前回の記事の続きです。
https://nakanishidaisuke.com/2019/06/22/kyousan-tou/
騒がれる年金
年金制度が100年安心だとか言われていましたが、そもそもちゃんと勉強しておけば、
- 「100年安心」を本気で信じていたの?
- 何をいまさら騒いでいるの?
という感じでしょう。
そんな中で、年金の問題を野党は格好の攻撃材料にしている形ですが、本日は共産党の公約を見ていきます。
「減らない年金」づくり?
まずは共産党の主張を抜粋。
年金を減らし続ける「マクロ経済スライド」を廃止し、減らない年金にすることが、安心できる年金への第一歩です。そのために三つの改革をすすめます。
とあり、その3点を抜粋すると
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高額所得者優遇の保険料を見直し、1兆円規模で年金財政の収入を増やします。
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巨額の年金積立金を年金給付に活用します。
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賃上げと正社員化をすすめて、保険料収入と加入者を増やします。
という点です。ちなみにここでいう「減らない年金」とは、「年金給付の水準」を減らさない事です。それでは一つずつ見ていきます。
①高額所得者にも課税
内容を抜粋すると
いまの年金保険料は、年収で約1000万円が上限で、それ以上の年収があっても保険料は増えません。2000万円の人も、1億円の人も、保険料は年額95万5000円
という形となっているため、分かりやすく言うと
「取れるところからもっと取る」という発想です。
これによって1兆円の財源を確保できるとしていますが、果たして
- 1兆円の増加で増え続ける歳出増を賄えるのか?
- 高額納税者が海外に資産を移すリスクはないのか?
という点が疑問です。共産党の公約全般に言える事ですが、高額納税者がきちんと素直に納税してくれないと成立しません。
②年金積立金を年金給付に活用
公約によると、
年金積立金は、約200兆円もあり、給付費の4年間分にあたります。ドイツ、イギリス、フランスなどの年金積立金は給付費の数カ月分程度で、日本の”ためこみ”は異常です。
と紹介され、
積立金を計画的に取り崩し、高齢化のピークとされる2050年代をめどに計画的に活用していきます。
としています。しかし当たり前の事ですが、積立金を取り崩せば、将来的に支給できる金額は減ってしまいます。
GPIFの紹介ページにも書かれている通り、
この積立金を市場で運用し、その運用収入を年金給付に活用することによって、将来世代の保険料負担が大きくならないようにしています。
という事だと思います。
https://www.gpif.go.jp/gpif/faq/faq_01.html
共産党の公約では「年金資金をリスクにさらすなど言語道断」としていますが、しかし共産党が
- 積立金をどのように活用するのか?
という部分が見えてきません。人口減少により、将来的に納税者が減ることになるため、積立金を取り崩すことにより、
「将来的に支給可能な年金の積立」
は確実に減っていきます。
➂保険料収入と加入者を増やす
ここの部分はたったの数行しか書かれていませんが、抜粋です。
年金の支え手である現役労働者の賃上げと、非正規雇用の正社員化で、保険料収入と加入者を増やして年金財政を安定させることは、もっとも根本的な対策です。
しかし前述の通り、共産党の「正社員化」の財源は、「経済成長」によるものではなく、「高額納税者」からの徴収によるものです。そのため、
- 高額納税者から税金を没収し
- 増えた税金で賃金を上げ、正社員の数を増やし
- 増やした正社員の収入から保険料収入と年金を徴収する
という、「税金の二重ループ」のような形を取っています。
全体としてみれば、経済のパイそのものは大きくなっておらず、原資は高額納税者に対する増税だけです。
まとめ
共産党は公約で「年金の支給額を減らさない」としていますが、
- 「どの時点」から減らさないのか?
- 「どのくらいの課税」が高額納税者に必要なのか?
- 取り崩した積立金の活用方法は?
などが不明確です。
そもそも年金制度は「高度経済成長期」に作られた制度です。つまり「経済の成長」を前提とした制度です。
しかしながら、公約の中では「経済成長」という単語が一言も出てきません。そのため、構図としては限られたパイの奪い合いになるため、
- 高額納税者が安定的に存在し続ける
- 高額納税者が納得して納税し続ける
- 高額納税者の負担は増え続ける
事を前提とした公約となります。