平成の大合併
を経て、五島市が2004年に誕生しました。
本日は、合併当初の五島市が目指してきた方向性と、課題の検証です。(以下、H16年中尾市長の施政方針の中から引用を含みます)
https://ssp.kaigiroku.net/tenant/goto/SpTop.html
政策方針
合併当初の方針としては、
- 一体性の確保
- 地域間連携の強化
が掲げられました。具体的には、
均衡ある地域の発展を求めて、地域や島々を連携する「道路網」や「港湾機能」の整備
「情報通信網」の整備による「e-むらづくり推進事業」と「五島市e-むらづくり推進委員会条例」
を、引き継ぎ事項の最重点課題としています。そして
人・物・情報の流れをスムーズにすることにより、農林水産業や商工業、観光など、あらゆる産業の活性化の可能性を大きくし、本市の一体的な発展を目指す
と述べられています。
産業支援
五島市では発足当初から、「内発型の産業の育成」として、
- IT活用
- 農林水産業と観光の連携
- 認定農業者や農業法人等の育成
を行う方針でした。特に農林水産の分野では、
五島が活性化し、発展していくためには、第1次産業であります農林水産業が自立し、基幹産業として頑張っていく以外にないと信じております
と述べられています。しかし、合併当初のH16.9月の田端議員によると、
農業を取り巻く環境は、農産物の価格の低迷、高齢化、後継者育成、耕作放棄等々の多くの課題に直面をされております。
新しい食料法の施行によって、すべての農産物が規制緩和されるなど、まことに厳しい状況
だと訴えられています。実際の数値としては
平成14年の本市の農業産出額は60億1,200万円で、農家1戸当たりの平均農業所得は92万3,000円とかなり低い水準
でした。こうした状況では農家が食べていくのが難しく、同議会の尾崎議員によると、
後継者となる20代、30代の経営者が、農業では20代が9名、30代が30名の39名です。40代を入れても65名ほどしかおりません。
という状況でした。15年経った今、農林水産業の状況はどうでしょうか。
観光促進
観光面では、
五島には、さまざまな観光資源に恵まれながら、認識されていないものや、十分に活用されていないものも多く見受けられます。
また、観光客誘致宣伝の充実強化を図るとともに、従来の観光パンフレット、観光宣伝イベントに増して、インターネット等を活用した五島最新版の情報を発信するなど、情報網の強化に努めなければなりません。
と述べられています。これは現在も課題として残っているように感じます。
財源確保
五島市では発足当初から、
財源確保と健全な財政基盤の確立が当面の大きな課題
と述べられていました。これも現在まで続く大きな課題です。
https://john-no-seikatsu.jp/2017/10/03/finance-of-goto/
ゴミ問題
市政方針では、
今日、ごみ問題から地球温暖化問題まで「環境問題」が幅広く関心を呼んでおりますが、その中でも全国的に最も大きな課題は、ごみ問題であると考えます。
大量生産、大量消費、大量廃棄を前提とした社会システムから、ごみの「発生抑制」、「再使用」、「再生利用」、「熱回収」による循環型社会への転換は、国の環境政策の基本であります。
こうした社会を実現するため、「循環型社会形成推進基本法」が制定され、ごみの減量化・リサイクルが始まっています。
と、当時の状況が紹介されています。その上で、
電化製品などの収集除外品目の不法投棄やごみを焼却する過程で発生する有害物質による環境汚染は、今や大きな社会問題となっています。
このため、「分ければ資源、混ぜればごみ」を合言葉に、「自然環境に優しく、限りある資源を大切にするごみリサイクル」を目指し、新市としての一般廃棄物処理計画を策定し、ごみ8分別の徹底と有料化によるごみ減量化、資源ごみリサイクルを積極的に推進してまいりたいと存じます。
と述べられています。これも現在まで続く大きな課題です。
まとめ
五島市は合併当初から、「発展」する方向を目指して、設備投資を行い、産業の支援や交通網の整備、観光促進を行ってきました。
ところが、「当時の課題」の多くは、「現在の課題」としてそのまま解決されずに残っています。
その理由は、合併以降の15年間、マクロな傾向としての人口減少には歯止めがかからず、高齢化と後継者不足が続き、五島市全体の経済規模は縮小し続けているからです。
経済規模だけでなく財政事情も、財政力指数が平均して0.23に留まっていて、合併当初(0.21)から大きな改善はみられていません。
これは「発足当初の五島市の政策」が悪かったというよりも、「五島市を取り巻く環境のトレンド」が大きいと考えられます。
日本経済全体がデフレ不況にあえぐ中で、景気の低迷が続き、政権も不安定な期間(第3次小泉内閣以降)が続きました。
それに加えてリーマンショックや東日本大震災も重なり、日本の経済自体が「発展」というキーワードから遠のいていった印象です。
まとめると、
- 農林水産や観光の「発展」を目指す方向性は
- 国や社会の景気情勢に左右されるためコントロール出来ず
- 出費を伴う財政的な厳しさが続く
という事なのかと思います。
例えて言えば、川の流れに反して逆方向に向かって泳ぐようなものです。
長期的には、今後も人口減少が続くため、
経済規模の縮小を前提とする新たな方向性(脱・発展)
が求められていると感じられます。