【五島市市民アンケート】五島の課題を解説3.経済の活性化

市民アンケート分析の続きです。

島の経済を活性化させ、雇用を創出するためには?

結果は、

「農林水産業」が 55.0%で最も多く、「観光関連サービス業」が 33.6%、「医療・健康関連サービス業」が28.6%で続いている。

だそうです。ただこれも、回答者の殆どが高齢者であり、一次産業の従事者だったことに起因します。

五島の一次産業は基幹産業と言われ、かつては大いに栄えていました。が、その就業人口は年々減り続け、高齢化も著しく進んでいます。私がヒアリング活動で訪問している家庭でも

農業漁業を専業ではなく、兼業で趣味程度に

続けている方が大半です。従来型の農業・漁業は、年金生活でなければ、生活を支える事は厳しい状況です。

かといって、企業型に設備投資をするのはそれなりの資金と経験が必要になるので、中々一般人が手を出せる領域でもありません。

令和の時代と政策の立て方

人の移動が自由化し、経済がグローバル化し、デジタル空間の比重がぐっと高くなる令和の世界では、昭和の時代の物理依存モデル(経済活性化→雇用の確保→定住)は、成立しません。

そもそも、終身雇用が完全に破綻している中にあって、雇用環境の厳しい離島で「良質な雇用の確保」を民間に押し付けるのは、無理があります。

そうした中で、間違った政策の立て方は、

市民アンケートで、一次産業が大事だという結果だった

という事実を元にして、さらに衰退産業に対する税金的な補助を行う事です。

令和の時代には、昭和の常識が悉く通用しなくなります。

https://nakanishidaisuke.com/2019/04/29/showa-reiwa/

こうした時代の変化を顧みず、

「市民の声を政策に反映させれば良い」

と行政が考えているならば、従来のやり方を無批判的に繰り返しているという点において、知的怠慢だと言えます。

経済の活性化?

そもそも、穴の空いたバケツ状態の五島の経済で言えば、

経済が活性化=流出するお金の量も増える

という事を意味します。

観光業は一般的に、経済のすそ野が広いと言われていますが、これも大きな資本が入ってくれば、旨味は全て島外に持っていかれます。

地域の経済を取り戻すことが、政策的な優先度は高いはずですが、中々この部分に着手する政治家が少ないという印象です。

施策の満足度は?

五島市が行っている政策に対する「満足度」については、

「再エネ」の満足度が最も高く、「島外交通」の満足度が低い

という結果でした。

“満足”、“やや満足”の合計は「再生可能エネルギー産業の創出」が 40.9%で最も高く、「安全な生活の確保」、「保健・医療の充実」、「スポーツを通じた交流促進」が続いている。

しかし、「再エネ推進の満足度が高い」とは、具体的にどういう事なのでしょうか?

現状、再エネ推進をすることによって、市民の電気料金が安くっているわけではありません。そう考えると、

市が継続的に頑張っている政策として、認識している

点数だと考えられます。一方で、不満の分野では

“不満”、“やや不満”は「島外との交通環境の充実」が 43.3%で最も高く、「市内の交通環境」、「商工業振興・新産業育成」などが続いている。

とあります。交通課題はやはり大きな部分です。実際のところは、市役所が交通課題の解消に向けて、どのような取り組みを大なっているのか、知らない人が殆どではないでしょうか。

地域交通については、将来性のある分野に対する誘致を行う事が必要だと考えられます。

https://nakanishidaisuke.com/2019/05/04/traffic/

教育分野の不満

前回のエントリでも書きましたが、政策レベルでも教育・子育て分野での満足度が下がっています。(青が今回、赤が4年前)

現在の五島市は、移住者促進という事で、「島外在住者」に対する支援を手厚くし、予算を計上しています。

しかし一方で、島で子育てをする世帯の満足度は、この結果からも、決して高くはありません。

そうした在住の方が、教育面・施設面での不満を感じ、島外に流出してしまっては、元も子もありません。

五島市は、この部分の深堀を行い、政策に反映させる方が良いと感じます。次に、施策の重要度です。

施策について、今後、“特に重要”と思うものは?

結果は

満足度の評価が高かった「保健・医療の充実」が24.5%で最も高く、「島外との交通環境の充実」、「農林業の振興」、「水産業の振興」が続いている。

 前回調査と比較すると、前回調査で重要度が最も高かった「観光による交流拡大」が 9.3 ポイント低下し7番目となった。

調査対象者の年齢層を考えれば、高齢の方に関わりの大きいテーマが上位になっているのも当然です。

高齢化による人手不足を考えれば、政策としては「人手のかからない解決手段の導入」が急がれると考えられます。