コロナで地方移住は増加?まちひとしごと方針2021を読み解く

コロナによって、東京一極集中は解消されるの?

地方移住はこれから増えるの?

この疑問に対する答えを、2021年6月15日に発表された資料を基に解説します。

https://www.chisou.go.jp/sousei/meeting/souseikaigi/pdf/r3_06_15_shiryou1.pdf

結論から言うと、コロナによって東京一極集中の解消と、地方移住の増加は進む可能性が高いです。

東京一極集中の現状

マクロな数字は転入超過

東京圏への転入超過は、2020年に9.8万人と前年を大きく下回っています。

2011年以降は右肩上がりでしたが、がくんと増加のペースが落ちています。

大きなボリュームを占める10代後半と20代が落ちている理由としては、

  • 緊急事態宣言による東京圏への転入抑制
  • 大学のオンライン授業導入による転入抑制

が大きいと考えられます。

ただし注意すべき点は、コロナ下でも圧倒的に転入超過が続いている事です。

東日本大震災が起きた2011年よりも転入者数は増えており、アベノミクス前の水準まで落ち着いた状態です。

こうした事を踏まえると、コロナが東京一極集中に与えた影響は、2021年6月時点では

大きな潮目の変化ではなく、少しブレーキをかけた程度

と言えるでしょう。

依然として東京圏に就職先や大学が多く存在する事を考えると、当然かもしれません。

ミクロなトレンドは転出超過

転入超過の多くは、新学期となる3月と4月です。

コロナ第二波が来た2020年の7月以降は、8か月連続で転出超過が続きました。

こうした事を考えると、

  1. マクロなトレンドとして転入超過は続いているものの
  2. ミクロなトレンドとしては転出にシフトしている

と言えそうです。

地方移住への関心の高まり

20代を中心に、地方移住への関心が高い事が示されています。

地方移住したい理由として

テレワークによって地方でも同様に働けると感じたため・・・24.1%

と紹介されています。

確かに若い世代はPCやスマホ操作が当たり前に出来るので、

テレワークやオンラインへの抵抗が少なく、移住への関心を高めているとも考えられます。

地方移住の促進策

政府はコロナ下で進むテレワークを活用し、

都会から地方への新たなひとやしごとの流れを生みだすことを目指す。

としています。これを実現するために掲げている3つの視点を紹介します。

①ヒューマン視点

ヒューマン視点では、都会から地方へ働ける環境を整備する方針としています。

地方創生テレワーク

・地方創生テレワーク交付金によるサテライトオフィス等の整備・利用促進
・企業と自治体を結ぶ情報提供・相談体制等の整備、企業による取組の見える化
・進出企業と地域企業等が連携して行う事業展開の後押し

企業の地方移転の促進(地方拠点強化税制)

・オフィス減税:建物等の取得価額に応じた税額控除又は特別償却

・雇用促進税制:地方拠点において増加した従業員数に応じた税額控除

地域における人材支援の充実

多様化・複雑化する地域の課題を解決するため、地域において多様なニーズに対応できる人材の確保と地域外から知識・ノウハウを持った人材の受入など、官と民の間で人材を循環させること等を通じ、人と知の流れを創出。

子育て世帯の移住等の更なる推進

子どもを帯同して地方に移住する場合を重点的に支援し、今後の地域社会を支える子育て世代の移住を強力に推進。

関係人口の創出・拡大

都市と地域の両方の良さを楽しむ関係人口を増やすため、仲立ちする民間組織をモデル的に支援。

魅力ある地方大学の創出

〇産官学の連携により地域に特色のある研究開発や人材育成等の取組について、

地方大学・地域産業創生交付金等により支援し、「キラリと光る地方大学づくり」を推進・加速。

②デジタル視点

5Gなどの情報通信基盤の早期整備

5G基地局やこれを支える光ファイバなどのICTインフラについて、

地方部と都市部の隔たり無く、その整備を加速。課題解決に資するローカル5Gの普及展開を促進。

デジタル分野の人材支援

民間のデジタル専門人材の市町村への派遣等を着実に推進するとともに、

地域におけるDXを支える人材を確保・育成。

地域におけるデータ活用を促進するための支援

データを活用した地域課題の解決・改善が実現できるよう、

RESAS及びV-RESASの活用を含め、地方公共団体をはじめとした地域による取組を後押しする。

DXの推進による地域課題の解決、地域の魅力向上

スマート農業、GIGAスクール、遠隔医療、など様々な分野において、

地域の実情に応じた形でデジタル技術を実装。

また、スーパーシティやスマートシティなど、デジタル技術等を活用し、

都市が抱える諸課題を分野横断的に解決する取組について、関係省庁が一丸となって支援。

➂グリーン視点

グリーン分野の人材支援

再生可能エネルギーの導入等に豊富な経験を持つ専門人材を派遣。

地域における知識やノウハウの定着、人材育成を図り、脱炭素化を地方創生につなげる人材基盤の整備を推進。

関連情報の共有や官民協働の取組 の推進

地域における再生可能エネルギーのポテンシャルの発掘・事業開始に資する情報提供システムの充実、活用を推進。また、脱炭素化を地方創生につなげる官民協働による各地の取組を支援。

地方創生SDGs等 の推進

地方創生SDGsの重要な要素の一つである、脱炭素の取組を地方においても進めていくべく、地方公共団体の脱炭素化の取り組み姿勢を重視したSDGs未来都市の選定等を推進。

また、スマートシティやスーパーシティなどにおいても、脱炭素化の視点を取り込む。

農林水産分野・国土交通分野等における取組の推進

「みどりの食料システム戦略」を踏まえた取組(エネルギーの地産地消など)や、

CO2排出の少ない輸送システムの導入、MaaSの実装による公共交通の利便性向上、

建築物への木材利用などを推進。

まとめ

最後まで記事を読んで頂きありがとうございます。

コロナの影響による「働き方改革」は、東京一極集中と地方移住にも及んでいます。

  • 8か月連続転出超過が続くなど、ミクロなトレンドとして東京一極集中が解消の兆し
  • 政府はテレワーク推進を通じ、都会から地方への人の流れを加速する方針
  • ヒューマン、デジタル、グリーンの3つの視点で地方移住を促進させる予定

長らく、地方創生という旗を掲げながらも一極集中の解消を実現できなかった政府としては、

今回のコロナショックを大きなチャンスと捉えていると考えられます。

個人的には、企業の地方移転の促進(地方拠点強化税制) が実現するかどうかで、

東京一極集中の解消に向けた明暗が分かれると感じます。