年6月議会で、当時の野口市長はこう述べています。
私と副市長の給料の減額を行う条例改正案を本議会に提案しております。今後、このような不祥事が二度と起きないよう、全職員を対象とした服務・倫理研修の実施や不祥事防止のための行動指針の作成、法令違反通報に係る外部相談窓口の設置など再発防止策を講じ、市民の皆様の信頼回復に努めてまいります。
改めて考えると、H25年の事件では使用者責任を認めず、H29は使用者責任を全面的に認めているというのも、筋が通らない話のように見えます。
争点①目的は?
本事業の目的が今ひとつ判然としません。
事業内容では「実態調査及び再発防止策の検討」が主たる目的のように記載されています。
しかし既にH29の事件に関しては、前述の通り市長・副市長が減給をして責任を取っており、再発防止策も講じられていると述べられています。
当時の対策が不十分だったという事でしょうか。
再発防止策の作成であるならば、R3年6月の野口市長が示した防止策はどこが不十だったのか。
現行の内部統制(地自法150条・総務省ガイドライン)に照らした効果検証や未解決の論点は何でしょうか。
争点②外部委託の必要性があるのか?
外部調査をする前に、まず内部調査で事実関係や原因を改めて明らかにすべきではないでしょうか。
この件は出口市長が号令を取る形で始めた事業ですので、市長の持つ調査権限を最大限行使できるはずです。
監査委員(地自法199条)・内部監査(150条関連)・行政監査等、トップの主導で徹底して行い、その上どうしても限界がある場合に、外部調査に委託するのが筋です。
それもせずにいきなり外部委託するのは、市長の内部統制・ガバナンスの放棄とも考えられます。
金額も大きく、いきなり900万円以上の支出(明細不明)を出されても、簡単に認める訳にはいかないです。
争点➂控訴での主張との整合性
五島市は現在、H25の事件に関して一審で敗訴し、控訴中です。
この裁判では「第三者が中立的に調査検証した上での結果」が、一審での敗訴(=市の国家賠償責任は認められる)、という形だったのではないでしょうか。
しかしこの一審判決に対して、五島市は徹底して「職務との関連性が認められない」と主張しています。
その最中に、「中立的な立場から再度調査する」というのは、市が裁判で主張しているスタンスと矛盾するのではないでしょうか。