この疑問に答えます。
結論から言うと、「原発に未来はない。けれど政府(菅内閣)は、可能な限り原発メーカーを延命したい」のではないでしょうか。
出典はNHKラジオを参考にしています。
原発事故後の原発政策は海外輸出
国内の原発を維持・建設するハードルが高くなり、メーカーは海外に活路を求めました。
ところが、海外も日本国内と同様に原発のハードルが高くなり、輸出推進は軒並み頓挫しました。
安全強化で建設費用が高騰(建設費が予定の倍近い3兆円)し、原発プロジェクトは軒並み採算確保が難しくなっています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63917400W0A910C2MM8000/
太陽光や風力など再生エネルギーのコストが低下し、世界的に普及が進んでいると言われています。
日本の深刻な人材不足
メーカーが海外に活路を求めた理由は、原発技術と人材の継承です。
事故後の国内の再稼働は3基(2020年10月現在)となり、廃炉と維持に関わる人材が減り続けています。
業界団体のまとめでは、溶接などの技能職が減っているとされています。
廃炉でも増設でも人材は必要
今後、国内の原発は少なくとも15基の廃炉が確定しています。
原発の解体は数十年単位の仕事となるため、技術と人材の厚みが必要です。
NHKラジオによると、原発メーカーは、この廃炉に掛かる人材を
原発を運転していないと保てない
と主張しています。
人手不足に拍車が掛かる中で、中長期的に安全な解体ができるかが課題です。
求められる「国策」
原発事故の後、
- 高まる安全基準と設備投資の費用
- 高まる再エネの採算性
という外部環境の変化を背景に、原発ビジネスは、国内でも国外でも持続不可能な状態となりました。
その一方、国は原発を「重要電源」と位置付け、2030年に20~22%の発電量を目標として掲げています。
しかし、現在の安全基準ではこの達成が困難な状況であり、達成するためには新規増設かリプレースが必要です。
こうした状況を受け、原発の反対派・推進派からも「議論を求める声」が高まっています。
菅内閣は?
日立のイギリスからの原発輸出撤退は、菅内閣が発足する前日に発表されました。
10月4日現在では、「原発を今後どうするのか」具体的な言及はまだありません。
菅内閣は安倍内閣を継承し、再稼働を進める見込みですが、エネルギー政策上の位置づけを明確にする必要に迫られるでしょう。
今後の予想
政府が原子力を国内で推進をしようとしても、
- 法律上の厳格な縛り
- 世論の反発
- 再エネとの価格競争
により、もはや太刀打ちできない状況です。だからこそ、政府は今まで「海外輸出」を推進してきました。
その背景には、日立・東芝・三菱重工という、支持母体の経団連で存在感のある大手メーカーへの配慮があったと考えられます。
しかし現状、原発は「政府が推進しても、衰退は避けられない」状況にまで陥っています。
そうした中で、政府としては原発を「可能な限り減らす」という看板はつけたまま、実際は「可能な限り長く使う」という方策を取ると考えられます。
その一方で、
- 火力発電の高効率化と海外への技術移転
- 再エネ促進のための国内の規制緩和
を行うのが現実的だと考えられます。
結果として、2030年の目標値を上回る実績を上げられれば、政府としては
政策の効果により、目標以上の成果(再エネ24%以上、原発20%以下)を達成できた
というシナリオが描けるのではないでしょうか。