これからの図書館
財政検証の途中ですが、今回は
「図書館の建設」
についてです。五島市では、この図書館の建設を巡って、
市の税収の身の丈に合っていない!豪華すぎる!
という反対運動が起こり、政権交代時の懸案事項としてずっと残っていました。
新しく野口市長になってからようやく、建設に向けた動きが進んできました。
本日は、そのプロセスを巡って、個人的な意見のご紹介です。
幅広く、市民の意見を聴く
現在のプロセスは、「幅広く、市民の意見を聴く」に重きを置いているように見えます。
https://www.city.goto.nagasaki.jp/s094/010/020/030/010/010/030/20190426122117.html
このプロセスでは、
①意見の集約
「Aが良い」
「Bが良い」
・・・
「Zが良い」
という意見を市民の一部の方から伺って、
②予算的フィルタリング
Aの対策・・・〇万円
Bの対策・・・×万円
という形で対策費用を計算し、予算の枠の中に納まるように取捨選択していくと考えられます。
公的なお金を使う以上、幅広い意見を聴くべきだとは思います。
しかし結果として、「規格外の予算」に対する意見が漏れ落ちます。このプロセスの問題点としては、
誰のため、何のための図書館なのか、よくわからなくなる
という事です。
令和の時代の図書館は?
私が1から全てをデザインできる立場だったら、
市役所が図書館建設の旗振り役にならない
という方針を取ります。
この方針を採用する時代の変化としては、
- 人々のニーズが多様化しすぎてしまった(集約は不可能)
- ネットの普及により、ペーパー書籍に対する重要性が薄れてしまった
- 人口減少社会では市のランニングコストが重い(署名運動の理由)
- 他の自治体の図書館と差別化できない
という点で、もはや図書館は、
昔のように画一的な市民サービスには成り得ない代物
となっています。
図書館は何も、大きな一つの建物でなくても良いはずで、機能的にも
- 本をゆっくりと読む場所
- 本を借りる場所
- 本についてお喋りをする場所
- 市民がのんびりできる場所
が別々に分かれていても良いはずです。
場所の価値と時間の関係
更にそもそも論として、行政主導の建造物は、「オーナーの不在」を招きます。
「オーナーが不在の図書館」は、場所の価値が時間と共に下がっていきます。
オーナーがバイトでお金を貰いながら施設に勤めていても、施設の魅力は向上しません。
一般的に、「指定管理」されている建物を見れば一目瞭然です。
逆に、五島市の中で新しくできた図書館として、「さんごさん」や「本処てるてる」がありますが、そうした場所はオーナーさんが作った空間として味があります。
イベントや情報発信を通じて、着実に場所の価値が高まっているように感じます。
そうした点から、図書館は「皆の意見を結集」させて創るのではなく、「個人の想いをありったけぶつけて」創る方が、時間軸を考慮すれば良いはずです。
図書館に対する市のスタンス
私だったら、図書館を巡る市役所のスタンスとしては
「市公認の図書館を建築&経営する権利」を売る
を取ります。発想としては、千葉市のマリンスタジアムに近い、ネーミングライツです。
メリットとしては、
- 市の財政負担ではなく、税収となる
- プロセスが他の自治体と異なるため、独自性のある図書館が出来る
- オーナーが明確となり、資産の場所が高まる
という点です。
少子高齢化・人口減少・ネットの普及・デフレ時代、
と、時代がこれだけ変わり、本と空間が果たすべき意味合いも、行動経済成長期モデルの昭和の時代とは大きく変わってきています。
そのため、図書館の建設を巡る昭和のプロセス(最大公約数的に意見を募り、予算のふるいにかける)も、時代の変化に合わせた変更が求められます。