離島振興法ってどんな法律?
これからの離島振興はどうなるの?
こういった疑問に答えます。
目次
離島振興法の経緯と目的
戦後間もない頃に出来た法律
離島振興法の歴史は古く、昭和28年(1953年)に制定されました。
当時、インフラの整備もままならない状況もあり、議員立法で成立しました。
10年ごとに改正がされ、現在の離島振興法は2012年改正されています。
離島振興法の目的
目的は言うまでもなく、離島の振興です。もう少し分かりやすく言うと、
離島の抱えるハンデを補い、強みを伸ばす事を通じて
- 離島の自立的発展を促進
- 島民の生活の安定及び福祉の向上
を目指すとされています。
離島振興法の仕組み
離島振興は、法律に基づくき以下の4つのプロセスで実施されます。
1.離島振興の対象地域を指定する(法第2条)
国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣が対象地域を指定します。
令和3年4月1日現在では、沖縄、奄美、小笠原等を除く、
77地域254島が離島振興法による離島振興対策実施地域となっています。
2.離島振興の基本方針を策定する(法第3条)
国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣が離島振興の在り方に関する基本方針を策定します。
この際、地元の首長や団体とも協議を行います。
3.離島振興計画を策定する(法第4条)
基本方針が決まった後は、以下のプロセスで振興計画が策定されます。
ここでは現場の自治体や都道府県も計画作成のプロセスに関与します。
- 自治体が振興計画の案を作成
- 都道府県が振興計画の案を精査し、各大臣に提出
- 各大臣から関係自治体の長に計画を通知
- 計画が基本方針に適合していると認められるときは、その旨都道府県に通知
4.事業を実施する(法第5条)
計画が決まると、国、地方公共団体その他の者による、離島振興計画に基づく事業の実施が行われます。
離島振興法が定める様々な特例
離島振興法には、離島に対する様々な特例が明記されています。
補助率の嵩上げ(法第7条)
・港湾、漁港、道路、空港、義務教育施設、消防機械器具施設(1項)
・災害復旧事業(5項)
・簡易水道(6項)
・他の政令による特例措置(海岸・土地改良等)(7項)
・教員住宅等(8項)
(政令に定めるもの(法第7条4項関連) )
・産業振興、教育及び文化振興、観光開発に係る施設整備
・指定事業(携帯電話等エリア整備事業、離島漁業再生支援交付金等)
医療の確保等(法第10条)
・診療所の設置、患者輸送車の整備、定期的な巡回診療等への補助等
税の特例(法第19、20条)
(国税の特例措置(19条))
・所得税・法人税の特別償却
(地方税の課税免除又は不均一課税に伴う措置(20条))
・地方税の課税免除に伴う減収補填
配慮事項(法第6、8、9、11~18条)
・国の予算への計上(6条)
・地方債への特別配慮(8条)
・資金確保その他の援助(9条)
・高齢者福祉増進(11条)
・交通確保(12条)
・情報流通円滑化及び通信体系充実(13条)
・農林水産業振興(14条)
・教育充実(15条)
・地域文化振興(16条)
・地域間交流促進(17条)
・農地法、自然公園法等における配慮(18条)
離島振興法の対象とならない島
奄美、沖縄、小笠原諸島に関しては、戦後の米軍支配が続いたこともあり、
離島振興法の対象とはならず、それぞれ別の法律が適用されてます。
- 沖縄振興特別措置法
- 奄美群島振興開発特別措置法
- 小笠原諸島振興開発特別措置法
離島振興法の現在とこれから
市町村の動き
2021年現在、離島振興法の延長・拡大を巡って五島市長の野口氏が精力的に活動をされています。
https://www.city.goto.nagasaki.jp/s002/010/010/010/020/080/070/20210614151313.html
記事によると、
- 自民党の下村博文政務調査会長
- 自民党離島振興特別委員会の関係国会議員
- 公明党の山口那津男代表
- 同党離島振興対策本部の関係国会議員
- 国土交通省国土政策局を訪問し、
離島振興法の改正・延長の実現について要望してまいりました。
とあります。今後も期限切れまでの期間の間、要望活動は継続されると考えられます。
長崎県の動き
日本で一番多くの離島を抱える長崎県は、前回の改正時と同様、
- 県、県議会
- 県離島振興協議会
- 県離島振興市町村議会議長会
との連名による「新たな離島振興法に関 する意見書」を取りまとめることとしています。
まとめ
最後まで記事を読んで頂きありがとうございます。
米中の覇権争いにより、東シナ海の緊張感も高まっていると報じられていますので、
国として離島振興の予算を打ち切る事は、日本の安全保障上大きなリスクとなります。
地方創生の観点からも、一極集中解消の受け皿として、離島の魅力は大きいはずです。
こうした事から、離島振興法は今後とも、維持・改善されるのではないでしょうか。